今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「NYダウ、S&P500が最高値更新」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 142円台で取引が始まったドル円はNYでは続伸。失業保険申請件数が減少したことや、株式市場でS&P500などが最高値を更新し、株価の上昇が円売りを加速。143円76銭までドル高が進む。
  • ユーロドルは1.11台前半から半ばで推移。
  • 株式市場では3指数が揃って大幅高。米経済がソフトランディングするとの観測が強まり、ダウは初の4万2000ドル台に。
  • 債券は横ばい。長期金利は3.71%台に。
  • 金と原油は上昇。
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経常収支(4−6月) → −266.8b
9月フィラデルフィア連銀景況指数 → 1.7
新規失業保険申請件数 → 21.9万件
8月景気先行指標総合指数 → −0.2%
米8月中古住宅販売件数 → 386万件
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ドル/円 142.54 〜 143.76
ユーロ/ドル 1.1117 〜 1.1167
ユーロ/円 158.82 〜 159.95
NYダウ +522.09 → 42,025.10ドル
GOLD +16.00 → 2,614.60ドル
WTI +1.04 → 71.95ドル
米10年国債 +0.009 → 3.713%

本日の注目イベント

  • 日 日銀金融政策決定会合
  • 日 植田日銀総裁記者会見
  • 日 8月消費者物価指数
  • 独 独8月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏9月消費者信頼感指数
  • 欧 ラガルド・ECB総裁講演
  • 英 英8月小売売上高
  • 加 カナダ7月小売売上高

本日のコメント

FOMCで50bpの利下げを決めたものの、市場がかなり大幅利下げを織り込んでいたことや、パウエル議長が「利下げを急がない」というメッセージを市場に発したことで140円台まで売られたドル円は142円台後半まで反発しました。昨日の東京市場ではさらにドルが買われ、一時は143円94銭辺りまでドル高に振れています。これは日経平均株価が一時900円を超える上昇を見せたことによるものと見られます。ただ、その後株価は堅調だったものの、ドル円は142円台前半まで売られ、改めてドルの上値の重さが意識される展開でした。

昨日のNYでは「失業保険申請件数」が21.9万件と、5月以来の低水準だったことで、「労働市場は引き続き健全だ」との見方が強まり、NY株式市場が大きく反応しました。申請件数は4週移動平均でも6月以来の低水準で、継続受給者数も減少しています。FRBの金融政策判断の軸足が「インフレ」から「雇用」に移ったと思われ、今後は雇用統計の結果が今まで以上に注目され、重要判断材料になります。その意味では「失業保険申請件数」の増減が材料になることも当然と言えます。ただ今回の数字は、米国がレーバデーといった主要な祝日があった影響も考えられ、「同申請件数は祝日の週に減少し、翌週に反動で増加する傾向がある」(ブルームバーグ)とのことです。それでも雇用統計への連想が働きやすいことから、今後も重要指標の一つになります。

イエレン財務長官は18日のFOMCの利下げ決定について、「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」との認識を示しました。また「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」。労働市場については「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」と語っています。雇用者数の伸びは年初から比べると減速してはいますが、これまでにも指摘したように、これはコロナ明けの影響を強く受けており、例外だったと言えます。現状のペースが続くのであれば、FRBが雇用面から大幅利下げを迫られる可能性は低いと見ています。

本日は日銀金融政策決定会合の結果が発表されます。政策金利は維持されると見ていますが、午後3時半からの植田総裁の会見が注目されます。前回、想定外の25bpの利上げを行い、その後の会見でも「タカ派寄り」の発言を行ったことでドル安が加速したことは記憶に新しいところです。従って個人的には、同じような混乱は避けたいという思いから、慎重に言葉を選ぶのではないかと考えていますが、どうでしょう。

本日のドル円は141円80銭〜143円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和