今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円一時147円台半ばまで売られる」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大きく売られ、2月2日以来およそ1カ月ぶりに147円台半ばまで下落。中川日銀審議委員がマイナス金利解除に前向きな発言をしたことや、パウエル議長の連日の議会証言の内容が円買いドル売りを強めた。
  • ユーロドルはラガルド総裁の発言で1.08台半ばまで売られたが、その後のパウエル議長の議会証言でドル売りユーロ買いが強まり、1.09台半ばまで反発。
  • 株式市場では3指数が揃って続伸。パウエル議長が利下げの時期について「遠くない」と述べたことなどが材料となる。S&P500は52ポイント上昇し、最高値を更新。
  • 債券は続伸。長期金利は4.08%台へと低下。
  • 金は6日続伸し、連日で最高値を更新。原油は小幅安。
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新規失業保険申請件数 → 21.7万件
1月貿易収支 → −67.4b
1月消費者信用残高 → 19.495b
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ドル/円 147.59 〜 148.30
ユーロ/ドル 1.0868 〜 1.0949
ユーロ/円 160.55 〜 162.13
NYダウ +130.30 → 38,791.35ドル
GOLD +7.00 → 2,165.20ドル
WTI −0.20 → 78.93ドル
米10年国債 −0.019 → 4.083%

本日の注目イベント

  • 日 1月国際収支・貿易収支
  • 日 2月景気先行指数(CI)(速報値)
  • 日 2月景気一致指数(CI)(速報値)
  • 独 独1月貿易収支
  • 独 独1月鉱工業生産
  • 独 独1月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏10−12月期GDP(確定値)
  • 米 2月雇用統計
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、討論会に参加
  • 加 カナダ2月新規雇用者数
  • 加 カナダ2月失業率

本日のコメント

ドル円は続落し、2月2日以来となる147円59銭まで売られました。昨日のコメントでも触れたように、148円台半ばの重要なサポート水準を割り込んだことで、ドル売りが加速しました。ここ2日間の動きを見ると、パウエル議長の議会証言がドル売りを誘発し、日銀審議委員の発言が円買いを加速させた格好です。ただ、このシナリオは年初から予想されていたことで、問題はその「タイミングだけ」でした。

中川氏は松江市の講演で、「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」と述べ、金融正常化に向けた前向きな発言を行いました。これは、先の高田審議委員の発言と歩調を合わせるもので、18−19日に開催される3月決定会合でのマイナス金利解除の見方が一段と高まったようです。筆者は4月会合でのマイナス金利解除を予想していましたが、市場では3月会合での修正観測が一気に高まっています。今朝の日経新聞では植田総裁も、正常化に向け柔軟な姿勢を見せ始めてきたと、ありますが、もしそうだとすれば、3月が決定的になります。日銀政策委員は、総裁、副総裁を含めて9人で構成されています。総裁と副総裁2名はスタンスが一緒かと思われ、審議員2名に加え、総裁、副総裁3名が賛成すれば、仮に他4名が反対したとしても、賛成多数で正常化が決定されることになります。ただ、植田総裁は先のブラジルで行われたG20後の会見では、まだそのタイミングではない旨の発言を行っており、まだ「確定」とは言えません。パウエル議長も前日の下院での証言に続き上院で証言を行い、前日よりもさらに踏み込んだ発言を行ったと受け止めています。議長は質疑応答のなかで、「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」と発言し、「その確信を得た時点で、『今から遠くないその時点で』、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」と述べています。この発言を受け、市場では6月利下げの観測が強まり、金利が低下しドルが売られました。

ECBは定例理事会で、政策金利の据え置きを決定しました。これで4会合連続の据え置きとなりましたが、決定後の記者会見でラガルド総裁は、「インフレ鈍化は明らかだが、現時点では金利引き下げに踏み切る『十分な自信』はない」と述べ、その上で、「われわれにはもっと証拠と詳細が必要なのは明らかだ。そのデータが今後数カ月で出て来ることは分かっている。4月にはもう少し、6月にはさらに多くの事が分かるだろう」と発言しています。市場はこの発言を、6月利下げを示唆したと受け止め、ユーロ売りにつながっています。

ドル円は急速に値を下げてきました。相変わらず下落スピードは速いと感じますが、147円台半ばまで下げたことで、「12時間足」までの短い足では全て売りシグナルが点灯しています。あとは「日足」がどのように機能するのかということになりますが、一目均衡表では雲の上限は147円10−15銭程度の所にありますが、雲は先行スパン1と2が囲むもので、この雲全体が上昇しているため、このまま147円台、あるいは148円台前半で推移すれば、早晩、雲の上限に迫るか、雲の中に入る可能性があります。この雲は比較的厚く、雲を下抜けするには145円を割り込む必要があるため、直ぐに長期的なトレンド転換には至らないと思われますが、上でも述べてようにドル下落時のスピードは想定される以上に速い傾向があります。本日の雇用統計で反発する可能性はありますが、予想より軟調な結果が示され、ドルが売られるケースの方がより懸念されます。

本日のドル円は146円80銭〜148円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/7 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」、「その確信を得た時点で、今から遠くないその時点で、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」 株と債券が買われ、ドル円は147円52銭まで下落。
3/7 中川・日銀審議委員 「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」 ドル円は148円台後半から148円台半ばまで売られる。プラス圏で推移していた日経平均株価も大きく下落。
3/6 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない」、「年内いずれかの時点で、利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「当局としてはまだその用意はない」 株と債券が買われ、ドル円は149円10銭まで下落。
3/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「7−9月に1回利下げを始めるのが適切だ」、「利下げが連続したものになることは恐らくないだろう」、「不確実性を考えると、行動を起こした後に市場参加者や企業幹部、および家計がそえにどう反応するかを見ることがある程度望ましいのではないかと思う」 株と債券が売られドルが買われる。
2/29 デーリー・SF連銀総裁 「景気が腰折れする差し迫ったリスクはない。われわれが避けたいのは、インフレ率が2%になるまで待ち続け、非常に引き締められた金融政策を維持し、不必要な景気の低迷をもたらすことだ」 --------
2/29 ボスティック・アトランタ連総裁 「ここ数回発表されたインフレの数字は、この日公表されたものを含め、すぐに2%に到達するような進展ではなく、むしろいくらか起伏のある道のりになることを示している」 --------
2/28 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「持続的な2%インフレ目標に向けて、まだ長い道のりがある」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/28 コリンズ・ボストン連銀総裁 「年内に政策緩和を開始するのが適切になるだろう。そうなれば、徐々に金利を引き下げるという整然としたフォワードルッキングなアプローチが、物価の安定と最大限の雇用を促しながらも、リスク管理に必要な柔軟性を提供するはずだ」、「インフレ率は依然として高く、安定的な2%前後への道筋は険しいものになる公算が大きい」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/28 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2%への迅速な道のりではないことを示唆する兆候がなお見られる」、「そこに向って進み、悪いことが起こっていない限り、忍耐強く臨むことに満足している」、(今夏の利下げを実施することが適切になるとの見方を改めて示しながらも)、「まだやるべきことが残っており、勝利宣言することに消極的なのはこのためだ。長い闘いに取り組んでいる」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/27 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示唆されれば、金融政策が過度に抑制的にならないよう政策金利を徐々に引き下げるのがいずれ適切になるだろう」、「私の見解では、まだその地点には達していない」 --------
2/26 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「インフレ率が目標を上回り、労働市場が逼迫し、需要にかなりの勢いが見られる現状にあって、政策スタンスを先制的に調整する必要はないというのが、私の考えだ」、「忍耐強くこれまでの引き締め策に経済がどのように反応するのか引き続き見守り、インフレとの闘いで勝利を収めたと納得できる証拠を持つのが、最善の行動指針と確信している」 --------
2/21 ボウマン・FRB理事 (利下げついて質問を受け)、「それが今でないのは確実だ」 --------
2/21 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「財の価格は低下しているが、居住費とサービス価格がそれを相殺する以上の伸びを示した」、「現在は前年比のデータより、短期的なインフレの数値に注視している」 --------
2/21 FOMC議事録 「大部分の参加者は政策スタンスを時期尚早に緩和するリスクを指摘し、インフレ率が2%まで持続的に低下しているかを見極める上で、今後入手するデータを注意深く評価することの重要性を強調した」、「利下げを長く待ち過ぎることによる経済へのリスクを指摘した当局者は2名だけだった」とし、「参加者は景気抑制的な金融政策スタンスをどれくらいの期間維持する必要があるかに関連して不確実性を強調した」 株と債券が売られ、ややドルを押し上げる。
2/16 デーリー・総裁SF連銀総裁 「物価の安定は視野に入っている。ただ、まだやるべき仕事はある」、「供給力を上回る経済の勢いが継続しており、それが引き続きインフレ見通しにリスクになっている」 --------
2/14 バー・FRB副議長 「パウエル議長が直近の記者会見で示したように、FOMC参加者と私はインフレ率が2%に向う道筋にあると確信しているが、利下げプロセスを開始する前に、引き続き良好なデータを確認する必要がある。現在の状況を考慮し、政策正常化を検討する上で議長が述べた慎重なアプローチを完全に支持する」 --------
2/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「利下げはインフレが目標への軌道上を進んでいるとの確信と結びつけられるべきだ」、「多くの予想が示唆するように、インフレが数カ月にわたってやや高めに出たとしても、当局目標への道筋となお整合すると言えよう」 --------
2/12 ボウマン・FRB理事 「景気が現状で維持する限り、政策金利は適切な水準にあると考える。利下げの時期や幅について語るのは時期尚早だ。当面は利下げが適切だとはみていない」 --------
2/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ圧力が続くという現実的なリスクはあると思う。この段階で勝利を宣言するのはかなり大胆に思える」、「13日に発表される最新のインフレデータを検証するつもりだ」 --------
2/8 内田・日銀副総裁 「物価と賃金の好循環が見通せる確度が少しずつ高まっている」、(マイナス金利を解除しても)、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」 円が売られ、ドル円は148円前後からNYでは149円台半ばまで上昇。日経平均株価は一時800円を超える上昇。
2/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「われわれはより良好なインフレデータを求めているわけではなく、2%の水準付近にあることを示す追加のインフレデータを求めているだけだ。さらに数カ月そうしたデータを目にできれば、強い確信を得ることができると私は考えている」 --------
2/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「到達するべきところに至るために辛抱強い姿勢でいることを強く支持する」、「勝利宣言は非常に心をひかれるが、私からその言葉を聞くことは決してないだろう」 --------
2/7 コリンズ・ボストン連銀総裁 「利下げに踏み切る前に、インフレ率が金融当局が目標とする2%に着実に近づきつつあることを示すさらなる証拠が必要だ」(同氏は今年のFOMCでの議決権は有していないが)、「年内に政策の引き締まりを緩和し始めるのが適切になる可能性が高い」 --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「インフレと労働市場の継続的な鈍化により、ある時点でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジの引き下げが適切になる可能性がある。一方、ディスインフレの進展が失速した場合、FRBの2つの責務を確実に進めるために、誘導目標レンジをより長期にわたって現行水準に維持することが適切になるかもしれない」 --------
2/6 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレが持続可能かつタイムリーな形で2%に戻る道筋を進んでいる十分な証拠がないまま、金利を余りに早期にあるいは、あまりに急速に引き下げるのは間違いとなろう。景気が想定通りに進展すれば、今年中にそうした確信が得られる。そして利下げを開始することが可能になる」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「過去6−9カ月に驚くべきことが起こった。インフレ率が非常に急低下した。まだ最終地点には達していないが、インフレに関して大きな進展を遂げた」、「こうした状況が続くと想定するなら、インフレは当局の2%目標に下がる軌道上を進んでいる。3カ月および6カ月のインフレ指標は、基本的には2%だ」と指摘した上で、「ただ、責務が完了したとはまだ言いたくない」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「過去7カ月にわたってかなり良好なインフレの統計が続いている。米金融当局の目標に近いか、それを下回るものすら見えた」、「これまで得られたようなデータの発表が続けば、正常化への道筋をはっきりと進むことになるはずだ」、(3月のFOMC会合まで何週間もあるので、具体的な決定にコミットしたくない、(いずれかの時点で0.5ポイントの大幅利下げを実施する可能性についても)、「臆測したくない」 --------
2/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2017年に完全雇用は約4.5%の失業率と一致すると考えられていたが、それは終わった」、「米失業率の長期見通しは大きく低下した」 --------
2/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「少なくともパンデミック後の回復期に、中立に相当する政策スタンスの水準が上昇したということはあり得る。それによってFOMCとしてはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げ始める前に、今後発表される経済データを精査する時間ができた。引き締め過ぎの政策が景気回復を頓挫させるリスクは低下している」 --------
2/4 パウエル・FRB議長 「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値がインフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」、「実際にそうなるとは考えていないが、多少時間をかけて、インフレ率が持続的な形で2%に向けて低下しているとデータで引き続き確認するのが賢明な方法だ」(3月19、20日の次回FOMCまでに)「そうしたレベルの確信に達する可能性は小さい」 --------
2/3 ボウマンFRB理事 「インフレ鈍化を示す最近の指標には、勇気づけられる」、(物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合)、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「経済はまだその状態には達しておらず、重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」、「将来の政策スタンスの変更を検討するに当たっては、引き続き慎重な姿勢で臨むつもりだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和