今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米7月のPPIは0.1%」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は147円台後半から反落。米7月のPPIが市場予想を下回ったことが9月利下げを後押し。ドル円は146円61銭まで売られる。
  • ドルが売られたことでユーロドルは上昇。1.0999まで買われ、再び1.10台を目指す動きか。
  • 株式市場ではインフレ鈍化の指標を受け3指数が大幅高。ナスダックは前日比407ポイント高と、2.43%の上昇を記録。
  • 債券は続伸。長期金利は3.84%台に低下。
  • 金は5日続伸。原油は大幅に反落。
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7月生産者物価指数 → 0.1%
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ドル/円 146.61 〜 147.51
ユーロ/ドル 1.0926 〜 1.0999
ユーロ/円 160.64 〜 161.48
NYダウ +408.63 → 39,765.64ドル
GOLD +3.80 → 2,507.80ドル
WTI −1.71 → 78.35ドル
米10年国債 −0.061 → 3.843%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏4−6月期GDP(改定値)
  • 欧 ユーロ圏6月鉱工業生産
  • 英 英7月消費者物価指数
  • 米 7月消費者物価指数

本日のコメント

7月の米生産者物価指数(PPI)が前月比で「0.1%」と、市場予想の「0.2%」を下回ったことで、9月のFOMC会合での利下げが想定通り実施されるとの観測が強まりました。各市場の反応は順当で、定石通りでした。債券が買われ金利が低下したことでドルが売られ、ドル円は148円に届かず反落。金利低下を好感し、株式市場では3指数が揃って大幅に上昇。特にナスダックは407ポイントの上昇を見せました。ドルが売られたことで金は買われ、これで5日続伸。原油は、世界の石油市場が10−12月に供給不足から供給過剰に転じる見通しだと、国際エネルギー機関(IEA)が発表したことで大幅安となっています。

今月30日に発表される「個人消費支出(PCE)価格指数」に用いられるPPIのカテゴリーは、総じて伸びが抑制されており、FRBが重視するPCE価格指数でも利下げを正当化する可能性が高いと見られます。これらの指標とは直接関係ないとは思いますが、米大手銀行は米景気がリセッション入りする確率が高まったとするレポートを公表しています。ゴールドマンは、株式市場と債券市場の両方を加味したリセッション確率が、4月の「29%」から「41%」に上昇したとし、JPモルガンも自社のモデルで、3月末には「20%」だったリセッション入りの確率が「31%」になったと発表しています。今後これらの予想を裏付けるような指標が確認されるようだと、FRBの利下げ幅にも影響を与えることになります。

衆議院財務金融委員会は13日の理事懇談会で、来週23日(金)に閉会中審査を開催することを決め、日銀の利上げや株価の乱高下などに関して、植田総裁や鈴木財務相から意見を求めることを決めました。立憲民主党の安住国対委員長は、「日銀の政策金利引き上げが、わが国金融政策の転換点になり、株価や為替への影響につながっていることは間違いない。日銀がこの先どうしていくのか、世界情勢を含めて日本経済や取り巻く環境について政府がどういう考えなのか、国会で審議することが有意義だ」と記者団に述べています。意見聴取は23日の午前9時から正午まで行われ、同日午後1時からは参議院財政金融委員会でも行われる予定です。今後の金融政策について、植田総裁がどのような考えを示すのか注目されます。先月末に25bpの利上げを決めただけで為替と株価が乱高下し、個人投資家がパニックに陥った影響を考えると、今後金融正常化への道を進むにしても総裁の物言いは、慎重にならざるを得ないと思われます。ここは、タカ派発言は避けるだろうと予想しています。

今朝の経済紙に、次期米大統領に誰がなるのかによって、FRBの独立性が危ぶまれるとの記事が掲載されていました。トランプ氏はFRBの決定に「大統領が発言権を持つべきだ」と述べており、副大統領候補のバンス氏は「国が戦争をするかどうか、政策金利をどうするのか、これらは米国の民主主義が答えを持つべき重要な問題だ」と語っており、FRBの独立性を否定するかのような発言を行っています。一方ハリス氏は、「まったく賛成できない。私が大統領になればFRBには絶対干渉しない」と現在の制度を支持しています。トランプ氏は自身が大統領だった際に、パウエル議長の手腕を痛烈に批判していたことがあります。

今夜注目の7月CPIは、市場予想が総合で「0.2%」(6月は−0.1%)、コアで「0.2%」(6月は0.1%)と予想されています。本日のドル円は145円80銭〜148円程度でしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和