今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「パウエル議長、利下げは急がない」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 先週末の流れを引き継ぎ、ドル円は昨日の東京時間午後には142円を割り込み、141円65銭前後まで下落。NYでは一転してドルが買われ、パウエル議長の発言もドル買いにつながり143円92銭まで上昇。
  • ユーロドルは小幅に下落。
  • 株式市場はパウエル議長の「利下げは急がない」との発言にもかかわらず3指数は買われた。ダウとS&P500は最高値を更新。
  • 債券は反落し長期金利は3.78%台へと上昇。
  • 金は続落。原油は横ばい。
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9月シカゴ購買部協会景気 → 46.6
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ドル/円 142.57 〜 143.92
ユーロ/ドル 1.1114 〜 1.1201
ユーロ/円 159.22 〜 160.13
NYダウ +17.51 → 42,330.15
GOLD −8.70 → 2,659.40ドル
WTI −0.01 → 68.17ドル
米10年国債 +0.030 → 3.781%

本日の注目イベント

  • 豪 豪8月住宅建設許可件数
  • 豪 豪8月小売売上高
  • 日 11月失業率
  • 日 7ー9月期日銀短観・大企業製造業業況判断
  • 独 独9月製造業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏9月製造業PMI(改定値)
  • 英 英9月製造業PMI(改定値)
  • 米 9月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
  • 米 9月ISM製造業景況指数
  • 米 8月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
  • 米 9月自動車販売台数
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総、クックFRB理事と対談。
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、コリンズ・ボストン連銀総裁、パネル討論に参加
  • 米 副大統候補討論会

本日のコメント

ドル円は昨日も大きな値幅を伴う荒っぽい動きでした。先週末の石破自民党新総裁選出の流れを引き継ぎ、昨日の東京時間午前中は比較的小動きのなか142円台を維持していましたが、午後から日経平均株価が下げ幅を拡大したことに伴い、142円を割り込み、一時は141円65銭前後までドル安が進みました。このままの流れで行くと、NYでは141円テストもあるのではないかと予想していましたが、欧州市場に入るとジリジリとドルが買われ、NYではパウエル議長の発言もあり、144円に近い水準までドルが買われています。先週末の後半の144円台から、自民党総裁選で高市氏がトップで決選投票に進んだことで146円台半ばまでドルが急伸しましたが、昨日の東京では141円台半ばまで売られ、そしてNYではほぼ144円台と、シーソーのように上下しているドル円です。今夜は「8月のJOLTS」もあり、さらに週末には最も重要な「9月の雇用統計」が控えています。この後も、さらに動きが活発になる可能性もあり、予断を許しません。

パウエル議長はナッシュビルで開かれた全米企業エコノミスト協会(NABE)の年次総会で講演を行い、「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」と話し、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」と続けました。また、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」と述べています。さらに、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」(ブルームバーグ)と語り、先のFOMC会合で50bpの大幅利下げを決めた後の会見での発言とほぼ同じ内容でした。要は、今後のデータ次第であり、とりわけ減速傾向を示している労働市場のデータ次第だということです。27日に発表されたPCE統計でもインフレが落ち着いて来ていることを示唆しており、次回FOMC会合でも「労働市場の動向」一本に絞られそうです。

この日は他のFOMCメンバーの発言もあり、ややニュアンスが異なるものもありました。アトランタ連銀のボスティック総裁はロイター通信とのインタビューで、「基本シナリオ通りであれば、向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」と説明しています。シカゴ連銀のグールズビー総裁もFOXビジネスとのインタビューで、9月の利下げについて、「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」と述べています。また、11月のFOMC会合で支持する利下げ幅については言及を控えていましたが、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」と強調しています。

イスラエルはレバノン南部のイスラエル国境での空爆から、30日にはレバノン中心部への空爆も実施しました。またイスラエル軍の特殊部隊がレバノン南部で標的を絞った小規模な作戦を実行し、地上戦に向けた準備を行っているとの報道もあります。イスラエルのガラント国防相は、「われわれは持てる力を全て使う」と述べており、ネタニヤフ首相も「われわれはまさに存亡を賭けた戦争のさなかにある」と閣議で発言しています。バイデン政権は、ヒズボラ壊滅を目指すといった米国が当初懸念していたような大規模な侵攻にはならないと見ており、イスラエルに対して、大規模な作戦を展開しないよう説得を試みているようです。

本日のドル円は142円50銭〜144円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/30 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 --------
9/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 --------
9/30 パウエル・FRB議長 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。
9/26 イエレン・財務長官 (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 --------
9/25 クーグラー・FRB理事 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 --------
9/24 ボウマン・FRB理事 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 --------
9/23 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 --------
9/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 --------
9/20 植田・日銀総裁 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 ドル円は141円台後半から143円台に反発。
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
8/22 コリンズ・ボストン連銀総裁 「漸進的で整然としたペースでの利下げが適切になりそうだ」、「どのようなペースが理にかなっているかは、データが示すだろう。あらかじめ設定された道筋はない」、「全般的に健全な状態にあると考えられる。この状態を維持することは、インフレを鈍化させるという意味において重要だ」 債券が売られ、ドル円は小幅に上昇。
8/22 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「9月に金利引き下げのプロセスを開始する必要がある」、「整然とした利下げを開始する必要がある。今のところ、私は25か50かの陣営には入っていない。あと数週間のデータを確認する必要がある」 --------
8/20 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示されれば、金融政策が過度に抑制的にならないようフェデラルファンド(FF)金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「ここ数カ月にインフレ率の引き下げでいくらか前進したが、地政学的情勢の緊迫化や追加的な財政刺激措置、移民流入による住宅需要の増加を要因に、上方向のリスクは残っている」 --------
8/19 デーリー・SF連銀総裁 「最近の米経済データを受けてインフレは制御されており、政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めたが、米経済は緊急を要する状態にはない」 --------
8/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「レイオフが低水準にとどまり、失業保険統計も顕著な悪化を示唆していないことから、0.25ポイントを上回る規模での段階的な利下げを行う理由はないと考える」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 私の観点からすると、金融当局の2大責務に対するリスクはよりバランスが取れているようだ。従って、今後の会合に向けて、景気に対して緩やかに抑制的な政策への調整が適切となる時期が近づいているのかもしれない」 --------
8/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在の政策金利は非常に景気抑制的であり、この金融スタンスは経済が過熱している場合にのみ適切だ」 --------
8/5 デーリー・SF連銀総裁 「今後四半期に政策調整が必要になるだろう」と述べ、「当局は現在、労働市場が減速しつつあることを確認した。過度に減速させて景気下降につながらないようにするのが極めて重要だ」 --------
8/5 シーゲル・ペンシルベニア大学教授 「FOMCは75bpの緊急利下げを実施すべきだ。その上で、9月会合でも同じく75bpの利下げを追加するのが適切だ」 --------
8/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「単月の数字に過剰反応したくない」、「失業率が中立の水準よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付けられている責務の、もう一方に痛みが及んでくることになる」、「状況が利下げを正当化するとき、1回の引き下げにとどまらない傾向がある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和