今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円153円台半ばまで売られるも元の鞘へ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は先週末の東京時間昼前に、イスラエルがイランの拠点を攻撃したとの報道で153円60銭までドルが売られる。その後は再び154円台を回復し、NYでは154円台半ばを中心に小動き。
  • ユーロドルは依然として1.06台での膠着状態が続く。
  • 株式市場ではダウは大きく買われたが、その他の2指数は大きく下げ、明暗が分かれる。S&P500とナスダックは6日続落。
  • 債券は反発。長期金利は4.62%台へとやや低下。
  • 金は上昇し再び2400ドル台に。原油は続伸。
ドル/円 154.47 〜 154.66
ユーロ/ドル 1.0641 〜 1.0678
ユーロ/円 164.48 〜 165.02
NYダウ +211.02 → 37,986.40ドル
GOLD +15.80 → 2,413.80ドル
WTI +0.41 → 83.41ドル
米10年国債 −0.021 → 4.621%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏4月消費者信頼感指数

本日のコメント

先週末の東京時間昼前に、「イスラエルがイラン中部の都市イスファハンをミサイル攻撃した」との報道にドル円は急落し、一時は153円60銭まで売られる場面がありました。日経平均株価が1300円を超える下げを見せたことも、リスク回避の流れを加速させたようです。ただその後は再び154円台を回復し、NYでは154円66銭までドルが買われ、元の鞘に戻った印象です。今朝の報道ではこの攻撃によってイラン核施設の一部が被害を受けたとの情報もあり、イスラエルとパレスチナ自治区ハマスとの戦争が、イランも巻き込み拡大しそうな状況になってきました。中東情勢の一段の悪化に、金と原油も買われています。

ドル円は介入警戒感から155円には届いていませんが、154円台から下方では直ぐに買いが入り154円台に戻される展開になっています。この状況は151円台で長くもみ合った状況によく似ています。ここでは152円に近付くと売られ、何度も上値をテストし押し戻されましたが、一旦152円が抜けると一気に水準を変えて来ました。そのような場面が再びあるのかもしれません。鈴木財務相はワシントンでの「G20」閉幕後の会見で、「為替は金利差だけで決まるわけではない」と発言していましたが、米国が足許の高金利を維持しなければならない状況になり、日本ではマイナス金利は解除されたものの、その後金利は上昇しておらず、やはり金利差がドルを支えているのは事実のようです。植田総裁は「G20」後にワシントンのピーターソン国際経済研究所で講演を行い、円安進行に伴う物価高について、「無視できない大きさの影響になれば、金融政策の変更も有り得る」との認識を示しました。足許の円安の大きな要因の一つが円の金利の低さや緩和状態の続く金融環境である以上、日銀は「為替水準を見ながら金融政策を行っているわけではない」と従来から繰り返してきましたが、もはや金融政策と為替は極めて密接に相関しており、無視できない状況にあります。FRBが利下げを行い、日銀が利上げに踏み切れば、かなり円高方向に振れると思われますが、果たしてそのような状況がやってくるのか、今後のデータ次第です。

米下院は20日、ウクライナに610億ドル(約9兆4300億円)相当の支援を新たに行う法案を可決しました。「ロシアの侵略に抵抗するウクライナの兵器備蓄が縮小する中、6カ月に及んだ政治的な行き詰まりがようやく打開された」(ブルームバーグ)との声がありました。イスラエルの防空システムの強化に52億ドルを盛り込む緊急予算と、中国の台湾侵略阻止を目的とした80億ドルの支援パッケージも併せて可決し、上院での可決を経てバイデン大統領の署名を持って成立する見込みです。バイデン大統領は声明で、上院に対して「法案を速やかに私に送るよう求める。ウクライナの戦場での必要性に応えるため、武器・装備を速やかに送れるようになる」と述べています。ゼレンスキー大統領は米ジョンソン下院議長に謝意を表す投稿を行いましたが、一方ロシアのパスコフ大統領報道官は、「ウクライナはさらに荒廃し、キーウ政権のためにさらに多くの人々が殺されることになるだろう」とコメントしています。

結局、政府日銀は「G20」閉幕まで「実弾介入」は行っていません。ドル円は155円台には届いていませんが、センチメントは155円をテストしそうな状況かと思われます。「152−155円のどこかでは介入がある」と予想した筆者の見方も、「155円台に乗せて勢いがついたら」という方向に修正を余儀なくさせられそうです。ただ、それでも安心は禁物です。

本日のドル円は154円〜155円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/19 植田・日銀総裁(ワシントンでのG20後の講演で) (円安進行に伴う物価高について)、「無視できない大きさの影響になれば、金融政策の変更も有り得る」 --------
4/18 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率は高すぎる。2%の目標まで引き下げる必要がある。忍耐強い姿勢で臨むことに違和感はない」 --------
4/18 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「米金融当局が利下げに踏み切る前にインフレが減速していると確信を強める必要があり、利下げを2024年より後に遅らせる可能性もある」 --------
4/18 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「金融政策は良い位置にいる。利上げは自分の基本的なシナリオではない」、「金融当局のインフレ目標を達成する上で経済データが正当化する場合は、利上げもあり得る」、「現行の金融政策を維持すれば、徐々にわれわれの目標に近づいていくだろう。利下げの緊急性は全く感じていない」 債券と株が売られ、金利が上昇したことでドル円は154円68銭までドル高に振れる。
4/17 鈴木・財務大臣 「急激な円安、ウォン安について認識を共有した」、「為替で具体的にどういう対応をするのかについてはコメントを控える」 --------
4/16 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利を現行水準で据え置いたままでインフレは一段と鈍化し、労働市場は需給バランスの改善が続く中で強さを維持するというのが、引き続き私のシナリオだ」、「もちろん先行きはなお非常に不透明であり、インフレが現在私の想定よりも根強いことが今後入手するデータで示唆されれば、現行の景気抑制的な政策スタンスをより長期にわたって維持するのが適切となろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「最近のデータがわれわれの確信を深めるものでないことは明らかで、それどころか確信を得るには想定以上の時間がかかる可能性が高いことを示唆している」、「労働市場の強さとこれまでのインフレ面での進展を踏まえると、景気抑制的な金融政策が作用する時間をさらに与え、当局としてデータと変化する見通しを指針とすることが適切となろう」 ドルが買われ、株と債券は売られる。
4/15 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「金利をより正常な水準に戻すには、どこかの時点でプロセスを開始する必要があり、私自身の見解では、そのプロセスはおそらく今年開始されるだろう」 --------
4/11 ラガルド・ECB総裁 「4月には幾つかの情報とデータが得られる。何人かの政策委員会メンバーはインフレ低下について既に十分な自信を持っている」、「しかし、6月には(新たな経済見通しなど)さらに多くのデータと情報が得られるだろう」 --------
4/11 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレ率が横ばいで推移し、実際に低下しない時期が長いほど、われわれはインフレに打ち勝つ確信を得るまで無期限で一時停止する必要があると言わざるを得ないだろう」、「インフレ率が目標の2%へ順調に低下しているとの確認が持てれば、当局者は利下げに踏み切るが、最近のデータからその確信は得られない」 --------
4/11 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはまだ、望んでいる状況に達していない。より長期的な道筋は、われわれが正しい方向に向かっていることを示唆しているが、時間をかけることが賢明だろう」 --------
4/11 コリンズ・ボストン連銀総裁 「全体として、最近のデータは私の見通しを大きく変えるものではないが、時期に関する不確実性と忍耐の必要性を浮き彫りにしている。正当化され得る今年の政策緩和が従来考えられていたよりも少ないことを示唆している」 --------
4/11 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「金融当局はインフレと雇用の目標におけるバランス改善に向け、極めて大きな進展を遂げた」、「ごく近い将来に政策を調整する明確 な必要性はない」 --------
4/11 神田・財務省財務官 「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」、「必ずしも特定の水準を念頭に置いて判断しているわけではない」、「過度な変動は国民経済の悪影響を与える」 --------
4/10 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはかなり前進していると思うが、そこに至るのがいかに容易であるかについては謙虚である必要がある。3月のCPIはインフレ抑制に一定の時間がかかることを示唆している」 --------
4/10 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「今年最初の3カ月は間違いなく悪化している。まだ道のりはあるが、昨年よりも物価押し下げと高水準の雇用維持のトレードオフが多くなりそうな地点に至りつつある」 --------
4/10 サマーズ元財務長官 「次の政策金利の動きが下向きではなく、上向きになる可能性を真剣に考えるべきだ。その確率は15−25%のレンジと見ている」 --------
4/9 植田・日銀総裁 「基調的な物価の上昇率はまだ2%を下回っていて、緩和的な金融状態を維持することが大切だ」、「見通し通りに2%に向けて上がっていけば、金融緩和を少し緩める判断も可能だ」 --------
4/9 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「リスクは均衡していると私は見ており、米経済が極めて堅調で力強く、強靭なことを考えると、利下げがさらに遠のく可能性も排除できない。しかし、労働市場に大きな痛みが生じることを示唆する別のシグナルが出始めたら、政策スタンスを変更し、おそらく利下げを始めることに私はオープンだ」 --------
4/8 ブラード・前セントルイス連銀総裁 「現状では恐らくFOMCとパウエル議長の発言を額面通り受け止めるべきだ。現時点で彼らの最も有力な予測は引き続き今年3回の利上げだ。それが基本シナリオだ」 --------
4/5 ローガン・ダラス連銀総裁 (インフレ率の上昇や、借り入れコストが以前考えられていたほど景気を抑制していない事実を理由に挙げ)、「こうしたリスクを踏まえると、利下げについて考えるのはあまりに早過ぎる」 --------
4/5 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%に向かって持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示唆されれば、金融政策が過度に抑制的にならないよう政策金利を徐々に引き下げるのがいずれ適切になるだろう」、「しかし、政策金利を引き下げるのに適切な地点にはまだ至っていない。複数のインフレ上振れリスクが引き続き見られる」 --------
4/4 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「一段の明瞭さを得るべく利下げまでに時間をかけるのが賢明だ」 --------
4/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「年初に予想を上回るインフレ指標が示されたものの、物価の伸びが鈍化しているという全体像が変わることはないだろう」 --------
4/4 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現在の状況はあるべき姿ではない。インフレはなお高すぎる」 --------
4/4 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレの横ばい推移が続くようであれば、利下げを実施する必要があるのかどうか疑問が生じる」、「特に、経済が堅調を維持する場合はなおさらだ」 NYダウ530ドル下落。ドル円はリスク回避から151円70銭台から151円13銭まで売られる。
4/3 クーグラー・FRB理事 「堅調な供給を背景に需要の伸びが鈍化しているため、失業率がかなり上昇することなく、さらなるディスインフレが実現するというのが私の基本的な予想だ」、「ディスインフレと労働市場の現状が私の予想通り進めば、今年中に政策金利をいくらか引き下げるのが適切だろう」 --------
4/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今年末、つまり第4四半期の利下げを開始するのが適切になると思う」、「インフレの軌道が鈍化すれば、多くの人が予想している以上に辛抱強くなる必要があるだろう」 --------
4/3 パウエル・FRB議長 最近のインフレデータは予想を上回ったものの、全体像を有意に変えるものではなかった」、「年内どこかの時点で利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「経済の強さと、インフレ面でのこれまでの進展を踏まえれば、今後発表されるデータに政策判断を導いてもらう時間はある」 --------
4/2 デーリー・SF連銀総裁 「成長は好調なので、金利を調整する緊急性はない。これは非常に合理的な基本シナリオだと思う」 --------
4/2 メスター・クリーブランド連銀総裁 「利下げを開始する前にインフレが鈍化しているというさらなる証拠を目にしたい。今年は3回の利下げが適切になる可能性が高いが、それより少ない回数が必要になるのかどうかは五分五分だ」 --------
3/29 パウエル・FRB議長 「米経済が非常に堅調なペースで成長し、労働市場も極めて強いという事実は、われわれが利下げという重要な一歩を踏み出す前にインフレ率の低下についてもう少し確信を強める機会を与えてくれる」、「早過ぎる利下げがインフレの再燃を招く一方、遅すぎる対応は、不必要ダメージを経済に与えることになり、慎重な対応が必要だ」、「利上げを急ぐ必要はない」 --------
3/27 ウォラー・FRB理事 利下げに踏み切る前に、少なくとも数カ月分の良い内容のインフレデータを目にしたい」、「最近の経済データでは年内に予想される利下げを遅らせるか、利下げ回数を減らすことが裏付けられる。金利引き下げを急ぐことはないと」 --------
3/27 神田・財務省財務官 「最近の円安の進展はファンダメンタルズに沿ったものとは到底言えず、背景に投機的な動きがあることは明らかだ。行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」、「最近の円安傾向はなだらかなものとは到底言えない」 介入警戒感が強まり、151円97銭まで買われたドル円は、その後151円03銭前後まで下落。
3/25 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「これに関して私の予想は中央値だった」(3回の利下げを見込んでいた) --------
3/25 クック・FRB理事 「雇用とインフレの2大責務はより良いバランスになりつつある」、「しかしながら物価の安定を完全に回復するためには、時間をかけて金融政策を緩和する慎重なアプローチが必要になるだろう」 --------
3/25 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (年内の利下げは1回にとどまるとの見方を改めて示し)、「自身の見通しに沿って経済が推移すれば、忍耐強くいられると思う」 --------
3/22 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレの軌道について昨年12月時点よりも確信がない。主要な数字の陰には厄介なことがいくつかある」、「今年の利下げは1回に留まると現時点では予想している」 --------
3/20 パウエル・FRB議長 「インフレ率が目標の2%に向う全体的なストーリーは変わっていない。たとえ労働市場が堅調であっても、利下げ開始を止められないだろう」 ドル円は151円台半ばから150円74銭まで下落。株価は大幅高。債券も小幅に買われる。
3/20 FOMC議事録 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」、「委員会は目標実現を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。FF金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとは見ていない」 --------
3/18 ウォーレン・サンダース議員などからの書簡 「利下げに向けた明確かつ迅速なタイムテーブルを提示するよう」、(利下げは)「理想的には5月のFOMCから開始するのが望ましい」 --------
3/9 バイデン大統領 「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」、「金利を決定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」 --------
3/7 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」、「その確信を得た時点で、今から遠くないその時点で、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」 株と債券が買われ、ドル円は147円52銭まで下落。
3/7 中川・日銀審議委員 「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」 ドル円は148円台後半から148円台半ばまで売られる。プラス圏で推移していた日経平均株価も大きく下落。
3/6 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない」、「年内いずれかの時点で、利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「当局としてはまだその用意はない」 株と債券が買われ、ドル円は149円10銭まで下落。
3/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「7−9月に1回利下げを始めるのが適切だ」、「利下げが連続したものになることは恐らくないだろう」、「不確実性を考えると、行動を起こした後に市場参加者や企業幹部、および家計がそえにどう反応するかを見ることがある程度望ましいのではないかと思う」 株と債券が売られドルが買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和