今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円反発し157円台半ばへ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京市場の朝方、ドル円は前日のNYでのドル急落を受け155円38銭まで売られたがその後反発。NYでは米金利が上昇したこともあり157円40銭までドルが買われる。
  • ユーロドルは売られ1.09台をやや下回る。ECBは予想通り政策金利を据え置く。
  • 株式市場では3指数が大幅安。ここ5日間で1400ドル程上昇したダウは500ドルを超える下げに。
  • 債券は反落。長期金利は4.20%台に上昇。
  • 金は小幅に続落。原油も小幅安。
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新規失業保険申請件数 → 24.3万件
7月フィラデルフィア連銀景況指数 → 13.9
6月景気先行指標総合指数 → −0.2%
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ドル/円 156.20 〜 157.40
ユーロ/ドル 1.0894 〜 1.0937
ユーロ/円 170.64 〜 171.57
NYダウ −533.06 → 40,665.02ドル
GOLD −3.50 → 2,456.40ドル
WTI −0.03 → 82.82ドル
米10年国債 +0.045 → 4.202%

本日の注目イベント

  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、パネル討論会に参加
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、会議で開会の辞

本日のコメント

ドル円は荒っぽい動きを見せています。昨日この欄でも説明したように、トランプ氏の発言などにより前日のNYでドルが急落したことを受け、昨日の東京市場では朝方からドル売りが強まり、一時155円38銭前後までドル安が進みました。この結果、それまで見事にドルの下落を抑制していた日足の「サポートライン」を割り込んだため、その下方に位置する一目均衡表の「雲の下限」を下抜けするかどかが次の焦点でした。瞬間風速では抜ける局面もありましたが、結局「明確」には抜け切れずに反発し、NYでは157円40銭までドルが買われ、この日の底値から2円の上昇でした。「ドルが下がったら買いたい」という、市場のセンチメントは思った以上に力強いということを物語った動きかと思いますが、それでもドル円を取り巻く環境は、FRBが利下げに向けた行動を取り、日銀が利上げのタイミングを模索している状況は変わっていません。今後米インフレ指標が大きく変わらない限り、ドルの上値は重くなっていると考えます。

11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏への撤退圧力がさらに増し、包囲網も強まっています。バイデン氏は再び新型コロナウイルスに感染しましたが、同氏のアドバイザーは「元気だ」と述べていました。しかしついに、同志バラク・オバマ氏もバイデン氏の撤退を支持し始めました。ワシントン・ポスト紙が、オバマ元大統領はここ数日、バイデン大統領の選挙勝利への道は大きく遠のいたと周辺に語っていると伝えています。同紙によると、バイデン氏が候補者として自身の能力を真剣に考慮する必要があるとオバマ氏は考えており、バイデン氏の選挙戦の将来を巡る協議について内々に関与しているとしています。オバマ氏は自身の政権時に、バイデン氏を副大統領に起用した経緯もあり、仮にバイデン氏が撤退を決断するとすれば、その説得の役割を担えるのはオバマ氏以外にはいないように思えます。また、ペロシ前下院議長も、「選挙戦撤退で、バイデン氏説得は間近いと考える」と同紙に答えています。

一方、トランプ氏が再選した際の副大統領に指名されたバンス氏の考え方や経歴も徐々に明らかにされています。バンス氏はかつて、「私は中国が好きではない。中国が米国から多くの雇用を奪っているのが気に入らない」と述べたことが紹介されています。またバンス氏は、「米軍は全て放棄し、中国に集中すべきだ」と主張し、中国からの輸入品に対する広範な関税を呼び掛け、米金融システムへの中国のアクセスを制限する法案を提出したこともあります。トランプ氏も中国に対しては厳しい対応を見せてきましたが、バンス氏はそれを上回る強硬姿勢を見せており、トランプ氏が再選を果たした場合「米中貿易戦争」の激化は避けられないと思われます。ただ、副大統領に就任してもそのままトランプ氏との良好な関係が続くかどうかは不透明です。あのペンス元副大統領でさえ、共和党の大統領候補に名乗りを上げた時には厳しくトランプ氏を批判していました。11月の大統領選は「トランプVSハリス」になる可能性が高いと予想しています。

結局、現時点ではドル高の流れは変わっていないことになりますが、今回の下落が7月3日に記録した161円95銭を頂点に始まったとすれば、今回の下落幅の「38.2%」戻しは、157円89銭になります。とうことで、本日のドル円は156円〜157円90銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・総裁SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
6/26 神田・財務官 「行き過ぎた動きに対して必要な対応を取る」と述べ、「特定の相場水準を対象には考えておらず、あくまで投機などによる急激な変動あるいは無秩序な動きに対して対応する方針に変わりはない」、「最近の円安の進行には深刻な懸念を有している」、「高い緊張感を持って市場の動向を注視している」 ドル円が160円台半ばまで上昇した際に。発言を受けやや円が買い戻されたが、直ぐに円売りが再燃。
6/25 クック・FRB理事 「インフレが大幅に改善し、労働市場が徐々に冷え込む状況では、経済の健全なバランスを維持するために政策の抑制度合いを緩和することが、ある時点で適切となるだろう」、「3カ月と6カ月先のインフレ率は23年下期(7−12月)に見られたような『良好な数字』と類似したものになると予想している」 --------
6/25 ボウマン・FRB理事 「経済見通しを巡るリスクと不確実性を踏まえ、政策スタンスの将来的な変更を検討するアプローチにおいて、私は慎重姿勢を保つつもりだ」 --------
6/24 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場の調整は今のところ緩やかで、失業率は小幅にしか上昇していない。しかし、このような緩やかな展開になる可能性が低下する時点に近づいている」 --------
6/24 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレに関してここ1カ月に見られたようなデータがさらに数カ月続き、実体経済の他の部分の状況も鈍化した場合、『これまでのような景気抑制的な政策を維持すべきなのだろうか』という疑問を持ち始めざるを得なくなる」、「インフレ率が当局目標の2%に向けて低下しているという確信をもう少し強められると期待している」 --------
6/20 米財務省 「財務省としては、自由に取引される大規模な為替市場で介入は適切な事前協議を伴う形で極めて例外的な状況に限定されるべきだ」、「日本は為替運営の点で透明性がある」 日本を為替「監視リスト」に追加。ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (米金融当局はインフレ率を目標の2%へと引き下げるとしつつも)、「それには1、2年かかる可能性が高い」 ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「今回のインフレの数字は非常に心強いもので、こうした数字がさらに得られるなら、利下げは可能だというのが私の見解だ」 --------
6/18 植田・日銀総裁 (7月会合までに入手できる経済・物価・金融情勢い関するデータや情報次第としながらも)、「場合によっては政策金利が引き上げられるということも十分あり得るというふうに考えている」、「基調的な物価上昇率がしっかりと高まっていくかどうか、もう少し引き続き点検していく必要があると考えた」 やや円を買い戻す動きもあり、ドル円は小幅に下落。
6/17 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現時点における自身の予想に基づけば、年内1回の利下げが適切だ。ただ、利下げの前にさらに数ケ月のインフレ改善を確認したい」 --------
6/14 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対するリスクはまだ上向きだと考えている。労働市場へのリスクは両方向だと思う」、(今年1回の利下げを示唆した最新のFOMC予想について)、「自分の経済予測とかなり近い」 --------
6/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレ率が2%に戻りつつあることを確信するには、もっと多くの証拠が必要だ。われわれは現在、何らかの意思を決定する前に時間をかけてインフレ統計、および経済や労働市場に関するデータをさらに見られる非常に良い位置にいる」、「年内に1回の利下げがあるとすれば、年末に向けて行われる公算が大きい」 --------
6/12 パウエル・FRB議長 「最近のインフレ指標は今年の早い時期より良好な内容で、われわれのインフレ目標に向けて緩慢なる一段の進展が見られている」、「インフレ率が持続的に2%に向っているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」、「今回の統計が確信を強める上では前進と言えるが、現時点での利下げを正当化するほどではない」 ドル円は155円台から156円台に反発。
6/12 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある。委員会は目標実現のため、FF金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
6/10 ラガルド・ECB総裁 「われわれは適切な決定を下したが、それは金利が直線的な低下軌道にあることを意味するものではない」、「われわれは新たな見通しが立った時のみならず、あらゆる段階で再評価を行う」、「ディスインフレは十分に進行しており、向こう1年半にわたり継続すると考えている。そのため金利を引き下げる可能性がある。だが、まだ勝利宣言はしない」 --------
6/6 ホルツマン・オーストリア中銀総裁 「年内3回のECB利下げという当初の想定が現実になり、一方でFRBが相応の動きをしなかった場合、為替レートやインフレ率に影響を与えることは間違いない」、「さまざまな意見がかわされたが、政策委員会の見解は他に方法はないというものだった」 --------
6/6 ラガルド・ECB総裁 「今日から利上げを巻き戻す段階に移行するのかと聞かれれば、そうだとは言わない。その可能性は極めて高いが、データ次第だろう。非常に不確実なのは、われわれが進むスピードとそれに要する時間だ」、「委員会は引き続き、会合ごとのアプローチを取る。特定の金利の道筋をあらかじめ約束はしない。利下げ決定は1人を除く全員が同意した」 タカ派的な内容だったためユーロドルは1.09台まで買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和