「米長期金利続伸」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- アジア市場から上値の重い展開が続いたドル円は欧州時期に147円台半ばまで下落。NYでは経済指標を受け148円30銭まで反発。
- ユーロドルは前日と同じようなレンジで推移。ECB議事要旨が公表されたが、影響はなし。
- 株式市場はハイテク株を中心に買われ3指数が揃って上昇。ナスダックは200ポイント買われ、最高値を更新。
- 債券は続落。長期金利は4.14%台に上昇。
- 金は反発し、原油は続伸。
新規失業保険申請件数 → 18.7万件
12月住宅着工件数 → 146万件
12月建設許可件数 → 149.5万件
1月フィラデルフィア連銀景況指数 → −10.6
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ドル/円 | 147.86 〜 148.30 |
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ユーロ/ドル | 1.0847 〜 1.0877 |
ユーロ/円 | 160.64 〜 161.04 |
NYダウ | +201.94 → 37,468.61ドル |
GOLD | +15.10 → 2,021.60ドル |
WTI | +1.52 → 74.08ドル |
米10年国債 | +0.040 → 4.142% |
本日の注目イベント
- 日 12月消費者物価指数
- 独 独12月生産者物価指数
- 欧 ECB総裁とIMF専務理事、WEFのセッションに参加
- 英 英12月小売売上高
- 米 1月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
- 米 12月中古住宅販売件数
- 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会に参加
- 米 バー・FRB副議長講演
- 加 カナダ11月小売売上高
本日のコメント
昨日の東京ではドルの上値が重く、さすがに年初から一貫して買われたドル円も上昇が一服かと思われましたが、欧州で147円台半ばまで下げた後NYでは再び148円台を回復する底堅い動きでした。米長期金利が4.14%台まで上昇したことがドルを押し上げましたが、米金利を引き上げたのは、失業保険申請件数とFOMCメンバーからのタカ派発言だったようです。
新規失業保険申請件数は「18万7000件」に減少しており、2022年9月以来となる低水準でした。また、継続受給者数も180万6000人と、こちらも昨年10月以来の低水準です。職を確保できた人が多かったと見られることで、「労働市場は引続き堅調だ」との見方から「利下げ観測の後退」→「ドル買い」との連想につながりました。また、アトランタ連銀のボスティック総裁が講演で、「インフレ率が金融当局の目標である2%に向かう軌道に乗っている証拠をより多く目にしたい」と述べた上で、「現在の私の見通しは、今年第3四半期(7−9月)のどこかで最初の利下げを行うというものだ。データがどのような進展をたどるかを見極める必要がある」と述べ、3月の利下げはないことを示唆した発言を行いました。因みに、同総裁は今年のFOMCでの投票権を持っています。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での商船に対する攻撃が続いていますが、米軍も同組織への攻撃を継続しています。バイデン大統領は、ここ数日の米英による空爆は効果的だったかと問われ、「空爆がフーシ派を止められるかと言えば、そうではない。では空爆を続けるのかと言えば、そうだ」とホワイトハウスで答えています。この地域を航行する船舶のリスクが高まっていることで、アジアから欧州に向かうコンテナ船の運賃が7週連続で上昇していると、ブルームバーグは報じています。運賃の高騰に加え、紅海で攻撃を受けるリスクを回避し、遠回りしてアフリカ南部を通過するルートを選ぶ船舶が増えていることから、輸送能力がさらに逼迫する可能性もあると指摘しています。
145−150円のレンジに入ったと見られるドル円は、どちらかと言えば昨日のNY市場の動きのように、ドル高材料にはより敏感に反応するようにも見えます。市場は次の材料を待つ状況ですが、来週は22−23日に日銀の金融政策決定会合があります。日銀は金融政策の修正に向け歩みを進めていると思われますが、元日に発生した能登半島地震がどのように影響するのかを見極める必要があります。今回の会合では、ほぼ政策変更はないと見ていますが、植田総裁の発言内容が、3月に変更があるのかどうかを示唆するかもしれません。賃金と物価上昇の好循環が見通せる「確度」がキーになります。この「確度」に関して植田総裁がどのような言い回しをするのか、注目です。
本日のドル円は147円30銭〜148円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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1/18 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「インフレ率が金融当局の目標である2%に向かう軌道に乗っている証拠をより多く目にしたい」、「現在の私の見通しは、今年第3四半期(7−9月)のどこかで最初の利下げを行うというものだ。データがどのような進展をたどるかを見極める必要がある」 | ドル円を押し上げる。 |
1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「持続的な形で個人消費支出(PCE)インフレ2%達成が射程距離内にあると確信を強めつつある。インフレが再燃せず、高水準にとどまらない限り、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを年内に引き下げることが可能になると、私は考えている」、「金利の引き下げを開始するのに適切な時期が来れば、秩序だって慎重に引き下げることが可能であり、そうすべきだ」、「経済活動と労働市場は良好な状態で、インフレ率は漸進的に2%へと低下しつつあることから、以前ほど急いだり迅速に利下げをしたりする理由が見当たらない」 | 債券と株が売られ、金利上昇にドル円は146円台半ばから147円台前半まで上昇。 |
1/15 | ナーゲル・ドイツ連銀総裁 | 「利下げについての協議は時期尚早だろう」 | -------- |
1/15 | ホルツマン・オーストリア中銀総裁 | 「イエメンの親イラン武装組織フーシ派による動きで、地政学的な脅威が高まったが、これで終わりではないだろう。より広範な動きにつながる可能性がある。2024年は利下げを全く想定すべきではないと」 | -------- |
1/12 | グールズビー総裁・シカゴ連銀総裁 | 「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しているが、政策当局者らよりも先走っている可能性がある」、「市場は前後を誤っている」、「金利に関する判断を左右するのは実際のデータになる」、(昨年12月のFOMC会合で公表された最新の経済・金利予測で、2024年に3回の利下げが実施される可能性が高いことが示された点については)、「個々の予測であり、将来の政策に関するFOMC全体の見解として受け止めるべきではない」 | -------- |
1/11 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「私が探しているのはインフレが当局の目標に回帰するという確信だ」(3月の利下げの見通しを聞かれ)、「FOMC会合前に、予断を与えたくない」 | -------- |
1/11 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「3月利下げは時期として恐らく早過ぎる」 | -------- |
1/11 | ラガルド・ECB総裁 | 「利下げの時期についてはいえない。それを言えるのは、われわれがこの闘いに勝利した場合や、当局の予想通り2025年に2%に戻る場合、および今後数カ月のデータでそれが確信される場合だ」、「こうした確実性があれば、金利が下がり始めるだろうと確信している」 | -------- |
1/10 | シュナーベル・ECB理事 | 「利下げを協議するには時期尚早だ」、「2025年には目標の2%になる。地政学的な緊張がインフレの上振れリスクの一つだ」 | ユーロドルは買われ、対円では昨年12月1日以来となる159円92銭まで上昇。 |
1/10 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「現在の金融政策の景気抑制的スタンスがバランス回復を継続させ、インフレ率を2%の長期目標に戻すというのが私の基本的な考え方だ」、「金融当局の目標を完全に達成するにはしばらくの間、景気抑制的なスタンスを維持する必要があるだろう。インフレ率が持続的に2%に向うと確信したときにのみ、抑制の程度を緩めることが適切となる」 | ドル円の上昇を促す。 |
1/8 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」 | -------- |
1/8 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」、「勝利宣言には時期尚早だ」 | -------- |
1/3 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 | -------- |
1/3 | FOMC議事要旨 | 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 | 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。 |
12/24 | 石破・元自民党幹事長 | 「『イシバノミクス』と偉そうなことを言うつもりはないが、本来の資本主義に戻す」、「金利のある世界が必要不可欠」、「異次元の金融緩和を実施し、壮大な実験ではあったが、それが所期の結果をおさめたかは検証が必要だ。需給ギャップが本当になくなったのか、そうではないと思っている」、「岸田首相は聞く力も大事だが、自民党が窮地にあり、発言力を発揮しなければいけない」 | 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。 |
12/20 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「金利を下げ始めることが重要だ。しかし、あまり急ぐ必要はないし、今すぐやるつもりもない」 | -------- |
12/19 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「インフレ率は向こう6カ月は比較的緩やかに低下していくと考えている。これは景気抑制的なスタンスを撤回する緊急性がないことを意味する」、(FOMCは来年の後半に2回の利下げを実施するだろうと、自身は予想するが)「それに関して活発に議論しているというわけではない | -------- |
12/19 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレがうまく鈍化すると見なすなら、われわれは当然、適正に対応するだろう」、「向こう数カ月間にインフレに関するデータの一貫性と広がりを見たい」 | -------- |
12/18 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今年のインフレ鈍化の程度を踏まえ、当局者が24年に利下げの検討を開始するのは適切だとしつつも、それがいつになりそうか臆測するのは時期尚早だ」 | 債券が売られ、ドルは上昇。 |
12/18 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米金融当局は市場がどう反応するかを考えて行動すべきではない」、「先週のFOMC後に公開した四半期の経済・金利予測に対し、市場が示した反応に困惑している」、「インフレについては、著しい改善が見られるものの、目標には依然戻っていない」 | 債券が売られ、ドルは上昇。 |
12/18 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | (来年の早期利下げを織り込んでいる金融市場について)、「政策の正常化について、少し先走っている」、「利下げに関する議論が活発化すれば、1年先のインフレ期待と、それが2%の目標に向かってどの程度のペースで下がっていくかを注視する」 | 債券が売られ、ドルは上昇。 |
12/15 | ブレイナード・NEC委員長 | 「サプライチェーンの圧力緩和や堅調な雇用市場、力強い生産性、データにおけるさまざまな遅行効果を総合すると、インフレとの闘いが終わりに近づきつつあることが示唆される」、「想定し得る限りにおいて、経済は実に良好なバランスが取れた状態になりつつある。ディスインフレのプロセスがかなり安定した形で進んでいるようだ。従って、進展の継続を期待する十分な根拠はある」 | -------- |
12/15 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「インフレ率が予想通り低下すれば、2024年第3四半期に利下げが始まる」との見方を示し、「インフレ率は2024年末時点で2.4%前後になり、目標の2%からさほど離れていない見通しだ」 | -------- |
12/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2023年に多くの進展を遂げてきたが、な注意しておこう。まだ終わっていない。従って、データが今後の金利動向を左右することになる」 | -------- |
12/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「利下げについて協議しているというほどでもない」、(来年3月の利下げについて考えるのは)「時期尚早だ」、「パウエル議長が言ったように、問題はインフレ率が2%に下がるのを確実にするため、金融政策は十分景気抑制的なスタンスになったかどうかだ、それが目前にある問題だ」 | ドル円は141円台後半から142円台半ばまで買われる。 |
12/14 | ラガルド・ECB総裁 | 「決して警戒を緩めてはならない。利下げについては全く議論しなかった」(消費者物価の上振れリスクは続いていると警告し)、「現在あるデータを見ると、圧力は弱まっていない」 | 市場の利下げ観測を一蹴したことで、ユーロドルは1.09台から1.10台に上昇。 |
12/13 | パウエル・FRB議長 | 「予測はあらかじめ決められた計画ではない。物価上昇圧力が再び台頭しないようにするため、追加利上げの選択肢を外す用意はない」、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した」 | 株と債券が急騰。金利が大幅に低下したことでドル円は145円前後から142円台半ばまで下落。 |
12/13 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化してきたことを示唆する。雇用の伸びは今年の早い時期より緩やかになってきているが、強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」 | -------- |
12/6 | シュナーベル・ECB理事 | 「直近のインフレ率を見ると、追加利上げの可能性はかなり低い」、「11月のインフレ速報値は非常に嬉しいサプライズだった。最も重要なのは、より頑固だった基調的インフレ率が、予想以上に急激に低下していたことだ。これは驚くべきことだ。全体として、インフレの進展は心強い」 | ユーロ安が進み、ユーロドルは1.0760まで売られる。 |
12/5 | ブロック・RBA総裁 | 「インフレ率を合理的な時間枠で当局目標に確実に回帰させるため、金融政策のさらなる引き締めが必要かどうかはデータやリスクの評価に左右される」、「インフレ率を目標に回帰させる確固たる決意に変わりはなく、それを達成するために必要なことを行うつもりだ」 | -------- |
12/1 | パウエル・FRB議長 | 「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスが取れてきている」、「政策は今、かなり景気抑制的な領域に入っている」、「十分景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論付ける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ。追加の金融引き締めが適切になる場合、そうする用意がある」 | 株式と債券が買われ、ドル円は148円台から146円台半ばまで下落。金価格も過去最高値を記録。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書