今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円2カ月半ぶりに149円台半ばに」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 日銀副総裁の発言を受け、ドル円と日本株が買われた。NYではドル高の流れを受けて149円台に乗せ、149円48銭まで上昇。昨年11月27日以来となるドル高水準を記録。
  • ユーロドルは1.07台でのもみ合いが続く。
  • 株式市場は小幅ながら3指数が揃って続伸。S&P500は節目の「5000」を前に売り買いが交錯したが3ポイント高。
  • 債券は続落し、長期金利は4.15%台に上昇。
  • 金は小幅に反落。原油は中東情勢の混迷に大幅続伸。
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新規失業保険申請件数 → 21.8万件
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ドル/円 149.10 〜 149.48
ユーロ/ドル 1.0741 〜 1.0783
ユーロ/円 160.37 〜 160.99
NYダウ +48.97 → 38,726.33ドル
GOLD −3.80 → 2,047.90ドル
WTI +2.36 → 76.22ドル
米10年国債 +0.048 → 4.154%

本日の注目イベント

  • 独 独1月消費者物価指数(改定値)
  • 英 英1月消費者物価指数
  • 米 米独首脳会談(ホワイトハウス)
  • 加 カナダ1月新規雇用者数
  • 加 カナダ1月失業率

本日のコメント

ドル円は大幅に続伸し、NYでは昨年11月27日以来となる149円48銭までドルが買われたというより、「円が売られ」ました。やはり、日銀の内田副総裁の発言がトリガーになりましたが、それでも東京時間では、円が売られたといってもそれほど急激ではなく、148円台前半にとどまっていました。むしろ発言は株式市場に大きく影響し、「緩和姿勢が続く」との見方から日経平均株価が一時800円を超える上昇を見せ、3万6900円台に乗せる場面がありました。

内田副総裁は奈良市での講演で、「物価と賃金の好循環が見通せる確度が少しずつ高まっている」と述べ、ここまではこれまでも植田総裁が何度も口にしてきた「常套句」でしたが、マイナス金利を解除しても、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」と述べたことで、市場は「円売り」を加速させました。ドル円は欧州市場で149円台に乗せ、NYでは長期金利の上昇もあり、149円48銭まで「円安」が進行しました。日銀の金融政策の動向を巡っては海外勢の方がより敏感に反応しやすい傾向はこれまでと変わりません。昨日は円が一段と売られたことで、ユーロ円など、クロス円も総じて円安に振れています。146円台半ばから148円台半ばのレンジを上抜けし149円台半ばまで上値を伸ばしたことで、150円も視野に入ってきたと見ています。150円台に乗せることが出来るかどうかは分かりませんが、少なくとも一度はテストする可能性が高いと考えています。

ウクライナのゼレンスキー大統領と軍の総司令官ザルジニー氏との確執が取り沙汰されていましたが、ザルジニー氏はXで辞任したことを投稿しました。ザルジニー氏自らが辞任したのか、解任されたのかは明らかではありませんが、氏はXでチームの一員に残るとしつつも「そのような刷新をすべき時がやってきた」と述べ、シルスキー陸軍司令官が後任の総司令官になることを明らかにしています。「ザルジニー氏は兵士だけではなく、市民からも広く尊敬を集めていた。ロシア軍の戦力を前にますます劣勢に立たされ、西側の支援が不足する緊迫した状況で軍のトップが交代することになる」(ブルームバーグ)ロシアの攻勢が強まる中での軍トップの辞任は、今後の対ロシア戦略にも何らかの影響があると思われ、ゼレンスキー大統領にとっても、米大統領選挙の行方もあり、頭の痛いところです。

前日に続きリッチモンド連銀のバーキン総裁がブルームバーグのインタビューに答えていましたが、基本的な姿勢は変わらず、「労働市場は依然として非常に力強い。インフレ率が低下していくのは喜ばしく、このまま低下し続けることを願っている」と語り、「われわれは、辛抱強くなる時間はあると考えている」とし、「あと数カ月のインフレデータを見極めたい」との考えを示しています。足元の最大の変動要因である日米金融当局の政策スタンスでは、利下げのタイミングを模索しているFRBが「利下げは急がない」との姿勢を示し、一方大規模な金融緩和政策の修正が近いと見られている日銀の「修正への歩みが鈍い」ことが、ドル円を再び149円台まで押し上げています。先週も述べたように、テクニカルでは今年に入っては依然としてドル売りシグナルは点灯しておらず、ドル高を示唆しています。

本日のドル円は148円50銭〜150円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/8 内田・日銀副総裁 「物価と賃金の好循環が見通せる確度が少しずつ高まっている」、(マイナス金利を解除しても)、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」 円が売られ、ドル円は148円前後からNYでは149円台半ばまで上昇。日経平均株価は一時800円を超える上昇。
2/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「われわれはより良好なインフレデータを求めているわけではなく、2%の水準付近にあることを示す追加のインフレデータを求めているだけだ。さらに数カ月そうしたデータを目にできれば、強い確信を得ることができると私は考えている」 --------
2/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「到達するべきところに至るために辛抱強い姿勢でいることを強く支持する」、「勝利宣言は非常に心をひかれるが、私からその言葉を聞くことは決してないだろう」 --------
2/7 コリンズ・ボストン連銀総裁 「利下げに踏み切る前に、インフレ率が金融当局が目標とする2%に着実に近づきつつあることを示すさらなる証拠が必要だ」(同氏は今年のFOMCでの議決権は有していないが)、「年内に政策の引き締まりを緩和し始めるのが適切になる可能性が高い」 --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「インフレと労働市場の継続的な鈍化により、ある時点でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジの引き下げが適切になる可能性がある。一方、ディスインフレの進展が失速した場合、FRBの2つの責務を確実に進めるために、誘導目標レンジをより長期にわたって現行水準に維持することが適切になるかもしれない」 --------
2/6 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレが持続可能かつタイムリーな形で2%に戻る道筋を進んでいる十分な証拠がないまま、金利を余りに早期にあるいは、あまりに急速に引き下げるのは間違いとなろう。景気が想定通りに進展すれば、今年中にそうした確信が得られる。そして利下げを開始することが可能になる」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「過去6−9カ月に驚くべきことが起こった。インフレ率が非常に急低下した。まだ最終地点には達していないが、インフレに関して大きな進展を遂げた」、「こうした状況が続くと想定するなら、インフレは当局の2%目標に下がる軌道上を進んでいる。3カ月および6カ月のインフレ指標は、基本的には2%だ」と指摘した上で、「ただ、責務が完了したとはまだ言いたくない」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「過去7カ月にわたってかなり良好なインフレの統計が続いている。米金融当局の目標に近いか、それを下回るものすら見えた」、「これまで得られたようなデータの発表が続けば、正常化への道筋をはっきりと進むことになるはずだ」、(3月のFOMC会合まで何週間もあるので、具体的な決定にコミットしたくない、(いずれかの時点で0.5ポイントの大幅利下げを実施する可能性についても)、「臆測したくない」 --------
2/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2017年に完全雇用は約4.5%の失業率と一致すると考えられていたが、それは終わった」、「米失業率の長期見通しは大きく低下した」 --------
2/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「少なくともパンデミック後の回復期に、中立に相当する政策スタンスの水準が上昇したということはあり得る。それによってFOMCとしてはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げ始める前に、今後発表される経済データを精査する時間ができた。引き締め過ぎの政策が景気回復を頓挫させるリスクは低下している」 --------
2/4 パウエル・FRB議長 「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値がインフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」、「実際にそうなるとは考えていないが、多少時間をかけて、インフレ率が持続的な形で2%に向けて低下しているとデータで引き続き確認するのが賢明な方法だ」(3月19、20日の次回FOMCまでに)「そうしたレベルの確信に達する可能性は小さい」 --------
2/3 ボウマンFRB理事 「インフレ鈍化を示す最近の指標には、勇気づけられる」、(物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合)、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「経済はまだその状態には達しておらず、重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」、「将来の政策スタンスの変更を検討するに当たっては、引き続き慎重な姿勢で臨むつもりだ」 --------
1/31 パウエル・FRB議長 「政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークにある可能性が高く、経済が概ね予想通りに展開した場合は景気抑制的な政策を元に戻すことが適切になるとわれわれは考えている」、「適切だと判断すれば、われわれは現在のFF金利誘導目標レンジをより長期にわたって維持する用意がある」、「3月を利下げ開始時期と特定する確信のレベルに委員会が同月までに達しそうだとは、私は考えていないことを言っておきたいが、まだそれはわからない」、「3月利下げは、最も可能性の高いケース、ないし基本シナリオと呼ばれるものでは、恐らくないだろう」 株が大きく売られ、債券は急騰。金利が大きく低下したことでドル円は147円台半ばから146円前後まで下落。
1/31 FOMC声明文 「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとみていない」 株が大きく売られ、債券は急騰。金利が大きく低下したことでドル円は147円台半ばから146円前後まで下落。
1/25 トルコ中銀声明文 「ディスインフレ基調を確立するのに必要な金融引き締めは達成された。月次インフレ率の基調的トレンドに大幅な低下が見られ、インフレ期待が中銀の予測レンジに収束するまで、必要な限り現在の金利水準を維持する」 ドルリラは変わらず。
1/25 ラガルド・ECB総裁 「利下げはまだ議論されていない」、「前に自分が言ったことに変わりはない」、(ドイツなどが利下げには慎重な姿勢を見せていることに関して)、「政策委員会では、利下げを議論するのは時期尚早だというのがコンセンサスだった」 ユーロドルは1.09台から1.0822まで売られる。
1/23 植田・日銀総裁 「物価目標実現の確度が少しずつ高まっている」 ドル円148円から147円台割れまで売られる。
1/18 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率が金融当局の目標である2%に向かう軌道に乗っている証拠をより多く目にしたい」、「現在の私の見通しは、今年第3四半期(7−9月)のどこかで最初の利下げを行うというものだ。データがどのような進展をたどるかを見極める必要がある」 ドル円を押し上げる。
1/16 ウォラー・FRB理事 「持続的な形で個人消費支出(PCE)インフレ2%達成が射程距離内にあると確信を強めつつある。インフレが再燃せず、高水準にとどまらない限り、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを年内に引き下げることが可能になると、私は考えている」、「金利の引き下げを開始するのに適切な時期が来れば、秩序だって慎重に引き下げることが可能であり、そうすべきだ」、「経済活動と労働市場は良好な状態で、インフレ率は漸進的に2%へと低下しつつあることから、以前ほど急いだり迅速に利下げをしたりする理由が見当たらない」 債券と株が売られ、金利上昇にドル円は146円台半ばから147円台前半まで上昇。
1/15 ナーゲル・ドイツ連銀総裁 「利下げについての協議は時期尚早だろう」 --------
1/15 ホルツマン・オーストリア中銀総裁 「イエメンの親イラン武装組織フーシ派による動きで、地政学的な脅威が高まったが、これで終わりではないだろう。より広範な動きにつながる可能性がある。2024年は利下げを全く想定すべきではないと」 --------
1/12 グールズビー総裁・シカゴ連銀総裁 「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しているが、政策当局者らよりも先走っている可能性がある」、「市場は前後を誤っている」、「金利に関する判断を左右するのは実際のデータになる」、(昨年12月のFOMC会合で公表された最新の経済・金利予測で、2024年に3回の利下げが実施される可能性が高いことが示された点については)、「個々の予測であり、将来の政策に関するFOMC全体の見解として受け止めるべきではない」 --------
1/11 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「私が探しているのはインフレが当局の目標に回帰するという確信だ」(3月の利下げの見通しを聞かれ)、「FOMC会合前に、予断を与えたくない」 --------
1/11 メスター・クリーブランド連銀総裁 「3月利下げは時期として恐らく早過ぎる」 --------
1/11 ラガルド・ECB総裁 「利下げの時期についてはいえない。それを言えるのは、われわれがこの闘いに勝利した場合や、当局の予想通り2025年に2%に戻る場合、および今後数カ月のデータでそれが確信される場合だ」、「こうした確実性があれば、金利が下がり始めるだろうと確信している」 --------
1/10 シュナーベル・ECB理事 「利下げを協議するには時期尚早だ」、「2025年には目標の2%になる。地政学的な緊張がインフレの上振れリスクの一つだ」 ユーロドルは買われ、対円では昨年12月1日以来となる159円92銭まで上昇。
1/10 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「現在の金融政策の景気抑制的スタンスがバランス回復を継続させ、インフレ率を2%の長期目標に戻すというのが私の基本的な考え方だ」、「金融当局の目標を完全に達成するにはしばらくの間、景気抑制的なスタンスを維持する必要があるだろう。インフレ率が持続的に2%に向うと確信したときにのみ、抑制の程度を緩めることが適切となる」 ドル円の上昇を促す。
1/8 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」 --------
1/8 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」、「勝利宣言には時期尚早だ」 --------
1/3 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 --------
1/3 FOMC議事要旨 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和