今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米長期金利4.4%台に上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は3月のADP雇用者数の発表を受け上昇。再び152円に迫る151円95銭まで買われる。その後はISM非製造業景況指数が下振れしたことで151円台半ばまで売られる。
  • ユーロドルは1.07台後半から1.08台を回復。
  • 株式市場はまちまち。ダウは3日続落したものの、ナスダックとS&P500は小幅に反発。
  • 債券は続落し長期金利は昨年11月下旬以来となる4.42%台に上昇したが、その後は持ち直しほぼ前日比横ばい。
  • 金価格の上昇は止まらず、前日比33ドル高の2315ドルに。原油も小幅ながら4日続伸。いずれも地政学的リスクの高まりから資金が流入。
********************************
米 3月ADP雇用者数 → 18.4万人
米 3月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 51.7
米 3月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 52.1
米 3月ISM非製造業景況指数 → 51.4
********************************
ドル/円 151.59 〜 151.95
ユーロ/ドル 1.0773 〜 1.0837
ユーロ/円 163.54 〜 164.37
NYダウ −43.10 → 39,127.14ドル
GOLD +33.20 → 2,315.00ドル
WTI +0.28 → 85.43ドル
米10年国債 −0.002 → 4.347%

本日の注目イベント

  • 日 4月日銀地域経済報告(さくらリポート)
  • 欧 ECB議事要旨(3月開催分)
  • 欧 ユーロ圏3月総合PMI
  • 欧 ユーロ圏3月サービスPMI
  • 欧 ユーロ圏2月卸売物価指数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 2月貿易収支
  • 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、討論会に参加
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答に参加
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
  • 米 ぺーズ・セントルイス連銀総裁、開会挨拶
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀講演
  • 米 アドリアナ・クーグラー理事講演
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演

本日のコメント

ドル円はこれで何度152円ブレイクを試したのでしょうか?

昨日は、東京タイムからドルが底堅く、「ひょっとしたら今夜にも152円台か?」との「期待?」もありましたが、151円95銭で上昇を抑えられ、大台ブレイクは明日の雇用統計の結果に委ねられました。

3月のADP雇用者数が、市場予想を上回る「18.4万人」と、昨年7月以来の伸びを示したことでドル買いが加速しました。2月の同指標も「14.0万人」から「15.5万人」に上方修正されています。ADP雇用者数の担当者は発表文で、「インフレは鎮静化傾向にあるが、賃金は財とサービスの両面で過熱しつつあることが今回のデータで示された」と指摘しています。転職で賃金が特に伸びたセクターは建設と金融サービス、製造業だったということでした。(ブルームバーグ)前日発表された2月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数も好調だったことから、米労働市場は依然堅調で、明日の雇用統計への期待も高まるといった状況です。ただ、民間のADP雇用者数と労働省が発表する雇用統計では必ずしも結果が同方向でないことはこれまでにも何度もあり、ここは注意が必要です。152円に接近すると介入警戒感がかなり高まり、利益の出ているドルロングをそこで一旦手放す取引も多く見られると、今朝の経済紙にはコメントされていました。従って、152円台に乗せるには明日の雇用統計が上振れするなど、「強いドル買い材料」が不可欠のようです。昨日も151円90銭台での実弾介入がなかったことから、相場水準を押し下げる「押し下げ介入」がない限り、実弾介入はドル円が152円台に乗せ、上昇が加速したタイミングで出る可能性が高いと思われます。

パウエル議長は昨日カリフォルニア州のスタンフォード大学で講演を行い、改めて「利下げは急がない」姿勢を見せました。議長は、「最近のインフレデータは予想を上回ったものの、全体像を有意に変えるものではなかった」と説明し、「年内どこかの時点で利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」とし、「経済の強さと、インフレ面でのこれまでの進展を踏まえれば、今後発表されるデータに政策判断を導いてもらう時間はある」と話していました。また現時点で「最もタカ派」と見られるアトランタ連銀のポスティック総裁もCNBCとのインタビューで、「今年末、つまり第4四半期の利下げを開始するのが適切になると思う」と発言し、「インフレの軌道が鈍化すれば、多くの人が予想している以上に辛抱強くなる必要があるだろう」と述べています。ボスティック総裁は年内1回の利下げが適切としていましたが、10−12月が適切であると具体的な利下げ時期にも触れています。さらにクーグラーFRB理事もミズリー州のワシントン大学で講演を行い、「堅調な供給を背景に需要の伸びが鈍化しているため、失業率がかなり上昇することなく、さらなるディスインフレが実現するというのが私の基本的な予想だ」と説明した上で、「ディスインフレと労働市場の現状が私の予想通り進めば、今年中に政策金利をいくらか引き下げるのが適切だろう」と述べ、パウエル議長に近い内容の発言でした。

ウクライナのゼレンスキー大統領と岸田首相は昨日電話会談を行い、今後も両国で密接に連絡を取り合い、日本がウクライナへの支援を継続することを確認しましたが、最新の事情に詳しいウクライナ支援国当局者の話では、ウクライナでは弾薬が不足しており、ロシア軍に比べ発射できる弾薬数が3対1で劣勢に立たされていると伝えています。現時点ではロシア軍はウクライナ軍の7倍の弾薬を保有しており、エストニアのカラス首相は「多くの弾薬を保有している側が勝つというのも戦争の事実だ」と、さらなる支援を各国に呼びかけています。

ドル円は152円台乗せに失敗しては、151台半ばまで押し戻される展開です。上でも述べたように、明日の雇用統計が152円台乗せか、152円台乗せを諦めさせるのかを教えてくれそうです。本日のドル円は151円〜152円程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/3 クーグラー・FRB理事 「堅調な供給を背景に需要の伸びが鈍化しているため、失業率がかなり上昇することなく、さらなるディスインフレが実現するというのが私の基本的な予想だ」、「ディスインフレと労働市場の現状が私の予想通り進めば、今年中に政策金利をいくらか引き下げるのが適切だろう」 --------
4/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今年末、つまり第4四半期の利下げを開始するのが適切になると思う」、「インフレの軌道が鈍化すれば、多くの人が予想している以上に辛抱強くなる必要があるだろう」 --------
4/3 パウエル・FRB議長 最近のインフレデータは予想を上回ったものの、全体像を有意に変えるものではなかった」、「年内どこかの時点で利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「経済の強さと、インフレ面でのこれまでの進展を踏まえれば、今後発表されるデータに政策判断を導いてもらう時間はある」 --------
4/2 デーリー・SF連銀総裁 「成長は好調なので、金利を調整する緊急性はない。これは非常に合理的な基本シナリオだと思う」 --------
4/2 メスター・クリーブランド連銀総裁 「利下げを開始する前にインフレが鈍化しているというさらなる証拠を目にしたい。今年は3回の利下げが適切になる可能性が高いが、それより少ない回数が必要になるのかどうかは五分五分だ」 --------
3/29 パウエル・FRB議長 「米経済が非常に堅調なペースで成長し、労働市場も極めて強いという事実は、われわれが利下げという重要な一歩を踏み出す前にインフレ率の低下についてもう少し確信を強める機会を与えてくれる」、「早過ぎる利下げがインフレの再燃を招く一方、遅すぎる対応は、不必要ダメージを経済に与えることになり、慎重な対応が必要だ」、「利上げを急ぐ必要はない」 --------
3/27 ウォラー・FRB理事 利下げに踏み切る前に、少なくとも数カ月分の良い内容のインフレデータを目にしたい」、「最近の経済データでは年内に予想される利下げを遅らせるか、利下げ回数を減らすことが裏付けられる。金利引き下げを急ぐことはないと」 --------
3/27 神田・財務省財務官 「最近の円安の進展はファンダメンタルズに沿ったものとは到底言えず、背景に投機的な動きがあることは明らかだ。行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」、「最近の円安傾向はなだらかなものとは到底言えない」 介入警戒感が強まり、151円97銭まで買われたドル円は、その後151円03銭前後まで下落。
3/25 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「これに関して私の予想は中央値だった」(3回の利下げを見込んでいた) --------
3/25 クック・FRB理事 「雇用とインフレの2大責務はより良いバランスになりつつある」、「しかしながら物価の安定を完全に回復するためには、時間をかけて金融政策を緩和する慎重なアプローチが必要になるだろう」 --------
3/25 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (年内の利下げは1回にとどまるとの見方を改めて示し)、「自身の見通しに沿って経済が推移すれば、忍耐強くいられると思う」 --------
3/22 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレの軌道について昨年12月時点よりも確信がない。主要な数字の陰には厄介なことがいくつかある」、「今年の利下げは1回に留まると現時点では予想している」 --------
3/20 パウエル・FRB議長 「インフレ率が目標の2%に向う全体的なストーリーは変わっていない。たとえ労働市場が堅調であっても、利下げ開始を止められないだろう」 ドル円は151円台半ばから150円74銭まで下落。株価は大幅高。債券も小幅に買われる。
3/20 FOMC議事録 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」、「委員会は目標実現を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。FF金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとは見ていない」 --------
3/18 ウォーレン・サンダース議員などからの書簡 「利下げに向けた明確かつ迅速なタイムテーブルを提示するよう」、(利下げは)「理想的には5月のFOMCから開始するのが望ましい」 --------
3/9 バイデン大統領 「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」、「金利を決定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」 --------
3/7 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」、「その確信を得た時点で、今から遠くないその時点で、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」 株と債券が買われ、ドル円は147円52銭まで下落。
3/7 中川・日銀審議委員 「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」 ドル円は148円台後半から148円台半ばまで売られる。プラス圏で推移していた日経平均株価も大きく下落。
3/6 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない」、「年内いずれかの時点で、利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「当局としてはまだその用意はない」 株と債券が買われ、ドル円は149円10銭まで下落。
3/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「7−9月に1回利下げを始めるのが適切だ」、「利下げが連続したものになることは恐らくないだろう」、「不確実性を考えると、行動を起こした後に市場参加者や企業幹部、および家計がそえにどう反応するかを見ることがある程度望ましいのではないかと思う」 株と債券が売られドルが買われる。
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和