「米金利の上昇にドル円148円台半ばまで続伸」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は続伸し、148円52銭まで買われる。小売売上高が予想を超え、米利下げ観測が一段と後退したことが背景。
- ユーロドルは小幅ながら続落し、1.0845まで売られる。
- 株式市場では3指数が揃って続落。個人消費の底堅さが確認され、FRBは利下げを急がないとの見方から売りが優勢に。
- 債券も続落。長期金利はおよそ1カ月ぶりに4.1%台に乗せる。
- 金は続落。原油は小幅に反発。
12月小売売上高 → 0.6%
12月輸入物価指数 → 0.0%
12月輸出物価指数 → −0.9%
12月鉱工業生産 → 0.1%
12月設備稼働率 → 78.6%
1月NAHB住宅市場指数 → 44
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ドル/円 | 147.68 〜 148.52 |
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ユーロ/ドル | 1.0845 〜 1.0883 |
ユーロ/円 | 160.45 〜 161.26 |
NYダウ | −94.45 → 37,266.67ドル |
GOLD | −23.70 → 2,006.50ドル |
WTI | +0.16 → 72.56ドル |
米10年国債 | +0.044 → 4.102% |
本日の注目イベント
- 豪 豪12月雇用統計
- 日 11月鉱工業生産(確定値)
- 台湾 企業決算 → TSMC
- 欧 ユーロ圏11月経常収支
- 欧 ラガルド・ECB総裁講演
- 欧 ECB議事要旨(12月会合)
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 12月住宅着工件数
- 米 12月建設許可件数
- 米 1月フィラデルフィア連銀景況指数
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
本日のコメント
米個人消費の底堅さが示されたことで債券と株式が売られ、ドル円は148円台半ばまで上昇。昨日のNYでは円が「独歩安」の展開で、ユーロ円は1カ月半ぶりに161円台まで上昇してきました。この1カ月間、FRBが0.25%の利下げを行う確率がほぼ100%織り込まれた場面が何回もありましたが、昨日の債券スワップ市場では、1−3月(第1四半期)にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジが0.25%引き下げられる確率は50%まで低下しています。利下げに対して前のめりになった市場の見方が徐々に修正されている状況です。
昨年12月の米小売売上高は、前月比で「0.6%増」と、3カ月ぶりの大幅増加でした。ホリデー期間ではあったものの、個人消費は堅調で、2024年にかけても消費の底堅さが続くと見られています。13項目のうち9項目で増加しており、衣料品、百貨店を含む総合小売り、無店舗での伸びが目立っています。「雇用や賃金の伸び鈍化が広がり、金利上昇の遅行効果が一定の打撃を追加的にもたらすのに伴い、さらなる減速がこの先待ち受けていると考えられるが、より急激な下振れが訪れることを示唆する要素はまだほとんどない」といったコメントをブルームバーグは紹介しています。この日発表された地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、「ホリデー期間中、消費は大半の地区の予想通りとなったほか、NYを含む3地区では予想を上回り、安堵感をもたらす結果になった」と記されていました。
ドル円は経済指標の発表を受け148円52銭まで買われ、これで昨年末の水準から7円52銭(5.3%)ほど円安が進んだことになります。日足ではローソク足が完全に雲抜けを完成させて、さらなる上昇も予想されますが、やや気になるのが、MACDではまだ「シグナル」がゼロの軸を越えていない点と、「遅行スパン」ではローソク足を抜けてはいるものの、雲の下限に差しかかっている点です。これで145−150円のレンジに入ったと思われますが、わずか1カ月で「ドルベア」から「ドルブル」へと変わる変化の速さです、この先も逆の事が起きる可能性はあり、市場の「変わり身の早さ」は常に意識しておくことが肝要かと思います。
ダボス会議に出席中のラガルドECB総裁はブルームバーグのインタビューを受け、米大統領選について質問を受けると、即座にコーヒーカップを持ち上げ、「ああ、ちょっと一服させて」と言って聴衆を笑わせた動画が伝えられています。ラガルド氏はしばらく考え、言葉を選ぶように、「もちろん、われわれは皆懸念している。米国は世界最大の経済大国であり、最大の軍事大国であり、民主主義の象徴だからだ」と述べ、「全ての『もしも』のシナリオを考慮する必要があり、欧州は強くあらねばならず、世界中の友人に頼れると仮定すべきではない。友人関係は変わる可能性があるからだ」と、微妙な言い回しをしていました。ラガルド氏はECB総裁の前にはIMFのトップを務めており、ワシントンでトランプ氏の大統領就任を間近で観る機会もあり、「トランプ氏の2期目のリスクについて遠慮なく警告できるのは、そのためかもしれない。冗談めかしてもいるが、同時に非常に真剣だった」とブルームバーグはコメントしています。米共和党候補の第2戦目は、23日にニューハンプシャー州で行われます。
本日のドル円は147円30銭〜148円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「持続的な形で個人消費支出(PCE)インフレ2%達成が射程距離内にあると確信を強めつつある。インフレが再燃せず、高水準にとどまらない限り、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを年内に引き下げることが可能になると、私は考えている」、「金利の引き下げを開始するのに適切な時期が来れば、秩序だって慎重に引き下げることが可能であり、そうすべきだ」、「経済活動と労働市場は良好な状態で、インフレ率は漸進的に2%へと低下しつつあることから、以前ほど急いだり迅速に利下げをしたりする理由が見当たらない」 | 債券と株が売られ、金利上昇にドル円は146円台半ばから147円台前半まで上昇。 |
1/15 | ナーゲル・ドイツ連銀総裁 | 「利下げについての協議は時期尚早だろう」 | -------- |
1/15 | ホルツマン・オーストリア中銀総裁 | 「イエメンの親イラン武装組織フーシ派による動きで、地政学的な脅威が高まったが、これで終わりではないだろう。より広範な動きにつながる可能性がある。2024年は利下げを全く想定すべきではないと」 | -------- |
1/12 | グールズビー総裁・シカゴ連銀総裁 | 「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しているが、政策当局者らよりも先走っている可能性がある」、「市場は前後を誤っている」、「金利に関する判断を左右するのは実際のデータになる」、(昨年12月のFOMC会合で公表された最新の経済・金利予測で、2024年に3回の利下げが実施される可能性が高いことが示された点については)、「個々の予測であり、将来の政策に関するFOMC全体の見解として受け止めるべきではない」 | -------- |
1/11 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「私が探しているのはインフレが当局の目標に回帰するという確信だ」(3月の利下げの見通しを聞かれ)、「FOMC会合前に、予断を与えたくない」 | -------- |
1/11 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「3月利下げは時期として恐らく早過ぎる」 | -------- |
1/11 | ラガルド・ECB総裁 | 「利下げの時期についてはいえない。それを言えるのは、われわれがこの闘いに勝利した場合や、当局の予想通り2025年に2%に戻る場合、および今後数カ月のデータでそれが確信される場合だ」、「こうした確実性があれば、金利が下がり始めるだろうと確信している」 | -------- |
1/10 | シュナーベル・ECB理事 | 「利下げを協議するには時期尚早だ」、「2025年には目標の2%になる。地政学的な緊張がインフレの上振れリスクの一つだ」 | ユーロドルは買われ、対円では昨年12月1日以来となる159円92銭まで上昇。 |
1/10 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「現在の金融政策の景気抑制的スタンスがバランス回復を継続させ、インフレ率を2%の長期目標に戻すというのが私の基本的な考え方だ」、「金融当局の目標を完全に達成するにはしばらくの間、景気抑制的なスタンスを維持する必要があるだろう。インフレ率が持続的に2%に向うと確信したときにのみ、抑制の程度を緩めることが適切となる」 | ドル円の上昇を促す。 |
1/8 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」 | -------- |
1/8 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」、「勝利宣言には時期尚早だ」 | -------- |
1/3 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 | -------- |
1/3 | FOMC議事要旨 | 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 | 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。 |
12/24 | 石破・元自民党幹事長 | 「『イシバノミクス』と偉そうなことを言うつもりはないが、本来の資本主義に戻す」、「金利のある世界が必要不可欠」、「異次元の金融緩和を実施し、壮大な実験ではあったが、それが所期の結果をおさめたかは検証が必要だ。需給ギャップが本当になくなったのか、そうではないと思っている」、「岸田首相は聞く力も大事だが、自民党が窮地にあり、発言力を発揮しなければいけない」 | 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。 |
12/20 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「金利を下げ始めることが重要だ。しかし、あまり急ぐ必要はないし、今すぐやるつもりもない」 | -------- |
12/19 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「インフレ率は向こう6カ月は比較的緩やかに低下していくと考えている。これは景気抑制的なスタンスを撤回する緊急性がないことを意味する」、(FOMCは来年の後半に2回の利下げを実施するだろうと、自身は予想するが)「それに関して活発に議論しているというわけではない | -------- |
12/19 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレがうまく鈍化すると見なすなら、われわれは当然、適正に対応するだろう」、「向こう数カ月間にインフレに関するデータの一貫性と広がりを見たい」 | -------- |
12/18 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今年のインフレ鈍化の程度を踏まえ、当局者が24年に利下げの検討を開始するのは適切だとしつつも、それがいつになりそうか臆測するのは時期尚早だ」 | 債券が売られ、ドルは上昇。 |
12/18 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米金融当局は市場がどう反応するかを考えて行動すべきではない」、「先週のFOMC後に公開した四半期の経済・金利予測に対し、市場が示した反応に困惑している」、「インフレについては、著しい改善が見られるものの、目標には依然戻っていない」 | 債券が売られ、ドルは上昇。 |
12/18 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | (来年の早期利下げを織り込んでいる金融市場について)、「政策の正常化について、少し先走っている」、「利下げに関する議論が活発化すれば、1年先のインフレ期待と、それが2%の目標に向かってどの程度のペースで下がっていくかを注視する」 | 債券が売られ、ドルは上昇。 |
12/15 | ブレイナード・NEC委員長 | 「サプライチェーンの圧力緩和や堅調な雇用市場、力強い生産性、データにおけるさまざまな遅行効果を総合すると、インフレとの闘いが終わりに近づきつつあることが示唆される」、「想定し得る限りにおいて、経済は実に良好なバランスが取れた状態になりつつある。ディスインフレのプロセスがかなり安定した形で進んでいるようだ。従って、進展の継続を期待する十分な根拠はある」 | -------- |
12/15 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「インフレ率が予想通り低下すれば、2024年第3四半期に利下げが始まる」との見方を示し、「インフレ率は2024年末時点で2.4%前後になり、目標の2%からさほど離れていない見通しだ」 | -------- |
12/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2023年に多くの進展を遂げてきたが、な注意しておこう。まだ終わっていない。従って、データが今後の金利動向を左右することになる」 | -------- |
12/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「利下げについて協議しているというほどでもない」、(来年3月の利下げについて考えるのは)「時期尚早だ」、「パウエル議長が言ったように、問題はインフレ率が2%に下がるのを確実にするため、金融政策は十分景気抑制的なスタンスになったかどうかだ、それが目前にある問題だ」 | ドル円は141円台後半から142円台半ばまで買われる。 |
12/14 | ラガルド・ECB総裁 | 「決して警戒を緩めてはならない。利下げについては全く議論しなかった」(消費者物価の上振れリスクは続いていると警告し)、「現在あるデータを見ると、圧力は弱まっていない」 | 市場の利下げ観測を一蹴したことで、ユーロドルは1.09台から1.10台に上昇。 |
12/13 | パウエル・FRB議長 | 「予測はあらかじめ決められた計画ではない。物価上昇圧力が再び台頭しないようにするため、追加利上げの選択肢を外す用意はない」、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した」 | 株と債券が急騰。金利が大幅に低下したことでドル円は145円前後から142円台半ばまで下落。 |
12/13 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化してきたことを示唆する。雇用の伸びは今年の早い時期より緩やかになってきているが、強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」 | -------- |
12/6 | シュナーベル・ECB理事 | 「直近のインフレ率を見ると、追加利上げの可能性はかなり低い」、「11月のインフレ速報値は非常に嬉しいサプライズだった。最も重要なのは、より頑固だった基調的インフレ率が、予想以上に急激に低下していたことだ。これは驚くべきことだ。全体として、インフレの進展は心強い」 | ユーロ安が進み、ユーロドルは1.0760まで売られる。 |
12/5 | ブロック・RBA総裁 | 「インフレ率を合理的な時間枠で当局目標に確実に回帰させるため、金融政策のさらなる引き締めが必要かどうかはデータやリスクの評価に左右される」、「インフレ率を目標に回帰させる確固たる決意に変わりはなく、それを達成するために必要なことを行うつもりだ」 | -------- |
12/1 | パウエル・FRB議長 | 「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスが取れてきている」、「政策は今、かなり景気抑制的な領域に入っている」、「十分景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論付ける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ。追加の金融引き締めが適切になる場合、そうする用意がある」 | 株式と債券が買われ、ドル円は148円台から146円台半ばまで下落。金価格も過去最高値を記録。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書