今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円続落し146円台半ばに」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 欧州時間に147円台を割り込んだドル円はNYではさらに売られ、一時は146円48銭まで下落。2月の雇用統計では強弱まちまちの結果だったが、平均時給の鈍化が重石に。
  • ユーロドルも続伸。一時は2カ月ぶりに1.0980まで上昇。
  • 株式市場では雇用統計発表直後は株価は上昇したが、結局3指数は揃って反落。
  • 債券はほぼ横ばい。長期金利は4.07%台で推移。
  • 金は7日続伸し、2200ドル台に乗せる場面も。原油は続落。
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2月失業率 → 3.9%
2月非農業部門雇用者数 → 27.5万人
2月平均時給 (前月比) → 0.1%
2月平均時給 (前年比) → 4.3%
2月労働参加率 → 62.5%
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ドル/円 146.48 〜 147.53
ユーロ/ドル 1.0918 〜 1.0980
ユーロ/円 160.59 〜 161.29
NYダウ −68.66 → 38,722.69ドル
GOLD +20.30 → 2,185.50ドル
WTI −0.92 → 78.01ドル
米10年国債 −0.008 → 4.075%

本日の注目イベント

  • 日 10−12月GDP(改定値)
  • 米 米予算教書

本日のコメント

ドル円は続落し、NYでは一時146円48銭までドル売りが進みました。2月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が「27.5万人」と、市場予想の「20万人」を大きく超え1月と同じような結果に、ここまではドル買い材料でしたが、1月分は「35.3万人」から「22.9万人」に大きく下方修正され、失業率も「3.9%」と、市場予想の「3.7%」を上回り、2年ぶりの高水準でした。さらに平均時給は前月比で「0.1%」(1月は0.5%)、前年比では「4.3%」(1月は4.4%)と鈍化していたことで、インフレ抑制にとっては好材料とみなされ、「雇用の勢いは底堅いが、おおむね落ち着きつつある」と受け止められ、ドル売りの流れが継続されました。一旦傾いたドル売りの流れを変える程の内容ではなかったとみられています。

また、バイデン大統領が珍しくFRBの金融政策にも言及し、「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」と語ったこともドル売りに作用した可能性があります。バイデン氏はフィラデルフィアで行われた選挙イベントで、上記の発言を行い、「金利を決定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」と話しています。「小さな組織」というはFOMC会合のことでしょうか。11月の大統領選では トランプ氏と一騎打ちになることが確実と見られ、世論調査ではトランプ氏に2ポイント程の差を付けられていることを意識した発言だとは思いますが、異例なことです。バイデン氏はイスラエルのハマスへの攻撃についても言及しています。バイデン氏は、10日の日没後に始まるイスラム教の「ラマダン」までに、イスラエルとハマスとの停戦を期待していましたが、停戦協議が行き詰まりの様相を見せています。バイデン氏は9日のMSNBCとのインタビューで、「停戦合意はなお成立する可能性がある。イスラエルはラファを侵攻すれば『レッドライン(超えてはいけない一線)』を超えたことになる」とした上で、「さらに3万人ものパレスチナ人を死なせるわけにはいかない」と警告しています。「イスラエルのネタニヤフ首相は、取った行動の結果として、罪のない人命が失われていることにもっと注意を払うべきだ」と付け加えています。(ブルームバーグ)これまでイスラエルの暴挙に対しては弱腰の発言に終始していましたが、今回の発言はこれまでになく強気のものでした。これも選挙を意識したものであると思われます。

一方トランプ氏は、自身が所有するフロリダ州の会員制高級リゾート「マール・ア・ラーゴ」にハンガリーのオルバン首相を招き、夕食会や側近との1時間に及ぶ会談でもてなしています。トランプ氏は「彼は偉大な指導者であり、素晴らしい指導者だ」とオルバン氏を絶賛していました。トランプ氏は大統領在任中の2019年にも同氏とホワイトハウスで会談していますが、オルバン氏は以前、西側諸国にウクライナへの資金供給を打ち切るよう求めており、昨年10月には訪問先の中国でロシアのプーチン大統領とも会談しています。バイデン氏はオルバン氏を「民主主義が機能するとは思っていないし、独裁政治を目指している」と批判しています。

連日下値を切り下げてきたドル円は、このままだと明日、明後日にも日足では「雲」に入る可能性が高いとみられます。「雲の下限」は145円割れに位置していますが、ここを割り込むと「トレンド転換」の可能性が一気に高まります。労働市場を除く多くの指標で軟調な結果を示し、パウエル議長の議会証言で「年内のどこかで利下げを行うことが適切」、「利下げはそう遠くない」といった発言で急速にドル安が勢い付き、さらに日銀の金融正常化も視野に入ってきました。これらを押し戻す材料が求められます。

本日のドル円は145円〜147円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/9 バイデン大統領 「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」、「金利を決定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」 --------
3/7 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」、「その確信を得た時点で、今から遠くないその時点で、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」 株と債券が買われ、ドル円は147円52銭まで下落。
3/7 中川・日銀審議委員 「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」 ドル円は148円台後半から148円台半ばまで売られる。プラス圏で推移していた日経平均株価も大きく下落。
3/6 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない」、「年内いずれかの時点で、利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「当局としてはまだその用意はない」 株と債券が買われ、ドル円は149円10銭まで下落。
3/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「7−9月に1回利下げを始めるのが適切だ」、「利下げが連続したものになることは恐らくないだろう」、「不確実性を考えると、行動を起こした後に市場参加者や企業幹部、および家計がそえにどう反応するかを見ることがある程度望ましいのではないかと思う」 株と債券が売られドルが買われる。
2/29 デーリー・SF連銀総裁 「景気が腰折れする差し迫ったリスクはない。われわれが避けたいのは、インフレ率が2%になるまで待ち続け、非常に引き締められた金融政策を維持し、不必要な景気の低迷をもたらすことだ」 --------
2/29 ボスティック・アトランタ連総裁 「ここ数回発表されたインフレの数字は、この日公表されたものを含め、すぐに2%に到達するような進展ではなく、むしろいくらか起伏のある道のりになることを示している」 --------
2/28 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「持続的な2%インフレ目標に向けて、まだ長い道のりがある」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/28 コリンズ・ボストン連銀総裁 「年内に政策緩和を開始するのが適切になるだろう。そうなれば、徐々に金利を引き下げるという整然としたフォワードルッキングなアプローチが、物価の安定と最大限の雇用を促しながらも、リスク管理に必要な柔軟性を提供するはずだ」、「インフレ率は依然として高く、安定的な2%前後への道筋は険しいものになる公算が大きい」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/28 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2%への迅速な道のりではないことを示唆する兆候がなお見られる」、「そこに向って進み、悪いことが起こっていない限り、忍耐強く臨むことに満足している」、(今夏の利下げを実施することが適切になるとの見方を改めて示しながらも)、「まだやるべきことが残っており、勝利宣言することに消極的なのはこのためだ。長い闘いに取り組んでいる」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/27 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示唆されれば、金融政策が過度に抑制的にならないよう政策金利を徐々に引き下げるのがいずれ適切になるだろう」、「私の見解では、まだその地点には達していない」 --------
2/26 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「インフレ率が目標を上回り、労働市場が逼迫し、需要にかなりの勢いが見られる現状にあって、政策スタンスを先制的に調整する必要はないというのが、私の考えだ」、「忍耐強くこれまでの引き締め策に経済がどのように反応するのか引き続き見守り、インフレとの闘いで勝利を収めたと納得できる証拠を持つのが、最善の行動指針と確信している」 --------
2/21 ボウマン・FRB理事 (利下げついて質問を受け)、「それが今でないのは確実だ」 --------
2/21 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「財の価格は低下しているが、居住費とサービス価格がそれを相殺する以上の伸びを示した」、「現在は前年比のデータより、短期的なインフレの数値に注視している」 --------
2/21 FOMC議事録 「大部分の参加者は政策スタンスを時期尚早に緩和するリスクを指摘し、インフレ率が2%まで持続的に低下しているかを見極める上で、今後入手するデータを注意深く評価することの重要性を強調した」、「利下げを長く待ち過ぎることによる経済へのリスクを指摘した当局者は2名だけだった」とし、「参加者は景気抑制的な金融政策スタンスをどれくらいの期間維持する必要があるかに関連して不確実性を強調した」 株と債券が売られ、ややドルを押し上げる。
2/16 デーリー・総裁SF連銀総裁 「物価の安定は視野に入っている。ただ、まだやるべき仕事はある」、「供給力を上回る経済の勢いが継続しており、それが引き続きインフレ見通しにリスクになっている」 --------
2/14 バー・FRB副議長 「パウエル議長が直近の記者会見で示したように、FOMC参加者と私はインフレ率が2%に向う道筋にあると確信しているが、利下げプロセスを開始する前に、引き続き良好なデータを確認する必要がある。現在の状況を考慮し、政策正常化を検討する上で議長が述べた慎重なアプローチを完全に支持する」 --------
2/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「利下げはインフレが目標への軌道上を進んでいるとの確信と結びつけられるべきだ」、「多くの予想が示唆するように、インフレが数カ月にわたってやや高めに出たとしても、当局目標への道筋となお整合すると言えよう」 --------
2/12 ボウマン・FRB理事 「景気が現状で維持する限り、政策金利は適切な水準にあると考える。利下げの時期や幅について語るのは時期尚早だ。当面は利下げが適切だとはみていない」 --------
2/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ圧力が続くという現実的なリスクはあると思う。この段階で勝利を宣言するのはかなり大胆に思える」、「13日に発表される最新のインフレデータを検証するつもりだ」 --------
2/8 内田・日銀副総裁 「物価と賃金の好循環が見通せる確度が少しずつ高まっている」、(マイナス金利を解除しても)、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」 円が売られ、ドル円は148円前後からNYでは149円台半ばまで上昇。日経平均株価は一時800円を超える上昇。
2/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「われわれはより良好なインフレデータを求めているわけではなく、2%の水準付近にあることを示す追加のインフレデータを求めているだけだ。さらに数カ月そうしたデータを目にできれば、強い確信を得ることができると私は考えている」 --------
2/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「到達するべきところに至るために辛抱強い姿勢でいることを強く支持する」、「勝利宣言は非常に心をひかれるが、私からその言葉を聞くことは決してないだろう」 --------
2/7 コリンズ・ボストン連銀総裁 「利下げに踏み切る前に、インフレ率が金融当局が目標とする2%に着実に近づきつつあることを示すさらなる証拠が必要だ」(同氏は今年のFOMCでの議決権は有していないが)、「年内に政策の引き締まりを緩和し始めるのが適切になる可能性が高い」 --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「インフレと労働市場の継続的な鈍化により、ある時点でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジの引き下げが適切になる可能性がある。一方、ディスインフレの進展が失速した場合、FRBの2つの責務を確実に進めるために、誘導目標レンジをより長期にわたって現行水準に維持することが適切になるかもしれない」 --------
2/6 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレが持続可能かつタイムリーな形で2%に戻る道筋を進んでいる十分な証拠がないまま、金利を余りに早期にあるいは、あまりに急速に引き下げるのは間違いとなろう。景気が想定通りに進展すれば、今年中にそうした確信が得られる。そして利下げを開始することが可能になる」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「過去6−9カ月に驚くべきことが起こった。インフレ率が非常に急低下した。まだ最終地点には達していないが、インフレに関して大きな進展を遂げた」、「こうした状況が続くと想定するなら、インフレは当局の2%目標に下がる軌道上を進んでいる。3カ月および6カ月のインフレ指標は、基本的には2%だ」と指摘した上で、「ただ、責務が完了したとはまだ言いたくない」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「過去7カ月にわたってかなり良好なインフレの統計が続いている。米金融当局の目標に近いか、それを下回るものすら見えた」、「これまで得られたようなデータの発表が続けば、正常化への道筋をはっきりと進むことになるはずだ」、(3月のFOMC会合まで何週間もあるので、具体的な決定にコミットしたくない、(いずれかの時点で0.5ポイントの大幅利下げを実施する可能性についても)、「臆測したくない」 --------
2/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2017年に完全雇用は約4.5%の失業率と一致すると考えられていたが、それは終わった」、「米失業率の長期見通しは大きく低下した」 --------
2/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「少なくともパンデミック後の回復期に、中立に相当する政策スタンスの水準が上昇したということはあり得る。それによってFOMCとしてはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げ始める前に、今後発表される経済データを精査する時間ができた。引き締め過ぎの政策が景気回復を頓挫させるリスクは低下している」 --------
2/4 パウエル・FRB議長 「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値がインフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」、「実際にそうなるとは考えていないが、多少時間をかけて、インフレ率が持続的な形で2%に向けて低下しているとデータで引き続き確認するのが賢明な方法だ」(3月19、20日の次回FOMCまでに)「そうしたレベルの確信に達する可能性は小さい」 --------
2/3 ボウマンFRB理事 「インフレ鈍化を示す最近の指標には、勇気づけられる」、(物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合)、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「経済はまだその状態には達しておらず、重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」、「将来の政策スタンスの変更を検討するに当たっては、引き続き慎重な姿勢で臨むつもりだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和