今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円、パウエル議長の議会証言を受け上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京時間では上値が重かったものの、欧州では161円台に乗せ、NYではパウエル議長の議会証言を受け161円52銭まで上昇。
  • ユーロドルは小幅に下落したものの、1.08台は維持。
  • 株式市場では前日と同様にダウが売られ、ナスダックとS&P500が上昇。ナスダック指数は6日連続で最高値を更新。
  • 債券は売られる。長期金利は4.29%へとやや上昇。
  • 金は反発し、原油は続落。
ドル/円 160.89 〜 161.52
ユーロ/ドル 1.0806 〜 1.0828
ユーロ/円 174.16 〜 174.59
NYダウ −52.82 → 39,291.97ドル
GOLD +4.40 → 2,367.90ドル
WTI −0.92 → 81.41ドル
米10年国債 +0.018 → 4.296%

本日の注目イベント

  • 日  日銀「債券市場参加者会合」(バイサイド)
  • 中  中国6月消費者物価指数
  • 中  中国6月生産者物価指数
  • 中東 OPEC月報
  • 米  クック・FRB理事講演
  • 米  パウエル・FRB議長、下院金融委員会で証言
  • 米  グールズビー・シカゴ連銀総裁とボウマン・FRB理事、イベントで開会挨拶

本日のコメント

ドル円は、短期的には「調整」が入り、ドルが売られる可能性があるのではないかと予想していますが、NYではパウエル議長の議会証言を受け、ドルが再び買われ161円台半ばまで円安が進みました。それにしても、円売りの勢いは止まりません。筆者は、金利差では説明がつかない円安の動きを、NISAによる毎月1兆円を上回る円売りのフローと、投機筋の高水準にも原因があると記しましたが、今朝の日経新聞でも同じような記事を載せていました。

記事は「ドル安に逆らう円相場」と題して、「ドル安が強まりつつあるにもかかわらず、円相場が160円台に定着している。国内勢を中心とした根強い円売りフローに加え、投機筋の円売りが歴代2番目の規模に膨らんでいることも見逃せない」と記されています。シカゴIMMによると、2日時点での円売り枚数は18万4223枚と、これまでの規模では歴代第2位となるほど高水準になっています。1枚が250万円であることから、2兆300億円を超える「円売りドル買い」を行っていることになります。記事は「歴史的水準に膨らんだ円売りの巻き戻しのきっかけにもなり得るだけに、161円前後で膠着する円相場は『嵐の前の静けさ』かもしれない」と結んでいました。

注目されたパウエル議長の議会証言で、議長はインフレ減速の証拠をさらに確認したいと述べつつも、市場の利下げ期待を損ねることのない発言を行いました。「われわれが直面するリスクは高止まりするインフレだけではない。最新のデータは労働市場の状況が2年前に比べ著しく冷え込んだことを示した。過去2つの統計が発表されるまで、このような発言はしなかっただろう」と述べ、「政策引き締めの緩和が遅すぎたり、少な過ぎた場合、経済活動と雇用を不当に弱める恐れがある」と指摘し一方で、「利下げが早すぎたり、多過ぎたりした場合は、インフレ面での進展が失速または反転しかねない」と証言し、利下げ開始のタイミングについては触れていません。全体的にみたら、ややハト派寄りと受け止められまましたが、ドルが買われています。

現時点では大統領選からの撤退は否定しているバイデン大統領ですが、イリノイ州のプリッカー知事は「バイデン氏は民主党の候補者になるだろう。バイデン氏とハリス副大統領を支持するつもりだ」と述べ、民主党内に広がっている「バイデン氏撤退論」払拭に躍起です。また、「バイデン氏は戦略についてもっとコミュニケーションが必要だ」とも述べていました。またこの日下院で議会証言を行ったイエレン財務長官も、「これまで共に出席した会合では、バイデン氏は極めて鋭敏だ」と証言し、「これには中国の習近平国家主席や各国首脳との数時間に及ぶ国際会議も多く含まれる」と、バイデン氏を擁護するような証言を行っていました。ただ一方で、健康面での不安視する声も上がっており、ホワイトハウスにはパーキンソン病専門の医師が頻繁に訪れていることも噂の種になっているようです。

本日のドル円は160円50銭〜161円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
6/26 神田・財務官 「行き過ぎた動きに対して必要な対応を取る」と述べ、「特定の相場水準を対象には考えておらず、あくまで投機などによる急激な変動あるいは無秩序な動きに対して対応する方針に変わりはない」、「最近の円安の進行には深刻な懸念を有している」、「高い緊張感を持って市場の動向を注視している」 ドル円が160円台半ばまで上昇した際に。発言を受けやや円が買い戻されたが、直ぐに円売りが再燃。
6/25 クック・FRB理事 「インフレが大幅に改善し、労働市場が徐々に冷え込む状況では、経済の健全なバランスを維持するために政策の抑制度合いを緩和することが、ある時点で適切となるだろう」、「3カ月と6カ月先のインフレ率は23年下期(7−12月)に見られたような『良好な数字』と類似したものになると予想している」 --------
6/25 ボウマン・FRB理事 「経済見通しを巡るリスクと不確実性を踏まえ、政策スタンスの将来的な変更を検討するアプローチにおいて、私は慎重姿勢を保つつもりだ」 --------
6/24 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場の調整は今のところ緩やかで、失業率は小幅にしか上昇していない。しかし、このような緩やかな展開になる可能性が低下する時点に近づいている」 --------
6/24 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレに関してここ1カ月に見られたようなデータがさらに数カ月続き、実体経済の他の部分の状況も鈍化した場合、『これまでのような景気抑制的な政策を維持すべきなのだろうか』という疑問を持ち始めざるを得なくなる」、「インフレ率が当局目標の2%に向けて低下しているという確信をもう少し強められると期待している」 --------
6/20 米財務省 「財務省としては、自由に取引される大規模な為替市場で介入は適切な事前協議を伴う形で極めて例外的な状況に限定されるべきだ」、「日本は為替運営の点で透明性がある」 日本を為替「監視リスト」に追加。ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (米金融当局はインフレ率を目標の2%へと引き下げるとしつつも)、「それには1、2年かかる可能性が高い」 ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「今回のインフレの数字は非常に心強いもので、こうした数字がさらに得られるなら、利下げは可能だというのが私の見解だ」 --------
6/18 植田・日銀総裁 (7月会合までに入手できる経済・物価・金融情勢い関するデータや情報次第としながらも)、「場合によっては政策金利が引き上げられるということも十分あり得るというふうに考えている」、「基調的な物価上昇率がしっかりと高まっていくかどうか、もう少し引き続き点検していく必要があると考えた」 やや円を買い戻す動きもあり、ドル円は小幅に下落。
6/17 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現時点における自身の予想に基づけば、年内1回の利下げが適切だ。ただ、利下げの前にさらに数ケ月のインフレ改善を確認したい」 --------
6/14 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対するリスクはまだ上向きだと考えている。労働市場へのリスクは両方向だと思う」、(今年1回の利下げを示唆した最新のFOMC予想について)、「自分の経済予測とかなり近い」 --------
6/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレ率が2%に戻りつつあることを確信するには、もっと多くの証拠が必要だ。われわれは現在、何らかの意思を決定する前に時間をかけてインフレ統計、および経済や労働市場に関するデータをさらに見られる非常に良い位置にいる」、「年内に1回の利下げがあるとすれば、年末に向けて行われる公算が大きい」 --------
6/12 パウエル・FRB議長 「最近のインフレ指標は今年の早い時期より良好な内容で、われわれのインフレ目標に向けて緩慢なる一段の進展が見られている」、「インフレ率が持続的に2%に向っているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」、「今回の統計が確信を強める上では前進と言えるが、現時点での利下げを正当化するほどではない」 ドル円は155円台から156円台に反発。
6/12 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある。委員会は目標実現のため、FF金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
6/10 ラガルド・ECB総裁 「われわれは適切な決定を下したが、それは金利が直線的な低下軌道にあることを意味するものではない」、「われわれは新たな見通しが立った時のみならず、あらゆる段階で再評価を行う」、「ディスインフレは十分に進行しており、向こう1年半にわたり継続すると考えている。そのため金利を引き下げる可能性がある。だが、まだ勝利宣言はしない」 --------
6/6 ホルツマン・オーストリア中銀総裁 「年内3回のECB利下げという当初の想定が現実になり、一方でFRBが相応の動きをしなかった場合、為替レートやインフレ率に影響を与えることは間違いない」、「さまざまな意見がかわされたが、政策委員会の見解は他に方法はないというものだった」 --------
6/6 ラガルド・ECB総裁 「今日から利上げを巻き戻す段階に移行するのかと聞かれれば、そうだとは言わない。その可能性は極めて高いが、データ次第だろう。非常に不確実なのは、われわれが進むスピードとそれに要する時間だ」、「委員会は引き続き、会合ごとのアプローチを取る。特定の金利の道筋をあらかじめ約束はしない。利下げ決定は1人を除く全員が同意した」 タカ派的な内容だったためユーロドルは1.09台まで買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和