今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「NY市場、9月はドル安・株安で始まる」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 前日147円台まで買われたドル円は145円台まで押し戻される。東京時間でも上値が重かったが、NYでは株価が大きく下げたことや、米金利の低下に145円16銭まで下落。
  • ユーロドルはドル安にも拘わらず買われず、上値は1.1070止まり。
  • 株式市場では3指数が大幅安。エヌビディアを中心とする半導体株が大きく売られ、ナスダックは3.2%を超える下げに。
  • 債券は買われ、長期金利は3.83%台に低下。
  • 金と原油は続落。原油はリビアの生産再開の合意が近いとの見方から3ドルを超える下落。
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8月ISM製造業景況指数 → 47.2
8月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 47.9
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ドル/円 145.16 〜 146.28
ユーロ/ドル 1.1026 〜 1.1070
ユーロ/円 160.49 〜 161.48
NYダウ −626.15 → 40,936.93ドル
GOLD −4.60 → 2,523.00ドル
WTI −3.21 → 70.34ドル
米10年国債 −0.072 → 3.831%

本日の注目イベント

  • 豪 豪4−6月期GDP
  • 中 8月財新サービス業PMI
  • 独 独8月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏7月卸売物価指数
  • 欧 ユーロ圏8月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏8月サービス業PMI(改定値)
  • 米 7月貿易収支
  • 米 7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
  • 米 7月製造業受注
  • 米 8月自動車販売台数
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
  • 加 カナダ7月貿易収支
  • 加 カナダ中銀政策金利発表

本日のコメント

前日147円台に乗せたドル円でしたが、昨日のNYでは高値からほぼ2円も円高方向に振れています。もっとも、ドル円は昨日の東京時間から上値を切り下げ売られ易い地合いでした。「今後も物価上昇が続くようなら、利上げを行う方針に変わりはない」といった植田総裁のタカ派姿勢は、先の国会での状況説明でもありましが、これが資料として昨日の「経済財政諮問会議」に提出されたことで、改めて日銀の利上げ姿勢が意識されドルがジリ安となる展開でした。

そしてNYでは「8月のISM製造業景況指数」が「47.2」と、5カ月連続で節目の「50」を割り込んだことで、FRBの大幅利下げ観測が連想され米金利が低下。ドル円は145円16銭まで売られました。大幅利下げ観測は、本来なら債券と株が買われ、金利低下に伴いドルが売られる流れになる傾向がありますが、昨日は買われるはずの株価も大きく下げ、これが「リスクオフ」となり円が買われた側面も大きかったようです。半導体株が激しく売られ、代表格の「エヌビディア」は9.5%も下落し、この日だけで2789億ドル(約40兆5460億円)が吹き飛んだと報じられています。米1銘柄として、過去最大となるそうです。日経先物も大きく下げており、東京時間で日経平均株価が大幅に下げるようだと、ここでも円高要因になる可能性があります。

今、世界で行われている「2つの戦争」、なかなか終結への糸口が見つけられないようです。ハマスに捕らわれていた人質のうち6人が遺体となって発見されたことを受け、イスラエルでは国内で大規模なストライキに発展。交通が麻痺し、ネタニヤフ氏への批判も高まっていますが、ネタニヤフ氏の強硬姿勢は変わっていません。ネタニヤフ氏は2日夜のテレビ会見で、「『フィラデルフィア回廊』として知られる14キロの国境地帯はハマスの重要な補給路であり、決してこの管理を放棄してはならない。放棄すれば、昨年10月7日の侵略と同じような攻撃の脅威を増大させることになる」と言明していました。これらの一連の行動を受け、イギリスはイスラエルに対する一部の武器輸出停止を発表しましたが、今のところネタニヤフ氏の考えには響いていないようです。

ロシアとウクライナの紛争も再び激しさを増して来ました。3日にはロシアがウクライナ中部へミサイル攻撃を行い、多くの死傷者が出ています。ゼレンスキー大統領は、「ロシアの弾道ミサイル2発がウクライナ中部ポルタワにある軍事教育施設と隣接する病院を直撃した」と説明しています。この攻撃で少なくとも41人が死亡し、180人以上が負傷したと話しています。一方、ロシアのプーチン大統領は3日にモンゴルを訪問しています。モンゴルは国際刑事裁判所(ICC)に加盟しており、ICCはプーチン氏に逮捕状を発行しているため、ICC加盟国は自国に入国したプーチン氏を逮捕する義務が生じていると見られます。ウクライナは、「犯罪者が裁きを逃れることを許し、戦争犯罪の責任を共有している」と、モンゴルを強く非難しています。

ドル円は2円ほどの急落で、短い足のチャートでは下抜けしており、現在「2時間足」の雲の下限が145円前後にあるため、これに支えられている状況です。ここを割り込むと、「4時間足」の雲の下限である144円70銭辺りがマイナーなサポートですが、市場のセンチメントは再びドル売りに傾いて来たように感じます。本日のドル円は144円〜146円程度と予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和