今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「イスラエルとハマスとの停戦近いか?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 昨日の東京市場午後にはドル円が大きく売られ、145円19銭まで下落。ただその後は落ち着きを取り戻し、NYでは146円71銭まで上昇。株価の上昇が円売りにつながっている側面も。
  • ユーロドルは上昇し1.1086まで買われ、9カ月ぶりの高値を付ける。
  • 株式市場は3指数が揃って続伸。ナスダックとS&P500はこれで8連騰を記録。ジャクソンホール会合でパウエル議長が利下げに言及するとの観測が株価を支える。
  • 債券は続伸。長期金利は3.87%台に低下。
  • 金は小幅に続伸。原油はイスラエルとハマスとの停戦合意が近いとの見方から大幅続落。
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7月景気先行指標総合指数 → −0.6%
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ドル/円 145.94 〜 146.71
ユーロ/ドル 1.1031 〜 1.1086
ユーロ/円 161.16 〜 162.58
NYダウ +236.77 → 40,896.53ドル
GOLD +3.50 → 2,541.30ドル
WTI −2.28 → 74.37ドル
米10年国債 −0.011 → 3.871%

本日の注目イベント

  • 豪   RBA、金融政策会合議事要旨公表
  • トルコ トルコ中銀政策金利発表
  • 独   独7月生産者物価指数
  • 欧   ユーロ圏6月経常収支
  • 欧   ユーロ圏7月消費者物価指数
  • 米   ボスティック・アトランタ連銀総裁、座談会に参加
  • 加   カナダ7月消費者物価指数

本日のコメント

ドル円は昨日の午後147円台半ばから急落し、一時は145円19銭近辺まで売られる場面がありました。特段ドルが売られる材料はなく、恐らく午後12時半から始まった東京株式市場の後場で、株価が大きく下げて始まったことに連動した動きかと思われます。足元では株価の上昇が円売り、下落が円買いとの相関がこれまでより、より鮮明に見られます。

ブリンケン国務長官は19日、イスラエルのネタニヤフ首相がガザ停戦案を受け入れたとし、「次の重要なステップはイスラム組織ハマスがイエスと言うことだ」と、テルアビブで語っています。ブリンケン氏はこの提案について「橋渡し的な合意だ。全てが詳細に明記されているわけではない」としながらも「米国は決してあきらめない」と述べています。ただ、事態はそう楽観的ではなく、ハマスとパレスチナ自治区ガザで連帯する武装組織「イスラム聖戦」は、テルアビブで「自爆作戦」を遂行したと発表し、イスラエルがガザでの軍事作戦を継続する限り、こうした活動を繰り返すと警告しています。またイスラエルとハマスの両者はお互いに、停戦交渉を妨げているのは相手であると双方で非難しています。ただそれでも、あの強硬なネタニヤフ氏が本当に停戦を受け入れたのであれば、これまでには見られなかったことであり、実際に停戦が実現する可能性があるのかもしれません。

23日には日米金融当局トップの発言があることで、市場は神経質になっていますが、中でも注目はパウエル議長の講演です。「現時点では、大幅利下げは考えていない」といった趣旨の発言を行えば、債券と株が売られ、ドル円は再び148−149円方向に動きそうです。「米景気の底割れを防ぐためには大幅な利下げが必要」といった「ハト派寄り」の発言の可能性は低いと予想します。FOMCメンバーの二人も昨日、その種の発言を行っています。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューで、「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」と語っています。また、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁もフィナンシャル・タイムズ(FT)紙とのインタビューで、「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」との認識を示しています。いずれも大幅利下げをイメージすることは出来ず、おそらくパウエル議長もこの発言に近い内容の言葉で今後の利下げスタンスを示唆するものと考えます。

NY連銀は、約1000人を対象に雇用状況とその見通しを4カ月ごとに調査していますが、最新の調査結果では、失業保険申請件数が増加傾向にあり、労働市場の減速が懸念されていますが、かならずしも減速傾向が定着したとは言えない結果が示されています。「4カ月以内の失職を予想する回答者の比率が4.4%と、調査開始以来の最高を記録した一方、転職を予想する回答者の比率は、それを上回る11.6%に上昇した。また異なる雇用主への転職率は7.1%と、調査開始以来の高水準だったが、4カ月前と同じ雇用主の下で職を維持している労働者の比率は、過去最低の88%だった」(ブルームバーグ)と、離職率は上昇していました。

本日のドル円は145円30銭〜147円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されていおり、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和