今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「今夜の米CPIに注目」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は今夜の米CPIの結果を見極める雰囲気の中、東京時間朝方には再び151円94銭まで買われた。介入警戒感が依然強くNYでは米金利の低下に151円58銭まで売られる場面も。
  • ユーロドルは動意もなく、1.08台前半から半ばでもみ合い。
  • 株式市場はこの日もまちまちの展開。ダウは小幅に売られたものの、ナスダックとS&P500は小幅高。
  • 債券は反発。長期金利は4.36%台に低下。
  • 金は続伸し最高値を更新。原油は中東情勢の緊張緩和観測から続落し85ドル台に。
ドル/円 151.58 〜 151.82
ユーロ/ドル 1.0848 〜 1.0885
ユーロ/円 164.54 〜 165.17
NYダウ −9.13 → 38,883.67ドル
GOLD +11.40 → 2,362.40ドル
WTI −1.20 → 85.23ドル
米10年国債 +0.058 → 4.362%

本日の注目イベント

  • 英 英3月消費者物価指数
  • 米 3月消費者物価指数
  • 米 3月財政収支
  • 米 FOMC議事録(3月19−20日分)
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、パネルディスカッションに参加
  • 米 ボウマン・FRB理事講演
  • 米 日米首脳会談(ワシントン)
  • 加 カナダ中銀政策金利発表

本日のコメント

ドル円は昨日朝方にはじりじりと買われ、再び151円94銭まで上昇しましたが、まるでそこに「壁」があるかのようにピタリと止まり152円には届きません。NYでは今夜の米消費者物価指数(CPI)の発表を前に債券を買い戻す動きが見られ、長期金利の低下にドル円は151円58銭まで売られています。言うまでもなく今夜のCPIが極めて重要な意味合いを持ち、その結果次第ではFRBによる利下げ開始が「7月会合」にずれ込む可能性もあります。現時点では「6月会合」での利下げ開始がコンセンサスですが、今回と、次回のCPIの結果が注目されます。

年内1回の利下げを予想するアトランタ連銀のポスティック総裁は9日、改めてその認識を示す一方で、経済情勢が変化すれば見解を変更する可能性も排除しないと述べています。総裁はヤフー・ファイナンスのライブで、「リスクは均衡していると私は見ており、米経済が極めて堅調で力強く、強靭なことを考えると、利下げがさらに遠のく可能性も排除できない。しかし、労働市場に大きな痛みが生じることを示唆する別のシグナルが出始めたら、政策スタンスを変更し、おそらく利下げを始めることに私はオープンだ」と話しています。総裁はこれまでの発言で、年1回の利下げの時期も今年10―12月(第4四半期)と予想しています。一方、久々にその名前を目にしました。セントルイス銀行の前総裁であるブラード氏です。ブラード氏は、米国でインフレが加速した際に早くから大幅な利上げに踏み切り、インフレが手に負えなくならないうちに止めるべきだと何度も警告していた「慧眼」の持ち主でした。実際総合CPIは、2022年6月には9%を超える水準にまで急騰しました。現在、パデユ―大学ビジネススクールの学部長を務めるブラード氏は「現状では恐らくFOMCとパウエル議長の発言を額面通り受け止めるべきだ。現時点で彼らの最も有力な予測は引き続き今年3回の利下げだ。それが基本シナリオだ」と述べていました。(ブルームバーグ)

植田日銀総裁は9日参議院財政金融委員会で「基調的な物価の上昇率はまだ2%を下回っていて、緩和的な金融状態を維持することが大切だ」と述べ、「見通し通りに2%に向けて上がっていけば、金融緩和を少し緩める判断も可能だ」と発言しています。今夜のCPIが上振れし、円安がさらに進行すれば、円の金利を引き上げる可能性も高まってきそうです。総裁はこれまでにも「為替の水準で金融政策を行っているわけではない」と、あくまでも為替と金融政策は別物だと言って来ましたが、さらなる円安の主因が金利差である以上、円安が進むに連れ、利上げへの圧力は高まりそうです。

本日のドル円は150円50銭〜152円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/9 植田・日銀総裁 「基調的な物価の上昇率はまだ2%を下回っていて、緩和的な金融状態を維持することが大切だ」、「見通し通りに2%に向けて上がっていけば、金融緩和を少し緩める判断も可能だ」 --------
4/9 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「リスクは均衡していると私は見ており、米経済が極めて堅調で力強く、強靭なことを考えると、利下げがさらに遠のく可能性も排除できない。しかし、労働市場に大きな痛みが生じることを示唆する別のシグナルが出始めたら、政策スタンスを変更し、おそらく利下げを始めることに私はオープンだ」 --------
4/8 ブラード・前セントルイス連銀総裁 「現状では恐らくFOMCとパウエル議長の発言を額面通り受け止めるべきだ。現時点で彼らの最も有力な予測は引き続き今年3回の利上げだ。それが基本シナリオだ」 --------
4/5 ローガン・ダラス連銀総裁 (インフレ率の上昇や、借り入れコストが以前考えられていたほど景気を抑制していない事実を理由に挙げ)、「こうしたリスクを踏まえると、利下げについて考えるのはあまりに早過ぎる」 --------
4/5 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%に向かって持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示唆されれば、金融政策が過度に抑制的にならないよう政策金利を徐々に引き下げるのがいずれ適切になるだろう」、「しかし、政策金利を引き下げるのに適切な地点にはまだ至っていない。複数のインフレ上振れリスクが引き続き見られる」 --------
4/4 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「一段の明瞭さを得るべく利下げまでに時間をかけるのが賢明だ」 --------
4/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「年初に予想を上回るインフレ指標が示されたものの、物価の伸びが鈍化しているという全体像が変わることはないだろう」 --------
4/4 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現在の状況はあるべき姿ではない。インフレはなお高すぎる」 --------
4/4 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレの横ばい推移が続くようであれば、利下げを実施する必要があるのかどうか疑問が生じる」、「特に、経済が堅調を維持する場合はなおさらだ」 NYダウ530ドル下落。ドル円はリスク回避から151円70銭台から151円13銭まで売られる。
4/3 クーグラー・FRB理事 「堅調な供給を背景に需要の伸びが鈍化しているため、失業率がかなり上昇することなく、さらなるディスインフレが実現するというのが私の基本的な予想だ」、「ディスインフレと労働市場の現状が私の予想通り進めば、今年中に政策金利をいくらか引き下げるのが適切だろう」 --------
4/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今年末、つまり第4四半期の利下げを開始するのが適切になると思う」、「インフレの軌道が鈍化すれば、多くの人が予想している以上に辛抱強くなる必要があるだろう」 --------
4/3 パウエル・FRB議長 最近のインフレデータは予想を上回ったものの、全体像を有意に変えるものではなかった」、「年内どこかの時点で利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「経済の強さと、インフレ面でのこれまでの進展を踏まえれば、今後発表されるデータに政策判断を導いてもらう時間はある」 --------
4/2 デーリー・SF連銀総裁 「成長は好調なので、金利を調整する緊急性はない。これは非常に合理的な基本シナリオだと思う」 --------
4/2 メスター・クリーブランド連銀総裁 「利下げを開始する前にインフレが鈍化しているというさらなる証拠を目にしたい。今年は3回の利下げが適切になる可能性が高いが、それより少ない回数が必要になるのかどうかは五分五分だ」 --------
3/29 パウエル・FRB議長 「米経済が非常に堅調なペースで成長し、労働市場も極めて強いという事実は、われわれが利下げという重要な一歩を踏み出す前にインフレ率の低下についてもう少し確信を強める機会を与えてくれる」、「早過ぎる利下げがインフレの再燃を招く一方、遅すぎる対応は、不必要ダメージを経済に与えることになり、慎重な対応が必要だ」、「利上げを急ぐ必要はない」 --------
3/27 ウォラー・FRB理事 利下げに踏み切る前に、少なくとも数カ月分の良い内容のインフレデータを目にしたい」、「最近の経済データでは年内に予想される利下げを遅らせるか、利下げ回数を減らすことが裏付けられる。金利引き下げを急ぐことはないと」 --------
3/27 神田・財務省財務官 「最近の円安の進展はファンダメンタルズに沿ったものとは到底言えず、背景に投機的な動きがあることは明らかだ。行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」、「最近の円安傾向はなだらかなものとは到底言えない」 介入警戒感が強まり、151円97銭まで買われたドル円は、その後151円03銭前後まで下落。
3/25 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「これに関して私の予想は中央値だった」(3回の利下げを見込んでいた) --------
3/25 クック・FRB理事 「雇用とインフレの2大責務はより良いバランスになりつつある」、「しかしながら物価の安定を完全に回復するためには、時間をかけて金融政策を緩和する慎重なアプローチが必要になるだろう」 --------
3/25 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (年内の利下げは1回にとどまるとの見方を改めて示し)、「自身の見通しに沿って経済が推移すれば、忍耐強くいられると思う」 --------
3/22 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレの軌道について昨年12月時点よりも確信がない。主要な数字の陰には厄介なことがいくつかある」、「今年の利下げは1回に留まると現時点では予想している」 --------
3/20 パウエル・FRB議長 「インフレ率が目標の2%に向う全体的なストーリーは変わっていない。たとえ労働市場が堅調であっても、利下げ開始を止められないだろう」 ドル円は151円台半ばから150円74銭まで下落。株価は大幅高。債券も小幅に買われる。
3/20 FOMC議事録 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」、「委員会は目標実現を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。FF金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとは見ていない」 --------
3/18 ウォーレン・サンダース議員などからの書簡 「利下げに向けた明確かつ迅速なタイムテーブルを提示するよう」、(利下げは)「理想的には5月のFOMCから開始するのが望ましい」 --------
3/9 バイデン大統領 「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」、「金利を決定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」 --------
3/7 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」、「その確信を得た時点で、今から遠くないその時点で、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」 株と債券が買われ、ドル円は147円52銭まで下落。
3/7 中川・日銀審議委員 「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」 ドル円は148円台後半から148円台半ばまで売られる。プラス圏で推移していた日経平均株価も大きく下落。
3/6 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない」、「年内いずれかの時点で、利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「当局としてはまだその用意はない」 株と債券が買われ、ドル円は149円10銭まで下落。
3/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「7−9月に1回利下げを始めるのが適切だ」、「利下げが連続したものになることは恐らくないだろう」、「不確実性を考えると、行動を起こした後に市場参加者や企業幹部、および家計がそえにどう反応するかを見ることがある程度望ましいのではないかと思う」 株と債券が売られドルが買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和