「ドル円146円台まで反発するも上値は重い」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は急反発し、アジア市場では146円台に乗せる場面もあったが、NYでは売られ144円05銭まで下落。依然として株価の動きを睨みながらの展開が続く。
- ユーロドルは反落。前日1.10台を回復したが、この日は1.0905まで売られる。
- 株式市場は3指数が揃って反発。日本株が過去最大の上げ幅を記録したことでNY株式市場でも買い戻しが入り、ダウは294ドル上昇。
- 債券は大きく反落。長期金利は3.89%台に上昇。2年債利回りが一時3.65%まで急低下し、約2年ぶりに逆イールドが解消される。
- 金は3日続落し、原油は小幅高。
6月貿易収支 → −73.1b
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ドル/円 | 144.05 〜 145.41 |
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ユーロ/ドル | 1.0905 〜 1.0935 |
ユーロ/円 | 157.28 〜 158.91 |
NYダウ | +294.39 → 38,997.66ドル |
GOLD | −12.50 → 2,431.60ドル |
WTI | +0.26 → 73.20ドル |
米10年国債 | +0.104 → 3.892% |
本日の注目イベント
- 日 6月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 6月景気一致指数(CI)(速報値)
- 日 内田日銀副総裁、金融経済懇談会に出席(函館)
- 中 中国7月貿易収支
- 中 中国7月外貨準備高
- 独 独6月貿易収支
- 独 独6月鉱工業生産
- 米 6月消費者信用残高
本日のコメント
前日141円68銭近辺まで売られたドル円は5日のNYで144円台まで値を戻し、昨日の東京時間朝方には146円台前半まで反発する動きを見せました。これも結局は、株価の動きに連動しており、前日「過去最大の下げ幅」を記録した日経平均株価が、売られ過ぎからか、今度は一転して「過去最大の上げ幅」を記録したことによるところが大きいとい思われます。ドル円も株も売られ過ぎたことから当然の戻しかとは思いますが、それでも「過去最大」といった形容詞が付く動きは異常としか言えません。今朝の経済紙にありましたが、今年に入って「NISA」の拡充などもあり、個人投資家が「フリーランチ」にどっぷり浸っていたことが一因との見方もあります。ドル円の動きは、まさに株価の動きに左右されています。
昨日のNY債券市場では、先週後半から一貫して低下していた米長期金利が急上昇し、3.9%前後まで上昇しましたが、ドル円はアジア市場で付けた146円台には届かず、逆に144円ギリギリまで売られる展開でした。このままであれば、今日の日経平均株価も再び1000円程下げる可能性が高く、株価の大幅下落にドル円も再び下値を試すかもしれません。もっとも、ドル円は米2年債との関係で言えば「相関」と言えるかもしれません。政策金利の影響を受け易いとされる2年債は昨日大きく買われ、金利は一時3.65%まで急低下しました。FRBが臨時会合で緊急利下げを行うといった噂や、9月会合から3会合連続で利下げすべきだといった見方が台頭したことで、2年債が急騰しています。この結果、10年債との金利差が「純イールド」に戻り、2022年7月以来の「逆イールド解消」となってきました。「逆イールド」の発生は、景気がリセッション入りする「兆候」と見られていましたが、実際には米景気はリセッション入りすることなくここまで成長してきましたが、ここからは景気の底割れを避けることが金融政策判断の柱になってきます。数カ月前とは状況が一変しています。今後予想されるFOMCメンバーの発言も、これまでとは景気に対するスタンスが大きく異なってくることになります。
ハリス副大統領は11月の大統領選をともに戦う副大統領候補に、ミネソタ州のワルツ知事を正式に指名しました。ハリス氏は同氏を選んだ理由として、「知事としての経験を重視した」と述べていますが、農村部や白人票を得やすいと見られています。「ワルツ氏は60歳で、全米では知名度が低いものの、地元ミネソタ州では人気が高く、7月の世論調査によれば、同氏の仕事ぶりを評価している民主党有権者は91%と、全米3番目の高さとなっている」(ブルームバーグ)ワルツ氏は、「ハリス副大統領は、何が可能かを示す政治を見せてくれている。登校初日のような気持ちだ」と、元教師らしいコメントをしています。これで正式に、民主、共和両党の正副大統領候補が決まりました。ハリス氏とトランプ氏への支持率は拮抗しているようで、これから秋にかけて今度は米大統領選が大きな材料になる可能性があります。
本日のドル円は143円50銭〜146円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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8/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 | -------- |
8/5 | シーゲル・ペンシルベニア大学教授 | 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 | -------- |
8/2 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 | -------- |
7/31 | パウエル・FRB議長 | 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 | 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。 |
7/31 | 植田・日銀総裁 | 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 | -------- |
7/25 | イエレン・財務長官 | 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) | -------- |
7/21 | バイデン大統領 | 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 | -------- |
7/17 | トランプ・前大統領 | 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 | ドル安が加速。157円台から156円台前半に。 |
7/17 | ウォラー・FRB理事 | 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 | -------- |
7/17 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 | -------- |
7/17 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 | -------- |
7/15 | パウエル・FRB議長 | 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 | ややドルが売られ、債券と株は買われる。 |
7/11 | デーリー・SF連銀総裁 | 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 | -------- |
7/11 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: | -------- |
7/11 | パウエル・FRB議長 | 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 | 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。 |
7/2 | パウエル・FRB議長 | 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書