今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米6月CPIを受け、ドル円157円台に急落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は急落。6月のCPIを受けドル円は、161円台半ばから一気に157円40銭まで売られる。FRBによる利下げが確実になった他、日本政府による介入の噂も。
  • ユーロドルでもドルが売られ、ユーロは1.09近辺まで上昇。
  • 株式市場ではダウは小幅に買われたものの、ナスダックは364ポイントの大幅安。
  • 債券も買われ、長期金利は4.22%台に低下。
  • 金は大幅に続伸し2400ドル台を回復。原油も小幅高。
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6月消費者物価指数 → 3.0%(前年同月比)
新規失業保険申請件数 → 22.2万件
6月財政収支 → −66.0b
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ドル/円 157.40 〜 161.62
ユーロ/ドル 1.0845 〜 1.0900
ユーロ/円 171.49 〜 175.42
NYダウ +32.39 → 39,753.75ドル
GOLD +42.20 → 2,421.90ドル
WTI +0.52 → 82.62ドル
米10年国債 −0.062 → 4.222%

本日の注目イベント

  • 日 5月鉱工業生産(確定値)
  • 中 中国 6月貿易収支
  • 米 6月生産者物価指数
  • 米 7月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 米 企業決算 → ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン、シティーグループ

本日のコメント

ようやくドルが大きく売られ、円が全面高の展開が訪れました。

本「アナリストレポート」でも、週初から何度か指摘してきたように、米経済の鈍化を示唆する指標が相次ぎ、さらに介入警戒感も高まる中、ドルの先高には注意が必要だと書いてきました。ドル円はそんなことなどおかまいなくジリジリと上昇し、162円に迫る、161円台後半まで買われてきました。筆者は、米ファンダメンタルズの変化と介入の可能性に加え、シカゴIMMの円売りが記録的な高水準なっていること、さらに、「4時間足」での微妙なチャートの変化にも注目して注意を促してきました。(参照:今日のアナリストレポート)

そのきっかになったのが、昨日発表された6月の米消費者物価指数(CPI)でした。総合CPIでは前月比が何と「−0.1%」に低下し、前年比では「3.0%」でした。コアCPIは前月比で「0.1%」、前年同月比で「3.3%」と、こちらは前月から変わっていません。昨日の相場の大きな動きは、前月比で「マイナス」であったことに大きく反応した模様です。これで、9月会合での利下げは確実になったと思われますが、OISでの利下げ確率も一気に「91.0%」にまで上昇しています。筆者は年内2回の利下げを想定していますが、12月の利下げ確率も「82.3%」に高まっています。

パウエル議長は今週の議会証言でも、2%の物価目標達成にはある程度自信を示しましたが、それでも「2%の物価目標に向っていることを確信するさらなるデータが必要だ」と述べていました。今回の結果を受け、議長もきっと胸をなでおろしたことでしょう。実際、今回の結果を受けFOMCメンバーの発言にもやや変化が出ています。シカゴ連銀のグールズビー総裁は今回の結果を踏まえ、「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」と歓迎し、「上々だ。強く勇気づけられる」と述べています。また、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁も、「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」と、自信を深めています。

上でも述べたように、ドル円は短期的な調整局面に入ったのかもしれません。特に、好調だった労働市場でも、ADP雇用者数や雇用統計にも減速の兆しが出てきたことに注目しています。ドル円の急落を受け、神田財務官は介入の有無を聞かれ、「これまで通り何もコメントする立場ではない」と述べていましたが、個人的には時間からすると、介入の可能性は低いと考えています。「160−165円のどこかでは介入の可能性はある」と考えていますが、CPI発表直後にドル売りを後押しするような介入のやり方は考えにくいと想います。実際に介入があったかどうかは、いずれ判明しますが、もし介入であったとしたら、その手法に対して[あっぱれ]と言いたいと思います。CPIが下振れしての介入は、仮にそれが上触れしていたら「当然介入があった」ことになります。

本日のドル円は156円50銭〜160円50銭程度を予想します。

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来週16日(火)の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせて頂きます。ご愛読書の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程お願い申し上げます。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/11 デーリー・総裁SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
6/26 神田・財務官 「行き過ぎた動きに対して必要な対応を取る」と述べ、「特定の相場水準を対象には考えておらず、あくまで投機などによる急激な変動あるいは無秩序な動きに対して対応する方針に変わりはない」、「最近の円安の進行には深刻な懸念を有している」、「高い緊張感を持って市場の動向を注視している」 ドル円が160円台半ばまで上昇した際に。発言を受けやや円が買い戻されたが、直ぐに円売りが再燃。
6/25 クック・FRB理事 「インフレが大幅に改善し、労働市場が徐々に冷え込む状況では、経済の健全なバランスを維持するために政策の抑制度合いを緩和することが、ある時点で適切となるだろう」、「3カ月と6カ月先のインフレ率は23年下期(7−12月)に見られたような『良好な数字』と類似したものになると予想している」 --------
6/25 ボウマン・FRB理事 「経済見通しを巡るリスクと不確実性を踏まえ、政策スタンスの将来的な変更を検討するアプローチにおいて、私は慎重姿勢を保つつもりだ」 --------
6/24 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場の調整は今のところ緩やかで、失業率は小幅にしか上昇していない。しかし、このような緩やかな展開になる可能性が低下する時点に近づいている」 --------
6/24 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレに関してここ1カ月に見られたようなデータがさらに数カ月続き、実体経済の他の部分の状況も鈍化した場合、『これまでのような景気抑制的な政策を維持すべきなのだろうか』という疑問を持ち始めざるを得なくなる」、「インフレ率が当局目標の2%に向けて低下しているという確信をもう少し強められると期待している」 --------
6/20 米財務省 「財務省としては、自由に取引される大規模な為替市場で介入は適切な事前協議を伴う形で極めて例外的な状況に限定されるべきだ」、「日本は為替運営の点で透明性がある」 日本を為替「監視リスト」に追加。ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (米金融当局はインフレ率を目標の2%へと引き下げるとしつつも)、「それには1、2年かかる可能性が高い」 ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「今回のインフレの数字は非常に心強いもので、こうした数字がさらに得られるなら、利下げは可能だというのが私の見解だ」 --------
6/18 植田・日銀総裁 (7月会合までに入手できる経済・物価・金融情勢い関するデータや情報次第としながらも)、「場合によっては政策金利が引き上げられるということも十分あり得るというふうに考えている」、「基調的な物価上昇率がしっかりと高まっていくかどうか、もう少し引き続き点検していく必要があると考えた」 やや円を買い戻す動きもあり、ドル円は小幅に下落。
6/17 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現時点における自身の予想に基づけば、年内1回の利下げが適切だ。ただ、利下げの前にさらに数ケ月のインフレ改善を確認したい」 --------
6/14 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対するリスクはまだ上向きだと考えている。労働市場へのリスクは両方向だと思う」、(今年1回の利下げを示唆した最新のFOMC予想について)、「自分の経済予測とかなり近い」 --------
6/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレ率が2%に戻りつつあることを確信するには、もっと多くの証拠が必要だ。われわれは現在、何らかの意思を決定する前に時間をかけてインフレ統計、および経済や労働市場に関するデータをさらに見られる非常に良い位置にいる」、「年内に1回の利下げがあるとすれば、年末に向けて行われる公算が大きい」 --------
6/12 パウエル・FRB議長 「最近のインフレ指標は今年の早い時期より良好な内容で、われわれのインフレ目標に向けて緩慢なる一段の進展が見られている」、「インフレ率が持続的に2%に向っているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」、「今回の統計が確信を強める上では前進と言えるが、現時点での利下げを正当化するほどではない」 ドル円は155円台から156円台に反発。
6/12 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある。委員会は目標実現のため、FF金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
6/10 ラガルド・ECB総裁 「われわれは適切な決定を下したが、それは金利が直線的な低下軌道にあることを意味するものではない」、「われわれは新たな見通しが立った時のみならず、あらゆる段階で再評価を行う」、「ディスインフレは十分に進行しており、向こう1年半にわたり継続すると考えている。そのため金利を引き下げる可能性がある。だが、まだ勝利宣言はしない」 --------
6/6 ホルツマン・オーストリア中銀総裁 「年内3回のECB利下げという当初の想定が現実になり、一方でFRBが相応の動きをしなかった場合、為替レートやインフレ率に影響を与えることは間違いない」、「さまざまな意見がかわされたが、政策委員会の見解は他に方法はないというものだった」 --------
6/6 ラガルド・ECB総裁 「今日から利上げを巻き戻す段階に移行するのかと聞かれれば、そうだとは言わない。その可能性は極めて高いが、データ次第だろう。非常に不確実なのは、われわれが進むスピードとそれに要する時間だ」、「委員会は引き続き、会合ごとのアプローチを取る。特定の金利の道筋をあらかじめ約束はしない。利下げ決定は1人を除く全員が同意した」 タカ派的な内容だったためユーロドルは1.09台まで買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和