「ドル円一時142円台に沈む」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円の荒っぽい動きが続いている。NYの朝方には142円86銭まで売られたが、「ISM非製造業景況指数」の発表を受け144円台前半まで反発。ただ、今夜の雇用者数でも弱目の結果を予想する向きが多く。143円台まで押し戻される。
- ユーロドルは続伸し、一時1.1119まで上昇。
- 株式市場はまちまちの展開。ダウは大きく下げたが、連日売られていたナスダックは反発。
- 債券は続伸し、長期金利は3.72%台に低下。
- 金は続伸。原油は小幅に売られ4日続落。
8月ADP雇用者数 → 9.9万人
新規失業保険申請件数 → 22.7万件
8月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 55.7
8月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 54.6
8月ISM非製造業景況指数 → 51.5
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ドル/円 | 142.86 〜 144.22 |
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ユーロ/ドル | 1.1077 〜 1.1119 |
ユーロ/円 | 158.52 〜 159.80 |
NYダウ | −219.22 → 40,755.75ドル |
GOLD | +17.10 → 2,543.10ドル |
WTI | −0.05 → 69.15ドル |
米10年国債 | −0.028 → 3.727% |
本日の注目イベント
- 日 7月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 7月景気一致指数(CI)(速報値)
- 独 独7月貿易収支
- 独 独7月鉱工業生産
- 欧 ユーロ圏4−6月期GDP(確定値)
- 米 8月雇用統計
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
- 米 ウォラー・FRB理事講演
本日のコメント
引き続きドル円の荒っぽい動きが続いています。東京時間では、株安からリスクオフが強まり142円台後半まで売られたドル円はその後反発しましたが、NYの朝方には「8月のADP雇用者数」に反応し、再び142円台に。その後今度は、「8月のISM非製造業景況指数」の結果で144円台まで買われるといった具合でした。市場は、経済指標の結果に非常に敏感になっています。その結果次第では18日のFOMC会合で、25bpか50bpの利下げが決められることから当然ですが、本番は今夜の雇用統計です。
「8月のADP雇用者数」が「9.9万人」だったことにはやや驚きです。これは2021年1月以来の低水準となり、市場予想の「14.5万人」を大きく下回る結果でした。速報値とはいえ、ここまで労働市場が減速しているかということですが、この数字が実態を表しているとすれば、今夜の数字も弱目のものとなる可能性が高まります。因みに、7月分も「12.2万人」から「11.1万人」に下方修正されています。今回の下振れについてADPの担当者は、「8月は専門職・サービスビジネス、製造業、情報の分野で雇用が減少。また、増加分全体の半分強は建設と教育・医療サービスの分野が占めた。従業員が500人以上の企業では、雇用者数は今年1月以来の低い伸びだった」と述べています。一方、その後に発表された「8月のISM非製造業景況指数」は「51.5」と、予想を若干上回っただけでしたが、2カ月連続で拡大したことが好感されたようです。それでもドル円を144円台前半まで押し上げる原動力には欠けるのではないかと思っています。要は、ショートが溜まりすぎて、そのポジションの巻き戻しだったと理解しています。
トランプ氏は5日、NYのエコノミック・クラブで登壇し、法人税の引き下げに言及しました。現行21%の法人税を15%に大きく引き下げるというもので、実現すれば米企業にとって大きなメリットになります。ただ、これは財政赤字の拡大につながることから、財源として国債の増発、すなわち金利上昇圧力が高まることになります。ハリス氏は企業への税制を強める姿勢をすでに表明していることから、同氏との違いをアピールしたものと思われます。米エマーソン大学が今月3−4日に、投票する可能性が高い1000人を対象に行った調査では、49%対47%で、ハリス氏がトランプ氏をリードしているとの結果が出ています。ロシアのプーチン氏は、米国の次期大統領にはハリス氏を望んでいるようです。もともとバイデン氏を支持していましたが、「予想がつき易い」という事がその大きな理由になっています。トランプ氏よりは、ハリス氏の方が想定外の行動が少ないということのようです。
今夜の雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)は「16.5万人」、失業率が「4.2%」と予想されています。18日のFOMCでの利下げ幅を決定する大きな要因になりますが、市場が織り込んでいる下げ幅は「35bp」と、15bpなのか、50bpなのか、確信が持てずにいることがうかがえます。
本日のドル円は142円〜144円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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9/4 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 | -------- |
8/22 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 | 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。 |
8/22 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 | -------- |
8/20 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 | -------- |
8/19 | デーリー・SF連銀総裁 | 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 | -------- |
8/19 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 | -------- |
8/14 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
8/14 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 | -------- |
8/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 | -------- |
8/5 | シーゲル・ペンシルベニア大学教授 | 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 | -------- |
8/2 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 | -------- |
7/31 | パウエル・FRB議長 | 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 | 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。 |
7/31 | 植田・日銀総裁 | 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 | -------- |
7/25 | イエレン・財務長官 | 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) | -------- |
7/21 | バイデン大統領 | 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 | -------- |
7/17 | トランプ・前大統領 | 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 | ドル安が加速。157円台から156円台前半に。 |
7/17 | ウォラー・FRB理事 | 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 | -------- |
7/17 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 | -------- |
7/17 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 | -------- |
7/15 | パウエル・FRB議長 | 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 | ややドルが売られ、債券と株は買われる。 |
7/11 | デーリー・SF連銀総裁 | 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 | -------- |
7/11 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: | -------- |
7/11 | パウエル・FRB議長 | 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 | 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。 |
7/2 | パウエル・FRB議長 | 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書