今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米第2四半期GDP3.0%」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 米GDP改定値を受け、ドル円は144円台半ばから1円程上昇。米経済の力強さが確認された格好で、FRBの大幅利下げ観測もやや後退。ドル円は145円55銭までドル高に。
  • ユーロドルは反落。ドルが買われたことで1.1056まで売られる。
  • 株式市場ではダウが243ドル買われ最高値を更新。他の2指数は小幅安。
  • 債券は売られ、長期金利は3.86%台に上昇。
  • 金と原油は上昇。
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4−6月GDP(改定値) → 3.0%
新規失業保険申請件数 → 23.1万件
7月中古住宅販売成約件数 → −5.5%
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ドル/円 144.53 〜 145.55
ユーロ/ドル 1.1056 〜 1.1098
ユーロ/円 160.24 〜 161.18
NYダウ +243.63 → 41,335.05ドル
GOLD +22.50 → 2,560.30ドル
WTI +1.39 → 75.91ドル
米10年国債 +0.027 → 3.861%

本日の注目イベント

  • 日 8月東京都区部消費者物価指数
  • 日 7月失業率
  • 日 7月鉱工業生産
  • 独 独8月失業率
  • 欧 ユーロ圏8月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏7月失業率
  • 米 7月個人所得
  • 米 7月個人支出
  • 米 7月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 7月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 7月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 7月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 8月ミシガン大学消費者マインド(確定値)

本日のコメント

久しぶりのコメントですので、ジャクソンホール以降の動きをざっと振り返っておきたいと思います。ドル円は今月5日に141円68銭まで急落し、その後は149円40銭前後まで反発し、そして今週26日には再びドルが売られ、143円44銭辺りまで下落しました。現時点ではこの143円台が「二番底」になっています。

パウエル議長は同地での講演で9月利下げの可能性に言及し、予想通り9月会合での利下げは確実の情勢となりました。ただ、下げ幅については触れておらず、25bpになるのか、50bpになるのかは今後のデータ次第であることの姿勢は維持していました。こうなると、言うまでもなく来週6日に発表される「8月の雇用統計」の結果が極めて重要になります。ここで、仮に失業率が予想を上回り雇用者数の伸びも低いようだと、50bpの可能性が一気に高まります。ただ、市場は年内100bpの利下げを織り込んでおり、この幅がさらに拡大するのかが焦点です。現時点では75−125bpの幅が見込まれています。昨日も第2四半期GDPが予想を上回っただけで、ドル円は1円も上昇しています。また、アトランタ連銀のボスティック総裁は講演で、「インフレ率は2022年のピークから大きく低下したが、最近の水準は米金融当局が目標とする2%には『なおほど遠い』」と述べています。景気減速の可能性を示唆する指標が相次ぐ中ですが、FOMCでは急速な利下げには慎重な意見が出て来ることも考えられます。

一方、日銀の方は25bpの利上げで「植田ショック」を招きましたが、その後内田副総裁が「このような状況での利上げはない」と発言したことが市場に安心感を与え、為替も株も落ち着きを取り戻しています。ただ、植田総裁の国会での発言はこれまでのスタンスと変わりはなく、「今後、経済・物価見通しが実現する確度が高まっていくのであれば、金融緩和の度合いを調整していく」と述べていました。それでも足元のドル円の水準は、今年の高値から15円程「円高方向」に振れており、少なくともこの水準が続く以上、為替面からの追加利上げ圧力はかなり低下していると考えられます。また28日に発表された、日銀が独自に作成している「基調的なインフレを補足するための指標」は3つの指標全てが低下しており、インフレの勢いは衰えているように見えます。多くの専門家が年内にさらに25bpの追加利上げを予想してはいますが、これもまだ不確実だと言えます。

ハリス副大統領はミネソタ州のウォルズ知事と共に、民主党の正副大統領候補となって以来初のテレビインタビューに望みます。CNNが米東部時間29日午後9時(日本時間30日午前10時)から全米で放映するもので、ハリス氏にとっても重要な意味を持つと報じられています。ブルームバーグの最新の調査によると、激戦7州ではハリス氏がトランプ氏を支持率で「リードするか、タイになっている」と伝えています。接戦ではあるものの、トランプ氏がリードしている州がないことになります。2016年の大統領選では「トランプ旋風」が起きましたが、いまそれと同じように「ハリス旋風」が起きている状況です。

本日は「7月の個人消費支出(PCE)価格指数」が発表されます。こちらも、利下げ幅を占う上で極めて重要な指標です。

本日のドル円は144円〜146円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和