今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米7月のCPIは0.2%と予想通り」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 昨日の昼前、岸田首相が次期自民党総裁選への不出馬を発表。ドル円は146円07銭近辺まで売られたが直ぐに反発。NYでは7月のCPIがほぼ市場予想通りだったことでドル円は147円台に。
  • ユーロドルは続伸。一時は1.1047まで買われ、昨年12月25日以来となるユーロ高を示現。
  • CPIの結果を受け株式市場は3指数が揃って続伸。ダウは242ドル上昇し、2週間ぶりに4万ドルの大台を回復。
  • 債券は小幅に続伸。長期金利は3.83%へと低下。
  • 金は6日ぶりに売られる。原油は備蓄在庫が予想外に増加していたことで続落。
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7月消費者物価指数 → 0.2%(前月比)
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ドル/円 146.55 〜 147.57
ユーロ/ドル 1.1005 〜 1.1047
ユーロ/円 161.54 〜 162.59
NYダウ +242.75 → 40,008.39ドル
GOLD −28.10 → 2,479.70ドル
WTI −1.37 → 76.98ドル
米10年国債 −0.008 → 3.835%

本日の注目イベント

  • 豪 豪7月雇用統計
  • 日 4−6月GDP(速報値)
  • 日 6月鉱工業生産(確定値)
  • 中 中国7月小売売上高
  • 中 中国7月鉱工業生産
  • 英 英4−6月期GDP(速報値)
  • 英 英6月鉱工業生産
  • 英 英6月貿易収支
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月NY連銀製造業景況指数
  • 米 8月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 7月輸入物価指数
  • 米 7月輸出物価指数
  • 米 7月小売売上高
  • 米 7月鉱工業生産
  • 米 7月設備稼働率
  • 米 8月NAHB住宅市場指数
  • 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演
  • 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演

本日のコメント

岸田首相が突然の総裁選不出馬を発表しました。市場はこのニュースに「円買いと株売り」で反応しましたが、直ぐに元の水準を回復。次期首相に誰がなるのかにもよりますが、金融政策や景気動向に大きな変化は見られないというのが市場のコンセンサスのようです。首相は言葉の中にも無念さをにじませていましたが、相次ぐ党内の不祥事や政治資金問題では大揺れに揺れ、支持率が歴史的な低水準にとどまっている状況の中、撤退はやむを得ないところでしょう。昨日の夜のニュース番組の中でも、街頭インタビューで、身を引く首相を惜しむ声はほとんど聞かれませんでした。バイデン氏は「高齢」が引き金となり撤退し、岸田氏は「不人気」が引き金となり身を引いたことになります。次回「G7」ではどの顔を見ることになるのでしょうか。「トランプ・石破?」それとも「ハリス・小泉?」・・・いずれも、先ず貫禄という点ではすでに米国に負けているようなイメージがあります。それはそうとしても、これで日銀としても9月会合での追加利上げは難しくなったとみます。自民党総裁選は9月下旬になりそうですが、その前の利上げは避けると予想します。また、その後も新しい首相の元、景気刺激策等の経済対策が発表される状況の中、引き続き利上げのタイミングを探すのは難しいのではないかと考え、日銀による年内利上げは、先の25bpで「打ち止め」と予想していますが、どうでしょう。

注目された米7月の消費者物価指数(CPI)はほぼ市場予想通りでした。総合指数では、前月比で「0.2%」(6月は−0.1%)、前年比で「2.9%」(6月は3.0%)でした。食品とエネルギーを除いたコア指数では、前月比で「0.2%」(6月は0.1%)、前年比で「3.2%」(6月は3.3%)で、サプライズはありませんでした。CPIの結果を受け、足許の市場では予想利下げ幅は、前日の約37bpから縮小しており、9月会合での50bp利下げ確率もおよそ3分の1まで低下しています。ただこれで、前日のPPIと昨日のCPIが揃ってインフレの鈍化傾向を示したことで、9月利下げは確実となり、利下げ幅が25bpか50bpかが焦点になります。同時に、11月会合と12月会合でも追加利下げがあるのかどうかで、ドル円の水準も決まってくるはずです。この点については、今後FOMCメンバーの発言がヒントになりますが、先ずは来週22−24日のジャクソンホールでのパウエル議長の講演が最大のヤマ場となまります。

すでに昨日の時点でもシカゴ連銀のグールズビー総裁が発言しています。総裁はブルームバーグとのインタビューで、「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」と述べていますが、次回9月会合での利下げの可能性とその規模については触れていませんでした。今夜も2名のメンバーの講演が予定されています。PPI、CPIの結果を踏まえてどのような認識を示すのか、ヒントを探りたいと思います。また同時に、米景気が早急な大幅利下げが必要なほど状況が悪化していると認識しているのかどうかも、ポイントの一つになろうかと思います。多くのメンバーは、基本的には景気抑制的政策の転換という点では一致しているが、早急な大幅利下げという部分では慎重な姿勢を示すのではないかと考えています。

本日のドル円は146〜148円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和