「ユーロドル8カ月ぶりに1.11台前半まで上昇」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 147円台で堅調に推移していたドル円は反落。米金利が低下し、ジャクソンホール会合を前にドル売りが優勢となり145円20銭までドルが売られる。
- ドル安の流れにユーロドルは続伸。1.1130までユーロ高が進み、2023年12月以来の水準を付ける。
- 株式市場は久しぶりに3指数が揃って下落。急ピッチで上昇したこともあり、パウエル議長の講演を前に手仕舞いの売りも。
- 債券は続伸。長期金利は3.80%台まで低下。
- 金は4日続伸。一方原油は3日続落。
ドル/円 | 145.20 〜 146.49 |
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ユーロ/ドル | 1.1080 〜 1.1130 |
ユーロ/円 | 161.54 〜 162.36 |
NYダウ | −61.50 → 40,834.97ドル |
GOLD | +9.30 → 2,550.60ドル |
WTI | −0.33 → 74.04ドル |
米10年国債 | −0.064 → 3.807% |
本日の注目イベント
- 日 7月貿易統計
- 日 7月訪日外客数
- 米 FOMC議事録(7月30−31日分)
本日のコメント
ドル円は、昨日の東京時間には147円35銭近辺まで上昇したが、上値は限られ反落しています。日経平均株価の上昇の割には円売りは進まず、NYでは米長期金利が低下したことや、ジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演を前に、一旦ドルを手放す動きが優勢な展開でした。米長期金利はこのところ低下傾向を鮮明にしており、好調だったNY株式市場でも一旦利益確定の売りに押され下落しています。金(きん)への資金流入は続き、WTI原油価格はイスラエルとハマスの停戦合意の可能性や、中国景気の低迷を織り込みつつ下落基調となっています。
9月のFOMC会合では利下げ幅とその後の金融引き締めスタンスが焦点ですが、これまでのFOMCメンバーの発言は、利下げの段階に来てはいるが、下げ幅については総じてモデレートなもの言いでした。昨日も講演があり、ボウマンFRB理事は、「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」と述べ、その上で、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」と述べ、やはり慎重な言い回しでした。パウエル議長もこのような内容に沿った発言を行うとみられますが、「ジャクソンホールでは、予測専門家が絶えず予期せぬ結果に驚かされてきた」(ブルームバーグ)ことから予断を許しません。
米民主党全国大会が19日イリノイ州のシカゴで4日間の日程で開幕しました。登壇したバイデン大統領は、ハリス氏が次期米大統領に最もふさわしいと持ち上げ、自身が大統領候補から撤退したことにも触れ、「私はこの仕事を愛しているが、それ以上にこの国を愛している」と述べ、感慨深い表情を見せる場面もありました。ハリス副大統領も経済政策を披露し、中間層への支援を充実させる一方、法人税率を21%から28%に引き上げるとの考えを示しました。またこの日はクリントン女史も登壇し、ハリス氏を激励していました。オバマ元大統領もこの後登壇する予定です。さらに2008年の選挙戦を指揮したプルーフ氏や、オバマ政権を支えた大物人物もハリス氏勝利に向かって一致団結するようです。トランプ氏の集会では、このように会場が一つになって盛り上がる光景は何度も目にしていますが、昨日の民主党全国大会もそれらを上回るほどの熱気と歓声に包まれていた印象でした。民主党大統領候補がバイデン氏からハリス氏にバトンタッチされて以来、11月の大統領選では誰が勝利するのか、ほぼ予想がつかない状況になってきました。
ブルームバーグは、「イスラム組織ハマスは、パレスチナ自治区ガザでの停戦について、イスラエルとの合意を成立させることに『真剣』だと主張している」と報じています。ハマスは、戦争終結に向けた交渉をハマスが行き詰まらせているとの米国の見解を否定し、「ブリンケン国務長官および、バイデン大統領の発言は誤解を招くものであり、戦闘停止を真剣に考えている者の現実を反映していない」と、説明しています。ただ問題は、「ハマス側は戦争の恒久的な終結を主張しているのに対し、イスラエル側は、ハマスの軍事力と統治能力を破壊するという目的を達成するために紛争を再開できることを望んでいる点だ」と伝えています。新たな交渉は今週エジプトのカイロで始まることになっていますが、日程はまだ決まっていないようです。
本日のドル円は144円50銭〜146円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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8/20 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 | -------- |
8/19 | デーリー・SF連銀総裁 | 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 | -------- |
8/19 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 | -------- |
8/14 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
8/14 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 | -------- |
8/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 | -------- |
8/5 | シーゲル・ペンシルベニア大学教授 | 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 | -------- |
8/2 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 | -------- |
7/31 | パウエル・FRB議長 | 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 | 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。 |
7/31 | 植田・日銀総裁 | 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 | -------- |
7/25 | イエレン・財務長官 | 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) | -------- |
7/21 | バイデン大統領 | 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 | -------- |
7/17 | トランプ・前大統領 | 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 | ドル安が加速。157円台から156円台前半に。 |
7/17 | ウォラー・FRB理事 | 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 | -------- |
7/17 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 | -------- |
7/17 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 | -------- |
7/15 | パウエル・FRB議長 | 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 | ややドルが売られ、債券と株は買われる。 |
7/11 | デーリー・SF連銀総裁 | 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 | -------- |
7/11 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: | -------- |
7/11 | パウエル・FRB議長 | 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 | 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。 |
7/2 | パウエル・FRB議長 | 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書