今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「FOMC50bpの利下げを決定」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は注目されたFOMCで50bpの利下げ決めたことでドル売りが先行し、140円45銭まで下落。その後はドットチャートやパウエル議長の会見を受けドルが反発。142円71銭までドル高に。
  • ユーロドルもFOMC後に買われたが、その後軟調な動きとなり1.1097まで下落。
  • 株式市場では3指数が揃って下落。パウエル議長が緩和を急がない姿勢を見せたことが背景。
  • 債券は売られ長期金利は3.70%台に上昇。
  • 金は反発し、原油は反落。
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8月住宅着工件数 → 135.6万件
8月建設許可件数 → 147.5万件
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ドル/円 140.45 〜 142.71
ユーロ/ドル 1.1097 〜 1.1189
ユーロ/円 157.10 〜 158.37
NYダウ −103.08 → 41,503.10ドル
GOLD +6.20 → 2,598.60ドル
WTI −0.28 → 70.91ドル
米10年国債 +0.058 → 3.704%

本日の注目イベント

  • 豪   豪8月雇用統計
  • トルコ トルコ中銀政策金利発表
  • 英   BOE金融政策発表
  • 英   BOE金融政策委員会(MPC)議事録
  • 米   経常収支(4−6月)
  • 米   9月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米   新規失業保険申請件数
  • 米   8月景気先行指標総合指数
  • 米   8月中古住宅販売件数

本日のコメント

FOMCは政策金利を「50bp」引き下げ、フェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標を4.75−5%にすることを決めました。前日に発表された「8月の小売売上高」が上振れしたにもかかわらず、米債券市場では「50bp引き下げ観測」が後退しませんでしたが、結局、債券市場の読みが正解でした。政策金利の引き下げは2020年3月以来、4年半ぶりのこととなり、FRBはこれまでの「金融引き締め政策」を「金融緩和政策」へと、大きく舵を切り直したことになります。

政策金利の引き下げ発表直後、ドル円は141円台後半から売られ140円45銭までドル安が進み、想定内の動きを見せました。その後パウエル議長は会見で、「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」と述べ、FRBが「インフレ」から「労働市場」に軸足を移し変えたことがうかがえました。議長はその上で、50bpという通常の金利調整幅の2倍にあたる大幅利下げを決めたことについて、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」と述べています。市場が「前のめり」になることを予めけん制した発言かと思われますが、この発言が「タカ派」と受け止められドル円が大きく反発し、株と債券が売られています。

FOMC声明文では、「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」と記していました。今回の決定に関して、ボウマン理事が25bpの利下げを主張し、50bpの利下げには反対票を投じています。ボウマン理事は、ディスインフレに対して慎重な姿勢を崩しておらず、8月20日の講演では物価上昇率が目標の2%を「不快なほど上回っている」と述べ、政策金利は漸進的に引き下げるべきだと主張していました。FOMC会合での政策金利決定に、FRB理事が反対したのは2005年以来のことだそうです。ボウマン理事は2018年にFRB理事に就任する前はFarmers and Drovers Bankのバイスプレジデントを長く経験しており、インフレに対するより強い警戒感を持っていたのでしょう。

レバノンでは17日に各地でポケベルが爆発し、多くの死傷者が出ましたが、今度はトランシーバーなどの通信機器が相次ぎ爆発するという事態が18日に起きました。これはイスラエルの工作だと見られていますが、イスラエルは肯定も否定もしていません。ただ、イスラエルのガラント国防相は「イスラム武装組織との戦いが、新たな段階に入った。対応していかなければならない」と述べており、レバノン国境地域に部隊を振り分けることを明らかにしています。イスラエルはハマスだけではなく、さらにヒズボラとも紛争を激化させています。

4年半ぶりに金融政策を緩和方向に踏み出したFRBですが、問題はこの先も労働市場が軟調に推移して行くのかどうかです。直近3カ月の平均を見ると、確かに雇用者数の伸びは鈍化していますが、ただ、それまでの好調さは「コロナ明けの特殊要因」だったと言えないこともありません。これまでの数字が例外であり、今後労働市場の伸びが「巡航速度」に戻れば、今後大幅な利下げは回避できる可能性があります。FOMC参加者のドットプロットは、2025年の中央値では100bpの利下げが予想されており、思ったほどの利下げは予想されていません。本日のドル円は141円50銭〜143円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和