今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円158円台でもみ合い」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は6月の小売売上高発表後に158円85銭まで上昇したが、その後はじり安の展開。158円台前半まで売られる。
  • ユーロドルは朝方1.09台に乗せたが、その後は軟調な展開となり1.0872まで下落。
  • 株式市場では3指数が揃って続伸。とりわけダウは742ドル上昇し連日で最高値を更新。
  • 債券は買われ、長期金利は4.15%台に低下。
  • 金は大幅に続伸し、原油は続落。
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6月小売売上高 → 0.0%
6月輸入物価指数 → 0.0%
6月輸出物価指数 → −0.5%
7月NAHB住宅市場指数 → 42
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ドル/円 158.26 〜 158.85
ユーロ/ドル 1.0872 〜 1.0905
ユーロ/円 172.73 〜 172.80
NYダウ +742.76 → 40,954.48ドル
GOLD +38.90 → 2,467.80ドル
WTI −1.15 → 80.76ドル
米10年国債 −0.062 → 4.222%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏6月消費者物価指数(改定値)
  • 英 英6月消費者物価指数
  • 米 6月住宅着工件数
  • 米 6月建設許可件数
  • 米 6月鉱工業生産
  • 米 6月設備稼働率
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
  • 米 企業決算 → J&J、アルコア、ASMLホールディングス

本日のコメント

政府・日銀は11、12日に2日連続で市場介入を行った可能性が高いことが判明しました。為替介入があれば反映される日銀当座預金残高見通しと、事前の市場推計との開きで推測されますが、推計によると12日には、約2兆円規模の「円買い・ドル売り」を行った模様です。前日には3兆円規模の円買いを行ったと思われ、これで都合5兆円相当のドル売りを実施したようですがその間のドル円は、11日には米CPIの下振れもあり4円程円高に振れましたが、12日は2円程水準を下げた動きになっています。規模は小さいながらも小刻みに「円買い・ドル売り」を実施する「戦法」に変えてきた政府・日銀の動きですが、それでも足元では158円台で推移しています。この動きを繰り返すといずれ介入効果が2円から1円、そして効果が無くなる可能性があります。

米経済から景気減速の足音が聞こえ、米長期金利も低下傾向を示していながらもドル高の流れは大きく修正されていません。「ドルが下がったら買いたい」といった市場参加者のセンチメントが変わるには、FRBの利下げ回数が確実に年内2回と見通せ、場合によっては3回も有り得るといった見方が出て来る必要があるのかもしれません。パウエル議長は15日、ワシントンのエコノミック・クラブでのインタビューで、「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」と述べていました。また議長は、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」と発言しています。これまで政策金利を大幅に引き上げ、高水準を維持していたにもかかわらず依然として好調だった労働市場に、ようやく減速の兆しが出て来たことが、パウエル議長の自信を深めることになったようです。

凶弾に倒れる危険のあったトランプ氏でしたが、共和党はワシントン州ミルウォーキーで開催した全国大会で、トランプ氏を党の大統領候補に正式決定しました。また、そのトランプ氏は副大統領候補にオハイオ州選出のバンス上院議員を起用することを発表しています。トランプ氏は「熟考に熟考を重ねた結果、バンス氏が適任だと判断した」と投稿しています。これで共和党では正式に大統領、副大統領候補が決まりましたが、民主党の方は8月18日に党大会を開催し正式に候補者が選出される予定です。それまでにバイデン氏で行くのか、あるいはハリス氏で行くのか、バイデン氏自身が候補者を辞退する意向がないだけに、誰にするのか難しい状況です。バイデン氏はトランプ氏が副大統領にバンス氏を起用したことについて、「バンス氏は、幾つもの問題でトランプ氏のクローンだ。何の違いも感じられない」と述べています。またトランプ氏はブルームバーグとのインタビューで、2026年5月まで任期のあるパウエル議長について、「彼に任期を全うしてもらうつもりだ。彼が正しい政策運営を行っていると考えられる場合は特にそうだ」と語っています。

ドル円は介入の効果もあるせいか、徐々に上値を重くはしていますが、筆者が注目している日足チャートの「レジスタンスライン」では、15日に157円17銭前後まで下げたことで、一時このラインを下回る場面もありましたが、現在はそのラインの上で下抜けするのかどうかの攻防を続けている状況です。このラインの下には一目均衡表の「雲」もあるため、155円を明確に割り込めば、短期的な調整が見られると考えます。ここから再び160円台に戻すのか、あるいは155円を割り込んでくるのか、現在は非常に重要な局面にいると言えます。

本日のドル円は157円30銭〜158円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・総裁SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
6/26 神田・財務官 「行き過ぎた動きに対して必要な対応を取る」と述べ、「特定の相場水準を対象には考えておらず、あくまで投機などによる急激な変動あるいは無秩序な動きに対して対応する方針に変わりはない」、「最近の円安の進行には深刻な懸念を有している」、「高い緊張感を持って市場の動向を注視している」 ドル円が160円台半ばまで上昇した際に。発言を受けやや円が買い戻されたが、直ぐに円売りが再燃。
6/25 クック・FRB理事 「インフレが大幅に改善し、労働市場が徐々に冷え込む状況では、経済の健全なバランスを維持するために政策の抑制度合いを緩和することが、ある時点で適切となるだろう」、「3カ月と6カ月先のインフレ率は23年下期(7−12月)に見られたような『良好な数字』と類似したものになると予想している」 --------
6/25 ボウマン・FRB理事 「経済見通しを巡るリスクと不確実性を踏まえ、政策スタンスの将来的な変更を検討するアプローチにおいて、私は慎重姿勢を保つつもりだ」 --------
6/24 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場の調整は今のところ緩やかで、失業率は小幅にしか上昇していない。しかし、このような緩やかな展開になる可能性が低下する時点に近づいている」 --------
6/24 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレに関してここ1カ月に見られたようなデータがさらに数カ月続き、実体経済の他の部分の状況も鈍化した場合、『これまでのような景気抑制的な政策を維持すべきなのだろうか』という疑問を持ち始めざるを得なくなる」、「インフレ率が当局目標の2%に向けて低下しているという確信をもう少し強められると期待している」 --------
6/20 米財務省 「財務省としては、自由に取引される大規模な為替市場で介入は適切な事前協議を伴う形で極めて例外的な状況に限定されるべきだ」、「日本は為替運営の点で透明性がある」 日本を為替「監視リスト」に追加。ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (米金融当局はインフレ率を目標の2%へと引き下げるとしつつも)、「それには1、2年かかる可能性が高い」 ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「今回のインフレの数字は非常に心強いもので、こうした数字がさらに得られるなら、利下げは可能だというのが私の見解だ」 --------
6/18 植田・日銀総裁 (7月会合までに入手できる経済・物価・金融情勢い関するデータや情報次第としながらも)、「場合によっては政策金利が引き上げられるということも十分あり得るというふうに考えている」、「基調的な物価上昇率がしっかりと高まっていくかどうか、もう少し引き続き点検していく必要があると考えた」 やや円を買い戻す動きもあり、ドル円は小幅に下落。
6/17 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現時点における自身の予想に基づけば、年内1回の利下げが適切だ。ただ、利下げの前にさらに数ケ月のインフレ改善を確認したい」 --------
6/14 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対するリスクはまだ上向きだと考えている。労働市場へのリスクは両方向だと思う」、(今年1回の利下げを示唆した最新のFOMC予想について)、「自分の経済予測とかなり近い」 --------
6/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレ率が2%に戻りつつあることを確信するには、もっと多くの証拠が必要だ。われわれは現在、何らかの意思を決定する前に時間をかけてインフレ統計、および経済や労働市場に関するデータをさらに見られる非常に良い位置にいる」、「年内に1回の利下げがあるとすれば、年末に向けて行われる公算が大きい」 --------
6/12 パウエル・FRB議長 「最近のインフレ指標は今年の早い時期より良好な内容で、われわれのインフレ目標に向けて緩慢なる一段の進展が見られている」、「インフレ率が持続的に2%に向っているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」、「今回の統計が確信を強める上では前進と言えるが、現時点での利下げを正当化するほどではない」 ドル円は155円台から156円台に反発。
6/12 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある。委員会は目標実現のため、FF金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
6/10 ラガルド・ECB総裁 「われわれは適切な決定を下したが、それは金利が直線的な低下軌道にあることを意味するものではない」、「われわれは新たな見通しが立った時のみならず、あらゆる段階で再評価を行う」、「ディスインフレは十分に進行しており、向こう1年半にわたり継続すると考えている。そのため金利を引き下げる可能性がある。だが、まだ勝利宣言はしない」 --------
6/6 ホルツマン・オーストリア中銀総裁 「年内3回のECB利下げという当初の想定が現実になり、一方でFRBが相応の動きをしなかった場合、為替レートやインフレ率に影響を与えることは間違いない」、「さまざまな意見がかわされたが、政策委員会の見解は他に方法はないというものだった」 --------
6/6 ラガルド・ECB総裁 「今日から利上げを巻き戻す段階に移行するのかと聞かれれば、そうだとは言わない。その可能性は極めて高いが、データ次第だろう。非常に不確実なのは、われわれが進むスピードとそれに要する時間だ」、「委員会は引き続き、会合ごとのアプローチを取る。特定の金利の道筋をあらかじめ約束はしない。利下げ決定は1人を除く全員が同意した」 タカ派的な内容だったためユーロドルは1.09台まで買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和