今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円日銀高官発言に148円に迫る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 内田日銀副総裁の発言で147円90銭前後まで急反発したドル円は、その後軟調に推移。NYでは147円68銭まで買われたが、株価の下落に146円台半ばまで押し戻される。
  • ユーロドルは1.09台前半で小動き。
  • 株式市場は朝方に大きく買われたが、国債入札が不調に終わり、金利が上昇したことが嫌気され3指数は大きく下落。
  • 債券は売られ、長期金利は3.94%台に上昇。
  • 金は小幅に反発。原油は再び地政学的リスクが意識され2ドルを超える上昇。
******************
6月消費者信用残高 → 8.934b
******************
ドル/円 146.65 〜 147.68
ユーロ/ドル 1.0913 〜 1.0936
ユーロ/円 160.19 〜 161.44
NYダウ −234.21 → 38,763.45ドル
GOLD +0.80 → 2,432.40ドル
WTI +2.03 → 75.23ドル
米10年国債 +0.051 → 3.943%

本日の注目イベント

  • 日 6月貿易収支
  • 日 6月国際収支・経常収支
  • 日 7月景気ウオッチャー調査
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、ウェビナーに出席

本日のコメント

ドル円は急速に反発し日経平均株価も急上昇しました。金融市場はFRBがどこまで利下げを行うのかといった点と、日銀の利上げスタンスが不透明なことなどが相まって視界が晴れない中、本来ならば「サマー・バケーション」で市場が閑散となるはずなのですが、連日乱高下を繰り返していることでおちおち休んでもいられない状況が続いています。

昨日は函館市で講演を行った内田日銀副総裁の発言で、ドル円は午前10時半頃、144円台後半から一気に上昇し一時は147円48銭辺りまで上昇しました。同時に、前日比マイナス800円安と大きく売られていた日経平均株価も買われ、午前中には1100円程上昇する場面もありました。ドル円はその後147円90銭前後まで上昇しています。内田氏は講演で、「市場が不安定な状況で利上げすることはない」と述べ、円高、株安が大きく進み、景気動向にも影響を与える足元の状況を配慮した発言を行いました。ある程度現在の不安定な市場を意識した発言をするのではないかとは思っていましたが、発言後の市場の反応の大きさにはやや驚きでした。先週、日銀決定会合後の会見で植田総裁は今後の追加利上げにも言及する「タカ派」発言を行ったことで、急激な円高と株価の暴落を招きましたが、内田氏の「ハト派」発言は、市場の混乱を治めるという目的を持ってなされたと思われます。ただ、発言は今回のように「不安定な状況」では「利上げはしない」ということで、「今後利上げはない」ということではありません。

昨日、「日経QUICK」から毎月恒例のアンケートが来ましたが、その中に「0.25%の利上げをおこなった日銀が、年内あと何回利上げを実施すると思うか」という質問がありました。選択肢は、ゼロ回から3回までの「4択」でしたが筆者は「ゼロ回」と回答しました。本来ならば1回としたいところでしたが、敢えて「ゼロ回」にしたのは、わずか25bpの利上げでこれほど市場が混乱することが判明した中で、9月には自民党総裁選もあり、景気後退は避けたいところ。さらに利上げを決定した日銀に対して国会では植田総裁を呼び、その背景の説明を求めています。今後の追加利上げは慎重にならざるを得ません。そして利上げの最大の原動力となった「円安」は大きく水準を変えており、利上げへの大合唱は今後起こる可能性は低いということ。ここは敢えて、利上げがあるとすれば25年以降という見方に「1票」を投じました。

11月の米大統領選の様相が一変しました。「楽勝気味」だったトランプ氏が最も慌てていることとは思いますが、民主党がハリス副大統領を候補者に選んだことで「接戦」になっています。ハリス氏が副大統領候補に選んだワルツ・ミネソタ州知事も、その人柄が好感されているようです。直近の開示ではワルツ氏の純資産が100万ドル(約1億4700万円)に届いておらず、主要政党正副大統領候補4人の中で最も少ない可能性が高いようです。共和党トランプ氏は57億ドル、バンス氏は上院での開示で430万ドル−1070万ドル、民主党のハリス氏は銀行口座に55−110万ドル預けており、退職積立金が77万5000−180万ドルとしています。(ブルームバーグ)今後は政策に焦点があたっていくと思いますが、どちらが勝利しても米国民の分断が元に戻るには相当な時間がかかりそうです。

ドル円はすでにNYのクロージングレベルから1円ほど円高方向に振れています。日経平均株価が再び1000円安に向けて下げるとの予想が働いているのかもしれません。本日のドル円は144円50銭〜147円50銭程度を予想します。

==========

明日9日(金)の「今日のアナリストレポート」は都合によりお休みとさせて頂きます。ご愛読者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和