「ドル円1週間ぶりに148円台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は欧州市場での堅調な流れを引き継ぎNYでは朝方148円台を回復し、148円23銭まで上昇。ドル急落後、1週間ぶりの高値を付つける。
- ユーロドルは1.09台前半で推移。
- 株式市場ではダウが3日ぶりに下げ、ナスダックは35ポイント上昇するなどまちまちの動き。
- 債券は買われ、長期金利は3.90%台に低下
- 金は続伸し2500ドル台を回復。原油は中東の地政学的リスクの高まりから3ドルを超える上昇。
7月財政収支 → −243.7b
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ドル/円 | 147.08 〜 148.23 |
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ユーロ/ドル | 1.0916 〜 1.0939 |
ユーロ/円 | 160.73 〜 161.95 |
NYダウ | −140.53 → 39,357.01ドル |
GOLD | +30.60 → 2,504.00ドル |
WTI | +3.22 → 80.06ドル |
米10年国債 | −0.036 → 3.904% |
本日の注目イベント
- 豪 豪8月ウエストパック消費者信頼感指数
- 豪 豪7月NAB企業景況感指数
- 豪 豪第2四半期賃金指数
- 独 独8月ZEW景況感指数
- 英 英7月失業率
- 英 英ILO失業率(4−6月)
- 米 7月生産者物価指数
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
本日のコメント
ドル円は昨日のNYで1週間ぶりに148円台前半まで戻しました。これで141円68銭の底値からは「6円55銭」戻したことになります。7月3日の161円95銭の高値から141円台まで下げた値幅では、「38.2%」戻しが「149円42銭」と計算できることから、目先の戻りの目安はこの辺りになりそうです。今夜発表される米7月の生産者物価指数(PPI)の結果も重要ですが、本命は明日の消費者物価指数(CPI)です。考えて見れば、2日に発表された7月の雇用統計を境に市場のセンチメントが大きく変わりました。それまではインフレ再燃懸念がまだ残り、FOMCメンバーのコメントにも慎重なものが多かったのですが、雇用統計で労働市場の伸びに急ブレイキがかかると、25bpの利下げが確実視されたていた9月会合では50bpの利下げが必要との見方が台頭。インフレどころか、景気減速懸念が一気に浮上してきました。その結果、11月会合でも50bpの利上げと、さらに12月にも25bp下げ、都合125bpの利下げを織り込む動きになりました。この流れが急激な円の買い戻しを促したことになります。もっとも、常に先走る市場のこと、年内に125bpの利下げ観測は、今後の指標次第では「オーバーシュート」だったと、回顧される可能性は十分あります。因みに、投機筋が円売りポジションを積み上げていたIMMの通貨先物市場での建玉では、その動きが歴然としています。7月2日時点では、18万4000枚あったネット円売りポジションはほぼ解消されています。CFTCの発表では7月30日には1万1354枚と急激に減少しており、これは2021年3月16日以来となる低水準の円売り枚数になります。今後これが、ネットで「円の買い持ち」に変わってくるのかどうか、注目していきたいと思います。
バイデン大統領は11月の大統領選からの撤退を決断して以来、初めてとなる公の場でのインタビューに応じました。11日放送のCBSニュース番組「サンデー・モーニング」でバイデン氏はペロシ元下院議長の名前を挙げ、「選挙戦からの撤退を求める党内圧力があり、自身は撤退に消極的だった」ことを示唆し、自身が2期目を目指せば、「本当に足手まといになっただろう」と、胸の内を明かしていました。一方ペロシ氏は他の番組で、「われわれが勝利できるよう、より良いキャンペーンを進める決断を望んだ」と話しています。バイデン氏は「世論調査では選挙戦が拮抗していることを示しており、最後まで接戦だっただろう。だが、上下両院民主党の多くの同僚らは私がいれば議会選で彼らにとって不利になると考えていた。もし私が選挙戦に残れば、それが話題になるのではないかと懸念した」と述べ、最後に「われわれは絶対にトランプ氏を打ち負かさなければならない」と強調していました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、同国軍が広範囲にわたるロシア領土を制圧したことを初めて公に認めました。ウクライナ軍のシルスキー総司令官によれば、制圧した領土は約1000平方キロメートルに及びました。「作戦はなお続いており、状況は引き続きわれわれの統制下にある」と述べています。ウクライナへは米国から、最初のF16戦闘機10機が供与され攻撃力が一段と高まったようです。最終的には79機供与される予定で、これまで一方的にロシア有利の展開が続いていましたが、戦況は大きく変わりそうです。ロシアのプーチン氏は「ロシア国防省の主な任務は、われわれの領土から敵を追い出し、国境警備隊と共に国境を確実に守ることだ」と述べています。
本日のドル円は146円〜148円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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8/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 | -------- |
8/5 | シーゲル・ペンシルベニア大学教授 | 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 | -------- |
8/2 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 | -------- |
7/31 | パウエル・FRB議長 | 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 | 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。 |
7/31 | 植田・日銀総裁 | 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 | -------- |
7/25 | イエレン・財務長官 | 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) | -------- |
7/21 | バイデン大統領 | 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 | -------- |
7/17 | トランプ・前大統領 | 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 | ドル安が加速。157円台から156円台前半に。 |
7/17 | ウォラー・FRB理事 | 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 | -------- |
7/17 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 | -------- |
7/17 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 | -------- |
7/15 | パウエル・FRB議長 | 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 | ややドルが売られ、債券と株は買われる。 |
7/11 | デーリー・SF連銀総裁 | 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 | -------- |
7/11 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: | -------- |
7/11 | パウエル・FRB議長 | 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 | 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。 |
7/2 | パウエル・FRB議長 | 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書