今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円145円台を示現」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は145円台に上昇。東京と欧州で145円台まで上昇し、その後一旦売られたが、NYでは145円22銭まで買われる。FRBによる大幅利下げ観測がやや後退。
  • ユーロドルは反落。ドル高が進んだことで1.1126まで売られる。
  • 株式市場では3指数が揃って上昇。S&P500は4日連続で最高値を更新。
  • 債券は小幅に売られ、長期金利は3.79%台に上昇。
  • 金は7日続伸し、一時は2700ドル台に乗せる。原油はサウジが増産に踏み切るとの報道に大幅続落。
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4−6月GDP(確定値) → 3.0%
新規失業保険申請件数 → 21.8万件
8月耐久財受注 → 0.0%
8月中古住宅販売保留指数 → 0.6%
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ドル/円 144.11 〜 145.22
ユーロ/ドル 1.1126 〜 1.1189
ユーロ/円 160.70 〜 161.91
NYダウ +260.36 → 42,175.11
GOLD +10.20 → 2,694.90ドル
WTI −2.02 → 67.67ドル
米10年国債 +0.011 → 3.796%

本日の注目イベント

  • 日 9月東京都区部消費者物価指数
  • 日 7月景気先行指数(CI)(改定値)
  • 日 7月景気一致指数(CI)(改定値)
  • 日 自民党総裁選投開票
  • 独 独9月雇用統計
  • 欧 ユーロ圏9月消費者信頼感(確定値)
  • 米 8月個人所得
  • 米 8月個人支出
  • 米 8月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 8月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 8月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 8月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 9月ミシガン大学消費者マインド(確定値)

本日のコメント

ドル円は昨日の東京時間昼過ぎに145円台に乗せ、145円04銭近辺までドル高に振れました。昨日のコメントでも触れましたが、日経平均株価が大きく上昇したことが、円売りにつながった面もあったかと思われます。日経平均株価は1000円を超える上昇を見せ、結局この日の高値引けでした。世界的に金融緩和が進行する中、米国株が一足早く最高値を更新し、出遅れ気味の日本株にも再び上昇傾向が見られるようです。ドル円は欧州でも145円台に乗せ、NYのオープンにかけては144円台前半まで一旦売られましたが、その後ドルは再び買われ145円22銭までドル高が進みました。GDP確定値が安定していたことや、失業保険申請件数が減少していたことで大幅な金融緩和観測がやや後退したことがドル買いにつながりました。

イエレン財務長官はCNBCとのインタビューで、米国のインフレは十分抑制されているかと問われ、「その通りだ」と答え、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」と述べていました。今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが、「それはFOMCが決めることだ」と答えています。また、為替レートをモニターしているかとの質問には「もちろん、ドルの価値を観察している」と答えた上で、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」と指摘しています。イエレン氏はこれまでも「介入はまれであるべき」といった持論を述べてきましたが、「金利差」という言葉を引用したことは、ドル円で円安が大きく進行したことを念頭に置いた発言かと思われます。

イスラエルのネタニヤフ首相がNYに入り、国連総会で演説を行う予定です。ネタニヤフ氏のヒズボラに対する敵意は日増しに高まり、NYでも「攻撃を続ける」と明言しています。そのためレバノンではイスラエルの空爆によりすでに600人を超える死者が出ており、「ネタニヤフ戦争」という言葉も使われています。これに対して、米国はじめ主要国が3週間の停戦を実現しようと仲介していますが、完全に無視されている状況です。バイデン大統領も非難の声をあげていますが、もはや何の効果もなく、ネタニヤフ氏の暴走を制御できないようです。ネタニヤフ氏は本日国連で演説を行う予定ですが、同氏を批判する声を避けることは出来ないようです。ハマスからヒズボラへと攻撃目標を変えてきたイスラエルの無差別殺戮は、イランも巻き込み「第5次中東戦争」の様相を呈してきました。

もう一つの懸念材料であるウクライナ問題では、同国のゼレンスキー大統領への批判を強めていたトランプ氏が、本日NYにあるトランプタワーでゼレンスキー氏と会談を行うようです。トランプ氏はかねて、自身が大統領に再選されれば、ゼレンスキー氏をロシアのプーチン氏との交渉の席に着かせると豪語していました。どのような会談になるのか、こちらにも注目したいと思います。

ドル円は、ローソク足が「一目均衡表の雲」(日足)には依然として距離があるものの、「基準線」を完全に上抜けしてきました。短期的な動きを示す「転換線」も上向きに変化しており、この線が「基準線」を超えれば、「好転」が実現し、早期のドル上昇シグナルが点灯します。ただ、「転換線」は過去9日間の真ん中のレートになるため、この水準(143円40銭近辺)を上抜けするには、仮にスポットレートが横ばいであっても、少なくともあと2日はかかります。もっとも、スポットレートが一気に147円台辺りまで上昇すれば、それも有り得ますが、現時点ではまだ簡単ではないようです。

本日のドル円は144円〜145円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/26 イエレン・財務長官 (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 --------
9/25 クーグラー・FRB理事 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 --------
9/24 ボウマン・FRB理事 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 --------
9/23 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 --------
9/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 --------
9/20 植田・日銀総裁 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 ドル円は141円台後半から143円台に反発。
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和