今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円再び146円台半ばに」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大幅に続伸。東京時間夕方、石破首相の発言が伝わり、144円台半ばまで上昇。加えてNYではADP雇用者数が予想を上回ったことで146円52銭までドル高に。
  • ユーロドルはドルが買われたことでやや水準を切り下げる。
  • 株式市場では中東情勢の悪化にもかかわらず3指数は小幅に上昇。
  • 債券は反落。長期金利は3.78%台に上昇。
  • 金は反落。原油は3日続伸。
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9月ADP雇用者数 → 14.3万人
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ドル/円 144.69 〜 146.52
ユーロ/ドル 1.1033 〜 1.1076
ユーロ/円 160.03 〜 161.87
NYダウ +39.55 → 42,196.52
GOLD −20.60 → 2,669.70ドル
WTI +0.27 → 70.10ドル
米10年国債 +0.049 → 3.781%

本日の注目イベント

  • 豪 豪8月貿易収支
  • 日 野口日銀審議委員、経済金融懇談会に出席(長崎)
  • 独 独9月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏8月卸売物価指数
  • 欧 ユーロ圏9月サービス業PMI(改定値)
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 9月ISM非製造業景況指数
  • 米 8月製造業受注
  • 米 9月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 9月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁と対談

本日のコメント

ドル円は先週27日(金)に続き、再び146円台半ばまで上昇しました。一時は146円52銭まで買われ、先週末、自民党総裁選の第1回投票で高市氏がトップで支持され、決選投票に進む事がきまった、いわゆる「高市トレード」で付けた146円48銭をわずかですが上回りました。

昨日の夕方5時、新たに首相に就任した石破首相は、官邸で植田日銀総裁と初めての会談を行いました。会談後、石破首相は、「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」と述べ、個人的だとしながらも追加利上げには否定的な見方を示しました。高市氏は「利上げはあほやと思う」などと発言したこともあり、石破氏はその対極にいると見られていただけに、首相の口から利上げに否定的な発言が出たことで市場は敏感に反応し、円売りで攻めたようです。海外勢もこの発言にドル買い円売りを活発化させていました。

NYではさらに「9月のADP雇用者数」が発表され、これも円売りに拍車をかけました。結果は市場予想の「12.5万人」に対して、「14.3万人」でした。さらに8月分も速報値の「9.9万人」から「10.3万人」に上方修正されています。民間の雇用統計である「ADP雇用者数」は8月まで5カ月連続で伸びが鈍化しており、特に8月は2023年3月以来の弱い数字でした。これが金融当局者に「労働市場の減速傾向」を印象付け、先月のFOMC会合で50bpという大幅利下げにつながった側面もあったと考えています。9月の雇用の伸びは業種を超えて広がっており、特に娯楽・ホスピタリティと建設で目立っており、雇用が削減されたのは情報分野だけでした。明日の「雇用統計」とは異なる結果が出ることは頻繁に起きますが、今回の数字の上振れに、明日の数字にもバイアスがかかるかもしれません。

イスラエルがレバノン南部で地上侵攻を開始したことで、イランはイスラエルに200発ものミサイルで攻撃しましたが、イスラエル当局は2日、親イラン民兵組織ヒズボラとの衝突でイスラエル軍兵士8人が死亡したと発表しました。地上侵攻でイスラエル軍に死者が出たのは初めてのことになります。イスラエルの野党指導者は「イランは甚大、かつ重い代償を支払わなければならない」と非難しています。これに対してバイデン大統領は、イラン核施設への攻撃を米国が支持するかとの質問に「ノーだ」と答え、G7がイランに対する制裁を協議していることを明らかにしました。「イランは大きな過ちを犯した。その代償を支払うことになるだろう」と述べているネタニヤフ首相が、今後どのような報復措置に出るのか、中東情勢はさら深刻化する気配です。

この欄で何度も触れているように、11月のFOMCでの利下げ幅が「25bp」になるのか、「50bp」になるのかは、今後の労働市場の動向が極めて重要です。昨日の「ADP雇用者数」が上振れしたことで、大幅利下げ観測はやや後退しつつありますが、決め手になるのはやはり明日の「雇用統計」です。9月のFOMC会合で50bpの利下げ方針を支持していた、リッチモンド連銀のバーキン総裁は2日、「インフレとの闘いに勝利したとはまだ言い難い状況が続いている」と述べ、「インフレについてはまだやるべきことがある」と、慎重な見方を示しています。11月のFOMCまでは、まだ2回の「消費者物価指数」と2回の「雇用統計」を確認できます。

ドル円は「2時間足」、「4時間足」など、短期の全ての雲が上抜けし、「日足」の雲の下限に接触している状況です。この雲を上抜けするには少なくとも150円を超える必要がありますが、ここから上値は簡単ではないように思われますが、一方でテクニカル的には上昇へのきっかけを模索している状況と理解できます。「日足のMACD」が、「ゼロの軸」に急接近していることに注目しています。

本日のドル円は145円50銭〜147円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
10/2 石破首相 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。
9/30 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 --------
9/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 --------
9/30 パウエル・FRB議長 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。
9/26 イエレン・財務長官 (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 --------
9/25 クーグラー・FRB理事 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 --------
9/24 ボウマン・FRB理事 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 --------
9/23 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 --------
9/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 --------
9/20 植田・日銀総裁 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 ドル円は141円台後半から143円台に反発。
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和