「米1月のNFPは35.3万人」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 前日146円台を割り込んだドル円は大きく反発。1月の雇用統計でNFPが市場予想のおよそ倍に伸びていたことで148円58銭までドルが急騰。
- ドルが大きく買われたことで、ユーロドルも1.0781までユーロ安が進む。
- 株式市場は3指数が上昇。ダウとS&P500は最高値を更新。
- FRBによる3月利下げの可能性が一段と後退し、債券は売られる。長期金利は4.02%台まで大幅に上昇。
- 金は5日ぶりに反落。原油は3日続落し72ドル台に。
1月失業率 → 3.7%
1月非農業部門雇用者数 → 35.3万人
1月平均時給 (前月比) → 0.6%
1月平均時給 (前年比) → 4.5%
1月労働参加率 → 62.5%
1月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 79.0
12月製造業受注 → 0.2%
12月耐久財受注 → 0.0%
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ドル/円 | 146.58 〜 148.58 |
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ユーロ/ドル | 1.0781 〜 1.0886 |
ユーロ/円 | 159.36 〜 160.26 |
NYダウ | +134.58 → 38,654.42ドル |
GOLD | −17.40 → 2,053.70ドル |
WTI | −1.54 → 72.28ドル |
米10年国債 | +0.140 → 4.020% |
本日の注目イベント
- 豪 豪9月貿易収支
- 中 1月財新サービスPMI
- 中 1月財新コンポジットPMI
- 独 独1月サービス業PMI(改定値)
- 欧 ユーロ圏12月卸売物価指数
- 欧 ユーロ圏1月総合PMI(改定値)
- 欧 ユーロ圏1月サービスPMI(改定値)
- 米 1月ISM非製造業景況指数
- 米 1月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
- 米 1月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
本日のコメント
1月の雇用統計は市場に大きなサプライズを与えました。非農業部門雇用者数(NFP)は、市場予想の「18.5万人」を大きく超える「35.3万人」と発表されました。考えて見れば、昨年1月の同指数も「30.6万人」と、市場予想を大きく超える結果でした。そもそも1月の統計はぶれやすく、予想が難しいと言われています。「ホリデーシーズン後の雇用が減る季節性があり、その補正がブレやすい。最新の人口推計を反映して過去データを遡及改定する年次改定もあり、予測は難しい」(日経新聞)といった側面もあります。
失業率は「3.7%」と、前月と変わらずでしたが、平均時給は前月比「0.6%」伸び、前年同月比で「4.5%」の伸びと、いずれも市場予想を超えています。雇用も賃金も伸びが加速したことで、3月の会合での「利下げ開始」の可能性はほぼなくなったと予想します。ブルームバーグは「これで3月利下げとはっきりと別れを告げることが出来るだろう。利下げは高い確率で5月になりそうだ」といった調査機関のコメントを紹介しています。ボウマンFRB理事はハワイのイベントで講演を行い、「インフレ鈍化を示す最近の指標には、勇気づけられる」と述べ、物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」と述べながらも、「経済はまだその状態には達しておらず、重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」と指摘。「将来の政策スタンスの変更を検討するに当たっては、引き続き慎重な姿勢で臨むつもりだ」と説明しています。力強い雇用と賃金の伸びを受けて、債券が売られ金利上昇に伴いドルが買われるのは理解できますが、同時に株式も買われたところに、やや違和感を覚えます。米景気が底堅いという意味で、株価の上昇につながったとは思われますが、本来、株と債券が同じ方向に長期間動くことは余り見られないことであって、どちらかが間違っている可能性もあります。中東情勢の緊張が一段と高まっていることを考えると、株式が連日で最高値を更新している事態に違和感があるように思います。
米英軍は3日、イエメンにある親イラン武装組織フーシ派の拠点数十カ所を攻撃しました。米兵3人が死亡した攻撃への報復を狙ったものですが、バイデン政権はイランとの直接的な軍事衝突は回避するとしながらも、追加の攻撃を行うことも示唆しています。またこれに対してフーシ派も反撃を行うことを表明しています。中東情勢が激化していることで、米国のウクライナに対する支援も「中東で手一杯だ」といった観測もあり、ウクライナ情勢も楽観できません。今月24日で、ロシアが同国に侵攻してもう2年にもなります。
ドル円は先週、米金利が低下したことで上値を重くし一時は145円90銭まで売られましたが、再び148円台まで反発して来ました。「146円台半ばから148円台半ばのレンジ」は一旦抜けましたが、さらに重要である「145−150円のレンジ」は依然としては維持されており、結局今回の下落も「雲の上限」に下落を止められ、抜け切れなかった格好です。引き続き日銀とFRBの政策転換のタイミングを模索する動きが続きそうです。そのタイミングのずれが150円を抜けるのか、あるいは145円を割り込んで下落するのかを決定することになります。本日のドル円は147円80銭〜149円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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2/3 | ボウマンFRB理事 | 「インフレ鈍化を示す最近の指標には、勇気づけられる」、(物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合)、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「経済はまだその状態には達しておらず、重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」、「将来の政策スタンスの変更を検討するに当たっては、引き続き慎重な姿勢で臨むつもりだ」 | -------- |
1/31 | パウエル・FRB議長 | 「政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークにある可能性が高く、経済が概ね予想通りに展開した場合は景気抑制的な政策を元に戻すことが適切になるとわれわれは考えている」、「適切だと判断すれば、われわれは現在のFF金利誘導目標レンジをより長期にわたって維持する用意がある」、「3月を利下げ開始時期と特定する確信のレベルに委員会が同月までに達しそうだとは、私は考えていないことを言っておきたいが、まだそれはわからない」、「3月利下げは、最も可能性の高いケース、ないし基本シナリオと呼ばれるものでは、恐らくないだろう」 | 株が大きく売られ、債券は急騰。金利が大きく低下したことでドル円は147円台半ばから146円前後まで下落。 |
1/31 | FOMC声明文 | 「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとみていない」 | 株が大きく売られ、債券は急騰。金利が大きく低下したことでドル円は147円台半ばから146円前後まで下落。 |
1/25 | トルコ中銀声明文 | 「ディスインフレ基調を確立するのに必要な金融引き締めは達成された。月次インフレ率の基調的トレンドに大幅な低下が見られ、インフレ期待が中銀の予測レンジに収束するまで、必要な限り現在の金利水準を維持する」 | ドルリラは変わらず。 |
1/25 | ラガルド・ECB総裁 | 「利下げはまだ議論されていない」、「前に自分が言ったことに変わりはない」、(ドイツなどが利下げには慎重な姿勢を見せていることに関して)、「政策委員会では、利下げを議論するのは時期尚早だというのがコンセンサスだった」 | ユーロドルは1.09台から1.0822まで売られる。 |
1/23 | 植田・日銀総裁 | 「物価目標実現の確度が少しずつ高まっている」 | ドル円148円から147円台割れまで売られる。 |
1/18 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「インフレ率が金融当局の目標である2%に向かう軌道に乗っている証拠をより多く目にしたい」、「現在の私の見通しは、今年第3四半期(7−9月)のどこかで最初の利下げを行うというものだ。データがどのような進展をたどるかを見極める必要がある」 | ドル円を押し上げる。 |
1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「持続的な形で個人消費支出(PCE)インフレ2%達成が射程距離内にあると確信を強めつつある。インフレが再燃せず、高水準にとどまらない限り、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを年内に引き下げることが可能になると、私は考えている」、「金利の引き下げを開始するのに適切な時期が来れば、秩序だって慎重に引き下げることが可能であり、そうすべきだ」、「経済活動と労働市場は良好な状態で、インフレ率は漸進的に2%へと低下しつつあることから、以前ほど急いだり迅速に利下げをしたりする理由が見当たらない」 | 債券と株が売られ、金利上昇にドル円は146円台半ばから147円台前半まで上昇。 |
1/15 | ナーゲル・ドイツ連銀総裁 | 「利下げについての協議は時期尚早だろう」 | -------- |
1/15 | ホルツマン・オーストリア中銀総裁 | 「イエメンの親イラン武装組織フーシ派による動きで、地政学的な脅威が高まったが、これで終わりではないだろう。より広範な動きにつながる可能性がある。2024年は利下げを全く想定すべきではないと」 | -------- |
1/12 | グールズビー総裁・シカゴ連銀総裁 | 「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しているが、政策当局者らよりも先走っている可能性がある」、「市場は前後を誤っている」、「金利に関する判断を左右するのは実際のデータになる」、(昨年12月のFOMC会合で公表された最新の経済・金利予測で、2024年に3回の利下げが実施される可能性が高いことが示された点については)、「個々の予測であり、将来の政策に関するFOMC全体の見解として受け止めるべきではない」 | -------- |
1/11 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「私が探しているのはインフレが当局の目標に回帰するという確信だ」(3月の利下げの見通しを聞かれ)、「FOMC会合前に、予断を与えたくない」 | -------- |
1/11 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「3月利下げは時期として恐らく早過ぎる」 | -------- |
1/11 | ラガルド・ECB総裁 | 「利下げの時期についてはいえない。それを言えるのは、われわれがこの闘いに勝利した場合や、当局の予想通り2025年に2%に戻る場合、および今後数カ月のデータでそれが確信される場合だ」、「こうした確実性があれば、金利が下がり始めるだろうと確信している」 | -------- |
1/10 | シュナーベル・ECB理事 | 「利下げを協議するには時期尚早だ」、「2025年には目標の2%になる。地政学的な緊張がインフレの上振れリスクの一つだ」 | ユーロドルは買われ、対円では昨年12月1日以来となる159円92銭まで上昇。 |
1/10 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「現在の金融政策の景気抑制的スタンスがバランス回復を継続させ、インフレ率を2%の長期目標に戻すというのが私の基本的な考え方だ」、「金融当局の目標を完全に達成するにはしばらくの間、景気抑制的なスタンスを維持する必要があるだろう。インフレ率が持続的に2%に向うと確信したときにのみ、抑制の程度を緩めることが適切となる」 | ドル円の上昇を促す。 |
1/8 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」 | -------- |
1/8 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」、「勝利宣言には時期尚早だ」 | -------- |
1/3 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 | -------- |
1/3 | FOMC議事要旨 | 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 | 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書