今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円1週間ぶりに143円台に下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京時間から欧州時間にかけて、145円を挟むもみ合いが続いていたが、NYで7月のJOLTSの数字が発表されると一気にドル売りが強まる。144円台を割り込み、143円71銭までドル売りが進む。
  • ユーロドルはドル安が進んだことで1.1095まで上昇。
  • 株式市場はまちまち。ダウは小幅に上昇したものの、前日に続き、ナスダックが売られる。
  • 債券価格は続伸し、長期金利は3.75%台へと大幅に低下。
  • 金は小幅に反発。原油はこの日も売られ70ドルを割り込む。OPECが供給拡大を遅らせる方向で合意が近いとの観測が重石に。
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7月貿易収支 → −78.8b
7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 767万3千件
7月製造業受注 → 5.0%
8月自動車販売台数 → 1513万台
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ドル/円 143.71 〜 145.22
ユーロ/ドル 1.1040 〜 1.1095
ユーロ/円 159.16 〜 160.46
NYダウ +38.04 → 40,974.97ドル
GOLD +3.00 → 2,526.00ドル
WTI −1.14 → 69.20ドル
米10年国債 −0.077 → 3.755%

本日の注目イベント

  • 豪 豪9月貿易収支
  • 日 高田日銀審議委員、金融経済懇談会に出席(10:30、石川県金沢市)
  • 日 同委員記者会見(14:30)
  • 独 独7月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏7月小売売上高
  • 米 8月ADP雇用者数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 8月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 8月ISM非製造業景況指数

本日のコメント

昨日は、145円を挟み一進一退の動きを見せていたドル円でしたが、NYで大きく売られました。東京時間から欧州市場にかけては、145円を割り込むと直ぐに反発し、底堅い動きでしたが、NY時間に「7月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数」が 「767万3千件」と発表されると一気にドル売りが強まり、一時は143円71銭までドルが売られました。

この求人件数は2021年1月以来の低水準となり、米労働需要の減速が示されたことになります。今回の市場予想は「810万件」で、全てのエコノミストの予想値を下回る結果でした。また6月分も「818.4万件」から「791万件」へと下方修正されており、明日の雇用統計の結果を見る前に、すでに「今月の会合では50bpの利下げが有力」といった見方が強まってきました。米労働市場の減速は「7月の雇用統計」から確認されていますが、今回の求人件数の下振れは、その後発表された失業保険申請件数の増加傾向などと整合するものとなっています。「物価の安定と雇用の最大化」を責務とするFRBにとって、インフレ退治にはようやく成功したものの、今度は雇用の減速といった次の「敵」が現れたことになります。さらなる減速を避けるため、思い切った利下げが必要になってきたと考えるのは「理にかなっている」ということになります。求人件数統計では、レイオフが176万件増加し、2023年3月以来の多さになっています。特に、娯楽・ホスピタリティ企業での解雇が目立っています。ブルームバーグは「レイオフと失業が増加し、求人件数が減少している現状は、労働力の需給バランスがシフトし、労働市場の弱さが際立つようになったことを示す。最終的には賃金とインフレへの圧力低下につながるだろう」と分析していました。

FRBによる利下げに先立って4日、カナダ中銀(BOC)が25bpの利下げを決めました。これで3会合連続の利下げを行ったこととなり、政策金利は4.25%まで低下しています。カナダ中銀は、広範な物価上昇圧力を示す証拠はほとんどないとしながらも、インフレの上振れと下振れ両方のリスクバランスを重視する姿勢を強めています。BOCのマックレム総裁は、「インフレの押し上げ、および押し下げ要因を引き続き評価し、金融政策の決定をその都度行っていく」と述べています。米経済と密接な関係にあるカナダが3会連続で利下げを決めたことが、FRBの大幅利下げへの背中を押すことになるかもしれません。

明日の雇用統計で、失業率の上昇か雇用者数の伸びの鈍化が確認できれば今会合での「50bpの利下げ」も十分あり得ると予想しています。ただ、アトランタ連銀のポスティック総裁は依然として慎重な姿勢を維持しています。総裁は同連銀が公表した論文で、「インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」と記しています。さらに、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」と続けています。今月の会合で25bpの利下げを支持するのかどうかは明示されていませんでした。

本日のドル円は142円30銭〜144円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/4 ポスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和