今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米雇用者大幅に減少か?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は上下に大きく振れる。昨日の東京時間朝方には145円を割り込み144円94銭まで売られたが、その後はじりじりと反発。NYでは146円90銭近辺まで急騰したが、雇用統計の年次改定値発表後は一転して144円46銭まで急落。
  • ユーロドルは続伸。1.1173まで買われ、2023年12月以来となるユーロ高を記録。
  • 株式市場は軟調な動きの中、雇用統計の年次改定でFRBが大幅な利下げに踏み切るとの見方が台頭。3指数は揃って前日比プラスで引ける。
  • 債券は小幅続伸。長期金利は3.80%台と、ほぼ横ばい。
  • 金は5日ぶりに小幅安。原油は続落し、72ドル台を割り込む。
ドル/円 144.46 〜 146.90
ユーロ/ドル 1.1099 〜 1.1173
ユーロ/円 161.39 〜 162.87
NYダウ +55.52 → 40,890.49ドル
GOLD −3.10 → 2,547.50ドル
WTI −1.24 → 71.93ドル
米10年国債 −0.006 → 3.801%

本日の注目イベント

  • 独 独8月製造業PMI(速報値)
  • 独 独8月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月消費者信頼感指数(速報値)
  • 欧 ECB議事要旨(7月催分)
  • 英 英8月製造業PMI(速報値)
  • 英 英8月サービス業PMI(速報値)
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 8月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
  • 米 7月中古住宅販売件数
  • 米 ジャクソンホール会合(24日まで)

本日のコメント

ドル円は再び大きく乱高下しています。昨日の朝方にはドル売りが強まり、一時は145円割れまで売られたドル円でしたが、その後はいつものようにジリジリと押し戻される展開。夕方には146円台を回復したドル円はNYの朝方、米労働統計局が発表した2024年3月までの1年間の雇用者数の増加が「81万8000人」下方修正される見込みとの結果が示されました。1カ月当たりではおよそ6万8000人の減少となり、下方修正幅は2009年以来最大でした。この発表を受け、ドル円は一気に144円台まで押し戻されました。

今回の下方修正の観測は事前に予想されており、一部には「100万人」との見方もありました。今回発表された数字は「速報値」で、「確報値」は2025年始めに発表されますが、毎月初めに発表される雇用統計の数字よりも、実際の雇用の伸びははるかに低いものだった可能性が高まっています。この結果を受け、9月のFOMC会合では50bpの利下げの可能性が高まっただけではなく、11月、12月の会合での追加利下げの可能性も出てきました。FRBは、政策金利を長期にわたって高水準に維持する「景気抑制的政策」を続けてきましたが、今回の結果を受けFRBの金融政策が「後手」に回っているのではないかとの声も浮上しています。少なくとも明日のジャクソンホール会合でのパウエル議長の発言にも影響を与えることは必至でしょう。

7月30−31日に開催されたFOMC議事録も公開されました。議事録では、「最近のインフレでの進展と失業率の上昇は、同会合で政策金利25ベーシスポイント引き下げる妥当な論拠を示したとの見解を幾人(Several)かは示した。もしくは、そのような決定を支持しただろう」と記述されていました。また、「データが引き続きほぼ予定通りの内容となれば、次回会合での引き下げは適切になる公算が大きいとの考えを大多数が示した」とあります。「9月会合」での政策金利引き下げ議論があったことは市場予想通りと言えますが、「7月会合」でも引き下げを主張したメンバーが幾人かいたことで、今回の議事録公開はドル売り材料となり、ドル下落に拍車をかけたと考えられます。

イリノイ州シカゴで開かれている民主党全国大会の2日目、オバマ元大統領とミシェル夫人が登壇しそれぞれ演説を行いました。オバマ氏は、「トランプ氏が聴衆の規模に執着していることをからかった上で、米国にとって同氏は危険だ」と語った。いずれの発言も、民主党の進歩派と中道派との間であらためて広範に手を取り合い、トランプ氏を完全に打ち負かすことを目標にしたものであることは明らかだ。なおハリス氏は、「オバマ氏をかつてホワイトハウスに送り込んだ主要なアドバイザーを、自分のチームに迎えている」と、ブルームバーグは報じています。

8月5日に141円68銭まで売られ、その後急速に反発したものの150円には届かず、再び戻り高値から5円程落ちてきたドル円です。米長期金利も低下傾向を示しており、再びドルの下値がどこまであるのかを試す展開になってきました。「2番底」を探る動きかと思われますが、上記141円68銭を仮に割り込めば、140円という非常に重要な大台が控えています。目先の最大の焦点はここを維持できるのかどうかです。明日のパウエル議長の講演も極めて重要ですが、9月6日に発表される「8月の雇用統計」もこれまで以上に重要かと思います。

本日のドル円は144円〜146円程度でしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和