今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米8月のCPI、コア指数が上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は昨日の東京市場の午後に株価の大幅下落を受け一時140円70銭近辺まで売られる。その後の欧州とNYでは反発し、米金利が下げ止まったことで142円55銭まで反発。
  • ユーロドルは前日の水準から大きな動きはなく、1.10台前半から半ばで推移。
  • 株式市場では朝方はダウが大きく売られる場面もあったが、3指数は揃って上昇。
  • 債券は反落。8月のCPIを受け、次回FOMCでの大幅利下げ観測が後退。長期金利は3.65%台に上昇。
  • 金はほぼ横ばい。原油は反発。
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8月消費者物価指数 → 0.2%(前月比)
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ドル/円 141.25 〜 142.55
ユーロ/ドル 1.1002 〜 1.1048
ユーロ/円 155.45 〜 156.98
NYダウ +124.75 → 40,861.71ドル
GOLD −0.70 → 2,542.40ドル
WTI +1.56 → 67.31ドル
米10年国債 +0.011 → 3.653%

本日の注目イベント

  • 日 田村日銀審議委員、金融経済懇談会(岡山市)に出席
  • 欧 ECB政策金利発表
  • 欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月生産者物価指数
  • 米 8月財政収支
  • 加 カナダ7月住宅建設許可件数

本日のコメント

ドル円は8月5日に記録した141円68銭である、直近の円の最高値を更新し、昨日の東京市場午後には140円70近辺までドルが売られ、昨年12月28日以来となるドル安を記録しました。およそ7カ月かけて上昇した値幅を、わずか2カ月で全て吐き出したことになります。きっかけは昨日の午前中に秋田市で行われた中川日銀審議委員の講演での発言でした。中川氏が追加利上げに前向きな姿勢を示したことで、円が買われ日経平均株価も下げ足を早めました。そして午後からは株価がさらに下落幅を広げ、一時は900円を超える下げ幅を記録したことで、円買いを加速させました。ただその後はジリジリと反発し、NYでは142円55銭までドルが買われました。上述のように、141円68銭を大きく割り込んだことから、次のターゲットは「140円の大きな節目」となりますが、東京時間には大きく売り込まれ、その後欧州からNYでは逆に大きく買い戻されるパターンは、いずれも「日足」のローソク足では「長い下ひげ」を残す結果になっています。ひょっとしたらのちのち、「これが底値に近いことを示すサインだった」といったことになるのかもしれません。

8月の米消費者物価指数(CPI)は前月比で「0.2%」、前年比で「2.5%」とほぼ市場予想通りでした。ただ、食品とエネルギーを除いたコア指数では、前月比が「0.3%」と、予想を上回っていました。同指数の前月比の伸びは4カ月ぶりの大きさで、やや気になるところです。この結果を受け、来週のFOMC会合での50bpの大幅利下げ観測は後退し、25bpがほぼ規定路線となってきました。世界最大の資産運用会社ブラックストーンは、独自のインフレ指標を作成しており、それによると、インフレ率は「1.7%」となり、米金融当局が目指している目標水準にあるとしています。同指数は構成する項目から居住費を外し、その他の項目を加えているそうです。

日本時間昨日の午前10時から始まった米大統領選討論会では、CNNが605人を対象に行った調査では63%が、ハリス氏がトランプ氏を破ったと考え、37%がトランプ氏が勝利したと考えたとの結果が示されました。ハリス氏は元検事としての経歴を想起させる形でトランプ氏を鋭く攻撃し、同氏のいら立ちを誘うことに成功。一方、トランプ氏はハリス氏について、過去のリベラルな姿勢と結び付けようと努めていました。この討論会は全米で、約5770万人が視聴したと伝えられています。討論会終了後、米人気歌手テイラー・スウィフトさんは投稿で、ハリス氏への支持を表明しました。ただこの直接討論は、誰が米国の次期大統領にふさわしいかとの印象を国民に与える「儀式」のようなもので、この調査結果がそのまま支持票につながるわけではありません。トランプ氏は、ハリス氏が優勢だったとの分析に反論し、「討論会は私が大勝したので、追加討論をする気はない」と述べていました。今回初となる直接討論会では、ひとまず「ハリス氏がよくやった」といったところでしょうか。大統領選まで残り2カ月。「ハリス旋風」はまだ衰える気配はなく、このまま大統領選へと突っ走れば、「ハリス大統領」も夢ではなくなってくるような勢いです。今朝の報道では「モシハリ」を想定した記事も散見されています。

さて、雇用統計とCPIを終え、来週はFOMCです。上でも触れたように、利下げ幅は25bpの可能性が高いと思われます。焦点は年内あと2回残っている会合で、どの程度の利下げ幅が見込まれるのかという点です。この辺りは、パウエル議長の言葉を待つしかありませんが、労働市場の減速を踏まえると、議長も「ハト派寄り」の発言を行う可能性もあると予想しています。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
7/31 パウエル・FRB議長 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。
7/31 植田・日銀総裁 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 --------
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和