「ドル円1年2カ月ぶりに139円台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は昨日のアジア時間に140円を割り込み、一時は139円58銭まで下落。ただ、NYでは9月のNY連銀製造業景況感指数が大きく改善したことで140円91銭までドルが反発。
- ユーロドルは続伸し、1.1138までユーロ高に。
- 株式市場はナスダックが売られたが、ダウとS&P500は上昇。ダウは228ドル買われ、最高値を更新。
- 債券は買われ長期金利は3.61%台に低下。
- 金は小幅に反落し、原油は反発。
9月NY連銀製造業景況指数 → 11.5
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ドル/円 | 139.76 〜 140.91 |
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ユーロ/ドル | 1.1117 〜 1.1138 |
ユーロ/円 | 155.45 〜 156.67 |
NYダウ | +228.30 → 41,622.08ドル |
GOLD | −1.80 → 2,608.90ドル |
WTI | +1.44 → 70.09ドル |
米10年国債 | −0.034 → 3.618% |
本日の注目イベント
- 独 独9月ZEW景気期待指数
- 米 8月小売売上高
- 米 8月鉱工業生産
- 米 8月設備稼働率
- 米 9月NAHB住宅市場指数
- 加 カナダ8月住宅着工件数
- 加 カナダ8月消費者物価指数
本日のコメント
予想通り、ドル円は昨日のアジア時間に140円を割り込み、一時は139円58銭までドル安が進みました。今週19日のFOMC会合で、50bpの利下げ観測が再び台頭し、昨日は東京市場が休場で参加者が少なかったことも影響したかもしれません。ドル円の139円台は2023年7月28日以来のこととなります。ただ、その後のNYでは9月のNY連銀製造業景況感指数が「11.5」と前月のマイナスから大きく改善。市場予想の「マイナス4」も大きく上回る結果だったことから、140円91銭まで反発しています。一旦140円台を割り込んだことで「達成感」が出るのか、あるいはさらに水準を切り下げるのか、19日のFOMC会合での利下げ幅と、年内2回残している会合での利下げスタンスにかかっています。
先週末までは、今会合での利下げ幅は25bpでほぼ決まりだと思われていましたが、50bpの利下げ観測が急速に高まり、昨日の米債券市場では50bpの利下げを織り込む動きが優勢となっている状況です。さらに、米民主党の上院議員3人がパウエル議長ら金融当局者に対し、今週のFOMC会合で「75bp」の利下げを求める書簡を送っています。ブルームバーグによると、ウォーレン氏など、3議員はパウエル議長に宛てた書簡で、「米金融当局が利下げに過度に慎重になれば、米経済を不要にリセッションに追い込むリスクが生じる」と指摘、「FOMCは労働市場の潜在的なリスクを軽減するため、より積極的に前倒しでの利下げ実施を検討すべきだ」と記しています。ブルームバーグは、「こうした書簡は金融当局者と取り巻く政治的環境の難しさを浮き彫りにする。金融当局者は、政策決定が政治的考慮によって左右されることはないと繰り返し主張しているが、複数方面からの政治的圧力にさらされ続けている」と論じています。またダドリー前NY連銀総裁もコラムで50bpの利下げを主張しています。その理由としてダドリー氏は、「雇用の下振れリスクがインフレの上振れリスクを上回っていると言える。労働市場が一定の水準を超えて悪化すると、そのプロセスを自発的に強める傾向がある。50bp利下げは、米金融当局者が今週発表する最新経済予測とも整合性が取れるとみている」と述べています。
筆者はもともと50bpの利下げを予想していましたが、現時点ではその可能性はまだ「五分五分」といったところでしょう。ただ、仮に25bpであればドルが買われるほど市場は利下げを織り込んでいるように見えます。では50bpだったら、やはりドルが売られる可能性が高いと思われます。140円割れが今回限りで終わる事はないと、考えておくべきでしょう。
本日のドル円は139円80銭〜141円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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9/12 | ラガルド・ECB総裁 | 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 | ユーロドルは小幅に買われる。 |
9/6 | サマーズ・元財務長官 | 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える | -------- |
9/6 | イエレン・財務長官 | 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 | -------- |
9/4 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 | -------- |
8/22 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 | 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。 |
8/22 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 | -------- |
8/20 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 | -------- |
8/19 | デーリー・SF連銀総裁 | 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 | -------- |
8/19 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 | -------- |
8/14 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
8/14 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 | -------- |
8/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 | -------- |
8/5 | シーゲル・ペンシルベニア大学教授 | 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 | -------- |
8/2 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 | -------- |
7/31 | パウエル・FRB議長 | 「問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスがインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ」、「そのテストが満たされれば、早ければ次回9月会合で政策金利の引き下げが選択肢になり得る」、(0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問に対しては)、「現時点で考えているものではない」 | 株と債券が大きく買われ、ドル円は151円台から149円台半ばまで急落。 |
7/31 | 植田・日銀総裁 | 「2%を超えるインフレはかなり長く続いている。2%からさらに上にいってしまうリスクもある」 | -------- |
7/25 | イエレン・財務長官 | 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) | -------- |
7/21 | バイデン大統領 | 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 | -------- |
7/17 | トランプ・前大統領 | 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 | ドル安が加速。157円台から156円台前半に。 |
7/17 | ウォラー・FRB理事 | 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 | -------- |
7/17 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 | -------- |
7/17 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 | -------- |
7/15 | パウエル・FRB議長 | 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 | ややドルが売られ、債券と株は買われる。 |
7/11 | デーリー・SF連銀総裁 | 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 | -------- |
7/11 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: | -------- |
7/11 | パウエル・FRB議長 | 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 | 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。 |
7/2 | パウエル・FRB議長 | 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書