今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米7月の小売売上高は伸び、ドル円149円台に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 7月の小売売上高が市場予想を上回ったことでドル円は149円を回復。149円40銭近辺まで買われ、「38.2%」戻しに迫る。
  • ユーロドルは水準を下げたものの、堅調に推移。
  • 株式市場は3指数が揃って大幅続伸。ナスダックは401ポイントの上昇を見せ、再び2%を超える大幅高。
  • 債券は反落。長期金利は3.91%台へと上昇
  • 金は買われ、原油も反発。
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新規失業保険申請件数 → 22.7万件
8月NY連銀製造業景況指数 → −4.7
8月フィラデルフィア連銀景況指数 → −7.0
7月輸入物価指数 → 0.1%
7月輸出物価指数 → 0.7%
7月小売売上高 → 1.0%
7月鉱工業生産 → −0.6%
7月設備稼働率 → 77.8%
8月NAHB住宅市場指数 → 39
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ドル/円 147.19 〜 149.40
ユーロ/ドル 1.0950 〜 1.1014
ユーロ/円 162.07 〜 163.70
NYダウ +554.67 → 40,563.06ドル
GOLD +12.70 → 2,492.40ドル
WTI +1.18 → 78.16ドル
米10年国債 +0.078 → 3.913%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏6月貿易収支
  • 英 英7月小売売上高
  • 米 7月住宅着工件数
  • 米 7月建設許可件数
  • 米 8月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会に参加
  • 加 カナダ7月住宅着工件数

本日のコメント

7月3日に161円95銭まで買われたドル円は、市場介入や米景気の減速傾向が鮮明になったこと、さらに日銀の想定外の利上げ、いわゆる「植田ショック」を受け、日経平均株価が4451円安と、過去最大となる下げ幅を記録。ドル円は高値からざっと20円程下げ、8月6日には141円68銭まで売られました。円高と株安が一気に進んだことで、為替も株も今年の上昇分を全て吐き出す展開となり、個人投資家もかなりの人が痛手を被ったこの1カ月でした。

ドル円はそこからの戻りの過程です。上記下落幅(20円27銭)を「フィボナッチ・リトリースメント」の重要な値である「38.2%戻し」を当てはめると、その値は「149円42銭」になります。昨日のNYでは米7月の小売売上高が市場予想を上回りドルが買われましたが、ほぼこの値を前に上昇は止まっています。多くの市場参加者がこの値を意識していたという証左です。このまま反落するかどうかはまだ分かりませんが、この先「150円」というレベルは戻りの「大きな壁」になると考えています。そもそも今回のドルの急落は、FRBが利下げをし、BOJは利上げをすることで、ドル高の原動力となっていた「金利差」が縮小するとの観測が大きな要因でした。今後両金融当局の政策実行スピードは不透明な部分がありますが、方向性が変わることはありません。ドルの急落を目の当たりにした輸出企業や機関投資家は「150円前後」では確実にドル売り注文を置いてくると思われます。もちろん、だからといってこの水準が絶対に抜けないということではなく、突破するにはそれなりの大きな材料が必要なことは明らかです。この先、反値戻し(151円82銭)があるのかどうか見ていきたいと思います。

米7月の小売売上高は市場予想の「0.4%」を上回る「1.0%」でした。これは2023年1月以来となる大幅な伸びです。物価高と借り入れコストの高止まりにもかかわらず、個人消費が堅調さを維持していました。今回の数字の中身を見ると、自動車販売が大きく持ち直したこが寄与しています。自動車を除いたベースでは前月比「0.4%」で、自動車とガソリンを除いたベースでも同じく「0.4%」と、市場予想と一致しています。ブルームバーグは、「今回の統計からは、借り入れコストの上昇や労働市場の減速、不透明な経済見通しにもかかわらず、消費が持ちこたえていることがうかがわれる。ただ、新型コロナウイルス禍で積み上がった貯蓄がほぼ底を突き、賃金の伸びも鈍化する中で、米消費者の多くがクレジットカードなどのローンに頼る傾向を強めている。とりわけ支払い延滞が増えていることから、個人消費の持続性については疑問が生じている」とコメントしています。

民主党の大統領候補であるハリス副大統領は、共和党候補のトランプ氏が合意済のABCニュース主催の討論会に応じることを条件に、2回目の討論会を行うことを提案しています。上記討論会は9月10日に行われますが、副大統領候補についても、共和党のバンス氏と民主党のウォルズ氏の討論会が10月1日にCBSニュース主催で行われることになっています。これに先立ちバイデン大統領は15日、ワシントン郊外でのイベントでハリス副大統と同じステージに立ち、応援演説で「ハリス氏は、われわれが成し遂げた進歩を支えた最高のパートナーだ」と称え、「彼女は素晴らしい大統領になるだろう」と述べています。

FOMCメンバーのコメントも入っていますが、やはりモデレートなものだったようです。セントルイス連銀のムサレム総裁は講演で、「私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」と、9月利下げに前向きな発言を行っています。利下げ幅等についても言及はありません。

ドル円は上でも述べているように、先ずは「38.3%戻し」水準を明確に抜き、150円を目指す展開になるのかどうかを見極めたいところです。今年残りのFOMC会合で、3回の利下げで都合125bpの大幅利下げがあるとの観測も、ここに来てかなり後退してきました。いつもの様に「オーバーシュートの修正局面」です。日経平均株価が大きく上昇すると見ていますが、その際円売りがどこまで進むのか注目です。

本日のドル円は148円〜150円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和