今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円反発するも144円台半ばが抜けず」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は朝方144円台半ばまで買われたが、FRBが今後も利下げを行っていくとの見方にドルは売られる。143円28銭までドル安が進み、143円台半ばで取引を終える。
  • ユーロドルは1.1台前半から半ばの動きで、大きな変化はなし。
  • 株式市場は3指数が揃って上昇。ダウとS&P500が揃って最高値を更新。
  • 債券は横ばい。長期金利は3.74%台で推移。
  • 金は4日続伸。原油は続落。
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9月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 47.0
9月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 55.4
9月S&Pグローバル総合業PMI(速報値) → 54.4
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ドル/円 143.28 〜 144.33
ユーロ/ドル 1.1109 〜 1.1143
ユーロ/円 159.29 〜 160.53
NYダウ +61.29 → 42,124.65ドル
GOLD +6.30 → 2,652.50ドル
WTI −0.63 → 70.37ドル
米10年国債 +0.008 → 3.749%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA、キャッシュターゲット
  • 日 植田日銀総裁講演(大阪)
  • 独 独9月ifo景況感指数
  • 米 7月ケース・シラ−住宅価格指数
  • 米 7月FHFA住宅価格指数
  • 米 9月コンファレンスボード消費者信頼感指数
  • 米 9月リッチモンド連銀製造業景況指数

本日のコメント

先週末の日銀金融政策決定会合では、市場予想通り政策金利の据え置きを決めました。直後にドル円は売られ141円台後半までドル安が進む場面がありましたが、その後大幅にドル高が進みました。「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」と植田総裁はその後の会見で述べ、ドル高に拍車がかかりました。7月の会合後の会見では、今後利上げを行う過程で「0.5%を壁とは特に意識していない」と発言したことが、大幅な円高に振れた一因になったこともあり、この日は慎重に言葉を選んでいたようでした。7月の会合時と発言が大きく変わったのは、その後円高が大きく進んだことが背景にあると思われます。

総裁は、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」としながらも、利上げペースに関して「時間的余裕がある」と述べています。利上げは急がないという姿勢に市場が反応して円売りを強め、その後のNYでは145円50銭までドル高が進んでいます。今後の金融政策に関して、現在進行中の自民党総裁選にもやや注意が必要です。個人的には可能性は非常に低いとは思いますが、次期総裁候補の一人である高市氏はインターネットの番組で、「金利を今、上げるのはあほやと思う」と述べ、もし総裁選で勝利し次期首相になれば、日銀の利上げには否定的な考えを示してしています。

ただドルの上昇はこの「145円台半ば」で抑えられています。その後も4回ほど同水準ブレイクを試していますが、全て押し戻されています。テクニカルで言えば、この水準は日足の「基準線」が機能しており、上昇を阻んでいます。現在「同基準線」は143円47銭近辺に位置しており、徐々に水準を切り下げてきています。個人的には145円を明確に上回ることが出来れば、展開もやや変わって来るのではないかと予想しています。FOMCでもパウエル議長が「利下げは急がない」という姿勢を見せ、今度は植田総裁が「利上げは急がない」といった姿勢を見せてきました。「日米金利差は思ったほど急激には縮小しない」といった見立てもできそうな気がします。

FOMC会合を終えたことで、3人のメンバーによる発言がありました。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁はCNBCの番組で、「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」と説明し、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」と述べ、パウエル議長の「利下げは急がない」とのスタンスに符合しています。シカゴ連銀のグールズビー総裁は、「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」と、シカゴのイベントで述べています。また、アトランタ連銀のボスティック総裁は、「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」と述べていました。先週の会合で、50bpの利下げに対して唯一反対票を投じたボウマン理事に近い認識を持っていることが確認された格好です。

本日のドル円は142円70銭〜144円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 --------
9/23 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 --------
9/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 --------
9/20 植田・日銀総裁 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 ドル円は141円台後半から143円台に反発。
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和