今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「WTI原油価格、1年3カ月ぶりの安値」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は反落。米金利が低下したことで142円20銭まで売られる。
  • ユーロドルは引き続き小動き。1.10台前半でもみ合う。
  • 株式市場はまちまち。銀行株が下げをけん引したダウは92ドル下げ、ナスダックとS&P500は買われる。
  • 債券は続伸し、長期金利は3.64%台で取引を終える。
  • 金は続伸。原油は米中の景気懸念から大きく下落。一時は65ドル27セントまで売られ、2023年6月以来となる安値を記録。
ドル/円 142.20 〜 143.17
ユーロ/ドル 1.1016 〜 1.1036
ユーロ/円 156.81 〜 157.84
NYダウ −92.63 → 40,736.96ドル
GOLD +10.40 → 2,553.10ドル
WTI −2.96 → 65.75ドル
米10年国債 −0.058 → 3.642%

本日の注目イベント

  • 日 中川日銀銀審議委員、金融経済懇談会(秋田市)に出席
  • 英 英7月貿易収支
  • 米 8月消費者物価指数

本日のコメント

米金利の下げが続いており、ドル円は昨日も金利低下に引っ張られる格好で、142円20銭まで売られ、前日の水準に押し戻されています。米10年債利回りは一段と低下し、昨日の米債券市場ではFRBの利下げスタンスを好感する形で価格が上昇し、利回りは一時3.63%台まで低下。2023年6月以来となる低水準を記録しています。来週のFOMC会合では依然として「25bp」の利下げ幅がメインストーリーですが、債券には買い物が集まっています。このところ株価が軟調なことも資金を債券に向かわせているようです。日米ともに株価の動きがさえません。

米国とカタール、エジプトが停戦交渉の仲介を根気強く続けているイスラエルとハマスの紛争ですが、イスラエルの人質交渉を担当するイスラエル政府のハーシュ特使が、イスラエルはハマスが人質を解放しパレスチナ自治区ガザの実効支配を放棄すれば、最高幹部シンワル氏が安全にガザを脱出できるよう取り計らうと提案しています。ハーシュ特使はブルームバーグのインタビューに応じ、「シンワル氏とその家族や同行希望者に、安全な脱出の道を提供する用意がある。人質を家に帰らせたい。もちろん武装解除と非過激化を通じた新たなシステムがガザを統治することを望む」と話しています。ハマスがこのシンワル氏のガザ脱出案を受け入れるかどうかは不明ですが、ハーシュ特使によると、ハマスは現時点では交渉に応じるよりも、条件設定で主導権を握ることに関心があるとしています。イスラエル人の人質7人が遺体で発見されて以来、イスラエルではネタニヤフ政権に対する不満が一段と高まり、同氏の退陣を求める声が高まっています。これに先立ち、6日にはパレスチナ自治区ヨルダン川西岸でトルコ系米国人女性が死亡しており、イスラエル軍による意図せぬ銃撃による可能性が高いと見られています。これに対してトルコのエルドアン大統領は、あらゆる法的手段を用いて正義を求めると公約しており、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に訴える可能性もあるようです。

今朝の経済紙に、「FX個人投資家が日銀の追加利上げを織り込んでいない」という記事があります。個人投資家の多くが年内の追加利上げを見込んでおらず、利上げがあれば、円買いを加速させる可能性があるとの論旨でした。個人的には、日銀は年内に再度25bpの利上げを行うと予想していますが、少なくとも足元の為替水準からすれば、利上げに対する政治的圧力は予想されず、日銀はフリーハンドと言えます。本日は秋田で中川日銀銀審議委員の講演がありますが、植田総裁など執行部に沿って「金融正常化への方針は変わらない」といった趣旨の発言を行うのではないかと予想しています。

本日のドル円は141円〜143円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和