「ドル円161円81銭まで上昇」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は緩やかに上昇し、NYでは161円81銭まで買われた。株価が大きく上昇したことでリスクオンが強まり低金利の円が売られた。
- ユーロドルは1.08台前半で小動き。
- 株式市場は3指数が揃って大幅に上昇。ダウは3日ぶりに買われ429ドル高。ナスダックとS&P500は連日の最高値更新。
- 債券は小幅に反発。長期金利は4.28%台に低下。
- 金は続伸し、原油も反発。
ドル/円 | 161.43 〜 161.81 |
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ユーロ/ドル | 1.0818 〜 1.0830 |
ユーロ/円 | 174.75 〜 175.16 |
NYダウ | +429.39 → 39,721.36ドル |
GOLD | +11.80 → 2,379.70ドル |
WTI | +0.69 → 82.10ドル |
米10年国債 | −0.012 → 4.284% |
本日の注目イベント
- 豪 クック・FRB理事講演(アデレード)
- 独 独6月消費者物価指数(改定値)
- 英 英5月鉱工業生産
- 英 英5月貿易収支
- 米 6月消費者物価指数
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 6月財政収支
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
- 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演、質疑応答に参加
本日のコメント
ドル円はゆっくりとした動きながら確実に上昇し、NYでは161円81銭までドル高が進みました。米金利との相関性も見られず、昨日のNYでは株価が大きく上昇し、「『リスクオン』が強まったことで、低金利の円が売られた」といった声が聞かれました。介入警戒感がある上に、米景気の減速が見込まれる環境の中でも「円売り」の流れは止まりません。そう言えば、今週に入ってからは「口先介入」さえ聞かれなくなっています。先週3日に記録した161円95銭にも近づき、162円台も視野に入ってきたのでしょうが、筆者は依然として目先のドル高にはこれまで以上の警戒感を維持し、「短期的な調整」もあるのではないかと考えています。
パウエル議長は前日の上院での議会証言に続き、昨日は下院でも証言を行いました。基本的には前日の内容と変わりはありませんが、委員から「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」と答え、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」と発言しています。また、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」と述べていました。発言内容はそれ程ハト派寄りではなかったと、個人的には受け止めましたが、株式市場では主要3指数が大幅高を演じ、ナスダックはこれで7日連続で最高値を更新し、S&P500も初めて「5600」の大台に乗せています。株式市場では利下げを織り込む動きが鮮明ですが、そうであれば「ドル安円高」要因のはずですが、ドル円は上昇しています。やはり、「行くところまで行き着かないと止まらない」ということでしょうか。
NATO首脳会議がワシントンで開かれ、バイデン大統領は創設75周年を記念した演説を行いました。「NATOは歴史上、かつてなく強固になっている。ロシアの侵攻が続くウクライナを支援するため、加盟国が引き続き結束する」と、力強く述べました。テレビ討論会での失敗を払拭するかのように、言葉もはっきりとし、詰まることもなく演説を行っていました。同じ轍を踏まないよう、かなり周到に行っていたと思われます。バイデン氏が大統領選から撤退すべきかどうかについて、ペロシ元下院議長が久しぶりにマスコミに登場し意見を述べています。ペロシ氏はMSNBとのインタビューで、「時間がなくなりつつある中で、民主党はバイデン氏に決断を促しているが、彼は愛され尊敬されている。彼がやると決めたことは何でもやってほしい」と述べながらも、「バイデン氏が再選を目指して選挙戦を継続するかどうかは、バイデン氏自身の決断にかかっている」と話していました。現時点では、バイデン氏には大統領選からの撤退の意志はないようですが、民主党内では意見が割れています。NBCは15日(月)にバイデン氏とインタビューを行うことを発表していますが、残された時間も少ないことから、この辺りで「撤退か前進か」最終的な結論が出る可能性もありそうです。
イスラエル軍は相変わらずパレスチナ自治区ガザへの攻撃を強めており、カタールとエジプトが引き続き停戦への仲介を行っていますが、ハマス側は、これまで協議再開の妨げになっていた「恒久停戦」を前提とする要求を取り下げたと伝えられています。「恒久停戦」を取り下げたことで11日にも協議が再開される見込みで、「行き詰まりを打開する可能性がある」とも見られています。一方でイスラエル軍は、ガザ地区北部の住人全員に対して、直ちに同地区から退避するよう命じています。イスラエルはこれまで既にガザ市東部の住民には退避を求めていましたが、市全体を対象に退避命令を出したのは今回が初めてとのことです。大規模な攻撃を行う前兆との見方もあります。
本日は米6月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。9月利下げが確実視されているなか、さらに年内もう1回の利下げ観測が強まるのかどうか注目です。本日のドル円は160円30銭〜162円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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7/11 | パウエル・FRB議長 | 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 | 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。 |
7/2 | パウエル・FRB議長 | 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。 |
6/26 | 神田・財務官 | 「行き過ぎた動きに対して必要な対応を取る」と述べ、「特定の相場水準を対象には考えておらず、あくまで投機などによる急激な変動あるいは無秩序な動きに対して対応する方針に変わりはない」、「最近の円安の進行には深刻な懸念を有している」、「高い緊張感を持って市場の動向を注視している」 | ドル円が160円台半ばまで上昇した際に。発言を受けやや円が買い戻されたが、直ぐに円売りが再燃。 |
6/25 | クック・FRB理事 | 「インフレが大幅に改善し、労働市場が徐々に冷え込む状況では、経済の健全なバランスを維持するために政策の抑制度合いを緩和することが、ある時点で適切となるだろう」、「3カ月と6カ月先のインフレ率は23年下期(7−12月)に見られたような『良好な数字』と類似したものになると予想している」 | -------- |
6/25 | ボウマン・FRB理事 | 「経済見通しを巡るリスクと不確実性を踏まえ、政策スタンスの将来的な変更を検討するアプローチにおいて、私は慎重姿勢を保つつもりだ」 | -------- |
6/24 | デーリー・SF連銀総裁 | 「労働市場の調整は今のところ緩やかで、失業率は小幅にしか上昇していない。しかし、このような緩やかな展開になる可能性が低下する時点に近づいている」 | -------- |
6/24 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレに関してここ1カ月に見られたようなデータがさらに数カ月続き、実体経済の他の部分の状況も鈍化した場合、『これまでのような景気抑制的な政策を維持すべきなのだろうか』という疑問を持ち始めざるを得なくなる」、「インフレ率が当局目標の2%に向けて低下しているという確信をもう少し強められると期待している」 | -------- |
6/20 | 米財務省 | 「財務省としては、自由に取引される大規模な為替市場で介入は適切な事前協議を伴う形で極めて例外的な状況に限定されるべきだ」、「日本は為替運営の点で透明性がある」 | 日本を為替「監視リスト」に追加。ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。 |
6/20 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (米金融当局はインフレ率を目標の2%へと引き下げるとしつつも)、「それには1、2年かかる可能性が高い」 | ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。 |
6/20 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「今回のインフレの数字は非常に心強いもので、こうした数字がさらに得られるなら、利下げは可能だというのが私の見解だ」 | -------- |
6/18 | 植田・日銀総裁 | (7月会合までに入手できる経済・物価・金融情勢い関するデータや情報次第としながらも)、「場合によっては政策金利が引き上げられるということも十分あり得るというふうに考えている」、「基調的な物価上昇率がしっかりと高まっていくかどうか、もう少し引き続き点検していく必要があると考えた」 | やや円を買い戻す動きもあり、ドル円は小幅に下落。 |
6/17 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「現時点における自身の予想に基づけば、年内1回の利下げが適切だ。ただ、利下げの前にさらに数ケ月のインフレ改善を確認したい」 | -------- |
6/14 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「インフレに対するリスクはまだ上向きだと考えている。労働市場へのリスクは両方向だと思う」、(今年1回の利下げを示唆した最新のFOMC予想について)、「自分の経済予測とかなり近い」 | -------- |
6/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレ率が2%に戻りつつあることを確信するには、もっと多くの証拠が必要だ。われわれは現在、何らかの意思を決定する前に時間をかけてインフレ統計、および経済や労働市場に関するデータをさらに見られる非常に良い位置にいる」、「年内に1回の利下げがあるとすれば、年末に向けて行われる公算が大きい」 | -------- |
6/12 | パウエル・FRB議長 | 「最近のインフレ指標は今年の早い時期より良好な内容で、われわれのインフレ目標に向けて緩慢なる一段の進展が見られている」、「インフレ率が持続的に2%に向っているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」、「今回の統計が確信を強める上では前進と言えるが、現時点での利下げを正当化するほどではない」 | ドル円は155円台から156円台に反発。 |
6/12 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある。委員会は目標実現のため、FF金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 | -------- |
6/10 | ラガルド・ECB総裁 | 「われわれは適切な決定を下したが、それは金利が直線的な低下軌道にあることを意味するものではない」、「われわれは新たな見通しが立った時のみならず、あらゆる段階で再評価を行う」、「ディスインフレは十分に進行しており、向こう1年半にわたり継続すると考えている。そのため金利を引き下げる可能性がある。だが、まだ勝利宣言はしない」 | -------- |
6/6 | ホルツマン・オーストリア中銀総裁 | 「年内3回のECB利下げという当初の想定が現実になり、一方でFRBが相応の動きをしなかった場合、為替レートやインフレ率に影響を与えることは間違いない」、「さまざまな意見がかわされたが、政策委員会の見解は他に方法はないというものだった」 | -------- |
6/6 | ラガルド・ECB総裁 | 「今日から利上げを巻き戻す段階に移行するのかと聞かれれば、そうだとは言わない。その可能性は極めて高いが、データ次第だろう。非常に不確実なのは、われわれが進むスピードとそれに要する時間だ」、「委員会は引き続き、会合ごとのアプローチを取る。特定の金利の道筋をあらかじめ約束はしない。利下げ決定は1人を除く全員が同意した」 | タカ派的な内容だったためユーロドルは1.09台まで買われる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書