今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円149円台に。雇用統計上振れ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 9月の米雇用統計を受けドル円は急伸。一時は149円01銭まで買われ、約1カ月半ぶりのドル高を示現。失業率、雇用者数ともに予想より改善。
  • ユーロドルでもドル高が進み、1.0962までユーロが下落。
  • 株式市場は3指数が揃って上昇。ダウは341ドル買われ最高値を更新。ナスダックも1万8000ポイントの大台を回復。
  • 債券は大幅に続落し、長期金利は3.96%台へと大きく上昇。
  • 金は反落。原油は4日続伸し74ドル台に。
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9月失業率 → 4.1%
9月非農業部門雇用者数 → 25.4万人
9月平均時給 (前月比) → 0.4%
9月平均時給 (前年比) → 3.8%
9月労働参加率 → 62.7%
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ドル/円 146.54 〜 149.01
ユーロ/ドル 1.0952 〜 1.1033
ユーロ/円 161.36 〜 163.37
NYダウ +341.16 → 42,352.75
GOLD −11.40 → 2,667.80ドル
WTI +0.67 → 74.38ドル
米10年国債 +0.121 → 3.967%

本日の注目イベント

  • 日 8月景気先行指数(CI)(速報値)
  • 日 8月景気一致指数(CI)(速報値)
  • 日 8月国際収支・経常収支
  • 中 中国 9月外貨準備高
  • 独 独8月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏8月小売売上高
  • 米 8月消費者信用残高
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、質疑応答に参加
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁イベントで司会
  • 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演

本日のコメント

「25.4万人の増加」・・・・・。9月の雇用統計には驚きました。8月分も「14.2万人」から「15.9万人」に、7月分も「8.9万人」から「14.4万人」にそれぞれ上方修正されました。ここ数カ月の労働市場の減速は、一体何だったんでしょうか?これで、直近3カ月平均でみても「18.5万人」と、「減速」どころか、むしろ「好調」とさえ言える状況です。失業率も予想の「4.3%」から「4.1%」に改善しており、これだけの「好調」な結果を受けたことから、債券は大きく売られ、長期金利は3.96%台まで上昇。ドル円も買われ、発表前の146円台半ばから一時は8月16日以来となる149円台に乗せる場面もありました。金利高に、本来は売られるはずの株式も3指数が揃って買われました。金利高よりも、米景気の堅調さが材料となり、ソフトランディングの可能性が高まったことを好感した形でした。

この結果を受け、OIS市場では、11月のFOMC会合で「50bp」の利下げが実施される確率が「ゼロ」になり、今後消費者物価指数や10月の雇用統計の結果を確認できる余地は残っていますが、「25bp」の利下げでほぼ決まりかと思われます。米ゴールドマンの投資責任者は「この日のデータは満塁ホームランだった。雇用者数は力強く、過去の数字が上方修正され、失業率は低下した。経済は堅調にポストシーズンに向っている。あらゆる面で予想を上回り、米金融当局はバットを取り出しながらにっこりしているに違いない」とコメントしていました。個人的には11月の「50bp」を下方修正し、11月と12月のFOMC会合では、それぞれ「25bp」の利下げがあると見直します。9月の雇用統計の結果を受け、シカゴ連銀のグールズビー総裁はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「それでもなお、中央銀行として、単月の統計に過剰に反応することは望ましくないと私は考えている」と述べ、「雇用もインフレ率も現在は良好な状態にある。金融当局者はそれが続くようできる限りのことをすべきだ。期待値に目を向けると、インフレ率が目標の2%を下回る可能性を示す兆候がいくつも見られる。われわれは、その点にも留意したい」と話しています。また、サマーズ元財務長官はさらにタカ派寄りの発言を行い、「今になって思い返せば、9月の50ベーシスポイントの利下げは間違いだったと言える。ただ深刻な結果を招くようなものではない」と投稿しています。(ブルームバーグ)

この土日は、イスラエルに関するニュースが多くありました。極め付きは昨日の「NHKスペシャル」でした。イスラエルのハマスへの過剰な攻撃を非難するイスラエル人が、厳しい抵抗を受けたり、国際法上違法とされているガザへ入植したイスラエル人のガザでの暴挙が映し出されていました。国民も「イスラルが善で、それ以外は悪だ」といった考え方に洗脳されている風にも思える内容でした。今日7日は、イスラム組織ハマスによるイスラエル急襲から1年を迎えます。イスラエルはパレスチナ自治区ガザ北部に再び部隊を送り込み、攻撃を激化させています。フランスのマクロン大統領は、イスラエルの地上侵攻を受けるレバノンを支援するため、「イスラエルへの武器の供与をやめることが重要だ」と述べていますが、これに対してはネタニヤフ首相は、「イスラエルはフランスの支援がなくても勝つ。恥を知れ」と猛反発しています。イスラエルへの支援を続ける米国と欧州諸国との間にも、イスラエルを巡り「亀裂」が入る可能性がありそうです。

ドル円は140−145円のレンジから、145−150円の新しいレンジに入った可能性があります。市場が米経済指標に非常に敏感になっているため、今後ネガティブな結果が出れば、一気にドル売りが再燃することも考えられますが、「ドルが下がったら買いたい」といった注文も出始めています。ドル円が140円を割り込んだ8月16日頃とは、市場のセンチメントが大きく異なってきました。ただ、注意したいのは150円台を超える水準が続くようだと、今度は日銀に追加利上げ余地が出てきます。現在の日銀の金融政策の判断材料の一つに「為替水準」は、かなり大きな比重を占めていると思われます。

本日のドル円は148円〜150円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
10/3 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 --------
10/2 石破首相 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。
9/30 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 --------
9/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 --------
9/30 パウエル・FRB議長 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。
9/26 イエレン・財務長官 (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 --------
9/25 クーグラー・FRB理事 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 --------
9/24 ボウマン・FRB理事 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 --------
9/23 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 --------
9/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 --------
9/20 植田・日銀総裁 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 ドル円は141円台後半から143円台に反発。
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和