「米7月PCE価格指数はほぼ市場予想通り」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は146円台を回復。7月のPCE価格指数がほぼ市場予想通りで、9月利下げ観測は不変。米金利が上昇したこともあり146円25銭までドルが買われた。
- ユーロドルは1.10台で推移しほぼ前日と変わらず。
- 株式市場では3指数が揃って買われ、ダウは228ドル高。連日で最高値を更新する。
- 債券は続落。長期金利は3.90%台へと上昇。
- 金と原油は反落。
7月個人所得 → 0.3%
7月個人支出 → 0.5%
7月PCEデフレータ(前月比) → 0.2%
7月PCEデフレータ(前年比) → 2.5%
7月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.2%
7月PCEコアデフレータ(前年比) → 2.6%
8月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 67.9
8月シカゴ購買部協会景気指数 → 46.1
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ドル/円 | 145.25 〜 146.25 |
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ユーロ/ドル | 1.1044 〜 1.1088 |
ユーロ/円 | 160.81 〜 161.49 |
NYダウ | +228.03 → 41,563.08ドル |
GOLD | −32.70 → 2,527.60ドル |
WTI | −2.36 → 73.55ドル |
米10年国債 | +0.042 → 3.903% |
本日の注目イベント
- 豪 豪7月住宅建設許可件数
- 中 8月財新製造業PMI
- 独 独8月製造業PMI(改定値)
- 欧 ユーロ圏8月製造業PMI(改定値)
- 英 英8月製造業PMI(改定値)
- 米 NY休場(レーバーデー)
本日のコメント
ドル円は1週間ぶりに146円台を回復しました。米経済がソフトランディングする可能性が高まり、米長期金利が上昇したにもかかわらず株式市場では主要3指数が揃って上昇。とりわけダウ30指数は連日の最高値更新を見せています。ハイテク株が多いナスダック指数に比べ、ダウはディフェンシブ銘柄が多く、指数を押し上げているようです。株高が円売りにつながった側面もありました。
9月のFOMC会合での利下げは確実ですが、25bpになるのか、50bpになるのかは、今週末の「8月の雇用統計」の結果に全て委ねられる状況かと思います。8月の非農業部門雇用者数は現所点では「16.5万人の増加」が予想され、7月の「11.4万人の増加」から大幅な伸びが予想されていますが、米労働統計局が先日発表した、2024年3月までの年間雇用者数の伸びが81万8000人下方に修正されたこともあり、発表される数字が額面通り受け止められるのかといった懸念も残ります。ブルームバーグは、「FRBの当局者らは恐らく、初出の数字を額面通りに受け取ることをためらうだろう」と指摘しています。
イスラエルでは、イスラム組織ハマスの人質となっていた6人の遺体が発見されたことを受け、国民の怒りが高まっています。イスラエル最大の労働組合、労働総同盟はネタニヤフ首相にハマスとの停戦合意を迫るため、2日から全国的なストライキを実施することを発表しています。今回の遺体発見は、遅々として進まない停戦協議に失望していたイスラエル国民の間に衝撃を与えたようです。ネタニヤフ氏は停戦協議でハマスの要求を拒んでおり、今回の事態で国民の怒りの多くがネタニヤフ氏に向けられています。イスラエルはWHOの要請で、戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで1日午前6時からポリオワクチン接種のための戦闘休止を受け入れています。接種期間は延長される可能性がありますが、現時点では3日までです。これが「恒久的な停戦」につながる可能性は低いと専門家は見ているようです。6人の遺体には米国人も一人含まれています。
ドイツでも政治的混乱が起きています。1日に開票されたドイツ東部2州の州議会選挙で、ショルツ首相率いる連立与党が票を伸ばせていません。選挙はテューリンゲン州とザクセン州で行われ、出口調査によれば、テューリンゲン州で極右「ドイツのための選択肢(Afd)」が得票率30.5%で勝利する見通しとなっています。ショルツ首相の社会民主党(SPD)と、緑の党、自由民主党(FDP)から成る、連立与党は、3党合わせて両州でそれぞれ15%ほどの得票率にとどまっているとのことです。極右政党がドイツの州議会で勝利を収めれば、第2次大戦後初めてのことになります。フランスでもルペン氏率いる極右政党が政権を取る勢いを見せたことでフランス国債が売られるという事態もありましたが、極右政党の台頭は今の時代の潮流ということでしょうか。ただ、「Afd」が政権を取る可能性は低いとみられています。
米大統領選の行方を左右する激戦州の一つであるミシガン州で、ハリス氏に対するトランプ氏のリードはほぼ消えたようです。バイデン大統領が民主党の候補だった時には、トランプ氏が7ポイントリードしていましたが、8月23−26日に州全体で600人を対象に行った最新の調査では、トランプ氏の支持率46%に対して、ハリス氏は45%に迫っています。好感度ではハリス氏が46%とトランプ氏の45%を上回っています。バイデン氏が候補者の時には、36%対45%でトランプ氏が大きくリードしていました。「ハリス旋風」はまだ当分続き、11月の選挙前日まで継続されるかもしれません。筆者は来週13日(金)に、米大統領選の専門家である早稲田大学公共政策研究所招聘研究員渡瀬裕哉氏の講演を聴く機会があります。この春同氏が行った講演では「トランプで決まり」と述べていましたが、「ハリス旋風」が吹き荒れる中、今度はどのような予想をするのか、楽しみです。
本日のドル円は145円30銭〜147円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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8/22 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 | 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。 |
8/22 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 | -------- |
8/20 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 | -------- |
8/19 | デーリー・SF連銀総裁 | 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 | -------- |
8/19 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 | -------- |
8/14 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
8/14 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 | -------- |
8/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 | -------- |
8/5 | シーゲル・ペンシルベニア大学教授 | 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 | -------- |
8/2 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 | -------- |
7/31 | パウエル・FRB議長 | 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 | 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。 |
7/31 | 植田・日銀総裁 | 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 | -------- |
7/25 | イエレン・財務長官 | 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) | -------- |
7/21 | バイデン大統領 | 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 | -------- |
7/17 | トランプ・前大統領 | 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 | ドル安が加速。157円台から156円台前半に。 |
7/17 | ウォラー・FRB理事 | 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 | -------- |
7/17 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 | -------- |
7/17 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 | -------- |
7/15 | パウエル・FRB議長 | 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 | ややドルが売られ、債券と株は買われる。 |
7/11 | デーリー・SF連銀総裁 | 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 | -------- |
7/11 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: | -------- |
7/11 | パウエル・FRB議長 | 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 | 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。 |
7/2 | パウエル・FRB議長 | 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書