今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドルと株が急落。ドル円一時141円台半ばに」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • つるべ落としのドル円は、東京時間午後に一時141円68銭辺りまで売られる。その後も神経質な動きを見せながらもジリ高となり、NYでは株価の大幅下落にもかかわらず144円89銭まで上昇。
  • ユーロドルは続伸。ドルが売られたことでユーロドルは今年1月2日以来となる1.1009まで上昇。
  • 株式市場は3指数が揃って大幅続落。S&P500は160ポイントを超える下げとなる5186ポイントと、今年3月の水準に戻る。
  • 債券は続伸。長期金利は3.78%台に低下。
  • 金と原油は続落。
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7月ISM非製造業景況指数 → 51.4
7月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 55.0
7月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 54.3
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ドル/円 141.84 〜 144.89
ユーロ/ドル 1.0948 〜 1.1009
ユーロ/円 155.69 〜 158.77
NYダウ −1033.90 → 38,703.27ドル
GOLD −25.40 → 2,444.40ドル
WTI −0.58 → 72.94ドル
米10年国債 −0.020 → 3.788%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA、キャッシュターゲット
  • 独 独6月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏6月小売売上高
  • 英 7月小売売上高
  • 米 6月貿易収支
  • 加 カナダ6月貿易収支

本日のコメント

「植田ショック」・・・・。日銀が予想外に0.25%の利上げを決めたことで、昨日の東京時間ではドル円と株価が連動するように下げ、市場は「恐怖感」さえ漂うような状況でした。ドル円は一時141円68銭辺りまで売られ、日経平均株価に至っては1987年10月の「ブラックマンデー」を超える4451円安と、過去最大の下げ幅を記録し、ほぼパニック状態でした。それにしても、米国の景気後退懸念が台頭し、米国株が大きく下げたことがきっかけでしたが、今や日本株の方が下げがきつく、「対岸ではボヤだったものが、こちらでは大火事」といった極めて軟弱な日本株の動きでした。通常為替は、NYで米経済指標の発表を受け大きな値動きが起き、相場の方向性も決められることが多いわけですが、ここ数日は東京市場でもドルの新値を記録する動きが見られます。これは「日経先物を売ると同時にドル円を売る」といったオペレーションが活発だということだと思います。「市場では10年に一度ほど、ちょっとした変化から『懸念』が『不安』に変わり、さらに『恐怖』にまで加速し、その先には『絶望』というゴールが待っている」・・・そんな言葉を思い出しました。

NYでは「7月のISM非製造業景況指数」が「51.4」と、市場予想を上回り多少安心感が広がり141円台後半で取引が始まったドル円は144円台後半まで上昇しました。株価が大きく下げた割にはドルを買い戻す動きが優勢でした。ただ、この先FRBが大幅な利下げを決断しなければならない状況に追いこまれるとの見方も出ており、ドル円の上値が重いことは当面変わらないと見られます。ペンシルベニア大学のシーゲル教授はCNBCとのインタビューで、「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」と、かなり過激な発言を行っています。またFOMCメンバーのサンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」と、それでもモデレートな言い回しをしています。つい20日程前までは、景気減速を示唆する指標が出て来る中でも、「われわれにはまだやるべき仕事が残っている」、「ディスインフレが進んでいるデータがさらに必要だ」といった、利下げを正当化する根拠を求めていましたが、足許では長期にわたっている「景気抑制策」による米景気の「ハードランディング」を予想する声も出ており、状況は一変しています。このため米長期金利も急ピッチで低下しています。昨日のNY債券市場では10年債利回りが一時3.7%台まで低下し、2年債利回りも3.9%まで低下し、今後大幅な利下げがあることを織り込みつつあります。ブルームバーグは、「トレーダーは現在、1週間以内に0.25ポイントの緊急利下げが実施される可能性が60%程度あるとみている」と報じています。

ドル円1カ月ものボラティリティーは、足元ではおよそ7カ月ぶりに「15.6%」程まで上昇しています。これは今後もさらにドル円が上下すると、多くの市場関係者が見ていること表しています。

本日のドル円は144円〜147円程度でしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和