「米長期金利4%台に乗せる」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は反落。先週は一気に149円台まで上昇したこともあり、この日は米長期金利が上昇したがドル売りが優勢に。147円83銭まで売られ、ドル高も一服。
- ユーロドルは小動き。1.09台半ばから後半でもみ合う。
- 株式市場は3指数が揃って反落。地政学的リスクの高まりや金利上昇に、ダウは400ドルに迫る下落。
- 債券は続落。先週末の流れを受け、FRBの大幅利下げ観測が後退したことで債券売りが止まらず。長期金利は8月8日以来となる4.02%に上昇。
- 金は小幅ながら3日続落。原油はイスラエルがイランの石油施設を攻撃するとの観測もあり大幅に続伸。
8月消費者信用残高 → 8.929b
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ドル/円 | 147.83 〜 148.27 |
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ユーロ/ドル | 1.0966 〜 1.0987 |
ユーロ/円 | 162.41 〜 162.77 |
NYダウ | −398.51 → 41,754.21 |
GOLD | −1.80 → 2,666.00ドル |
WTI | +2.76 → 77.14ドル |
米10年国債 | +0.058 → 4.026% |
本日の注目イベント
- 豪 豪10月ウエストパック消費者信頼感指数
- 豪 豪9月NAB企業景況感指数
- 豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
- 日 8月国際収支・経常収支
- 日 9月景気ウオッチャー調査
- 独 独8月貿易収支
- 独 独8月鉱工業生産
- 米 8月貿易収支
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
- 米 コリンズ・ボストン連銀総裁講演
- 米 クーグラー・FRB理事講演
- 加 カナダ8月貿易収支
本日のコメント
米長期金利が8月8日以来となる4%台に乗せています。先週末の雇用統計の上振れで、次回FOMC会合での大幅利下げの可能性がほぼなくなったとの見立てから債券が売られ、10年債利回りは4.02%台で引けました。金融政策の影響を受けやすい2年債はさらに売られ、利回りは先週末比7bp以上も上昇し、3.995%で引けています。通常、米金利の上昇はドル円が上昇する大きな要因ですが、この日は全く機能せず、ドル円は147円台後半まで売られています。三村財務官や加藤財務相が円安けん制発言を行ったこともありますが、先週はほぼ一本調子で円が売られたこともあり、利益を確定する動きや、145円を大きく上回ったことで実需のドル売りも相当あったようです。
石破首相は昨日、衆議院の代表質問で「貯蓄から投資への流れを引き続き推進することが重要だ」と述べ、金融所得課税の強化については「現時点で具体的に検討することは考えていない」と明言しました。また、政府・日銀は共同声明に沿って引き続き連携することを確認し、「現時点で、日銀との共同声明を見直すことは考えていない」ことも説明していました。石破首相は、所得が1億円を超えると税負担が実質的に軽減される、いわゆる「1億円の壁」問題について、金融課税を強化すべきとの持論を述べていましたが、総選挙もあるせいか、現時点では強化するつもりはないようです。
WTI原油価格が前日比2ドル76セント(3.7%)上昇し、北海ブレントも8月以来の高値である1バレル80ドルを超えてきました。中東での緊張が激化し、イスラエルがイランの石油施設を攻撃するとの観測が背景になっています。ハマスによるイスラエル奇襲攻撃から1年が過ぎましたが、戦闘はますます激化しています。イスラエルは、これまではハマスを攻撃することに注力してきましたが、今やレバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派に加えて、イランとも交戦している状況です。この日はハマスがテルアビブに向けて複数のロケット弾を発射しており、イスラエルはレバノン南部で激しい攻撃を実施し、ヒズボラはイスラエル北部に135発のロケット弾を打込んだとされています。双方で民間人を中心に死傷者が多く出ており、パレスチナガザ地区ではすでに4万2000人もの死者が出ています。ネタニヤフ首相はそれでも「攻撃は続ける」と述べており、暴走は止まりそうもありません。ここは、やはり米国がイスラエルへの武器供与を即刻中止するとともに、ネタニヤフ政権に対し、戦争中止に向けた圧力を強くかける以外に戦争をやめさせることはできないように思います。
ドル円は145〜150円のレンジに入った可能性が高いと思われます。日足チャートではローソク足が雲の中に入り、ちょうど雲の中間点にいるようです。雲の上限である「先行スパン2」は、現在151円82銭近辺に位置しており、ここを上回れば「雲抜け」が完成することになります。MACDでも日足では「MACD」と「シグナル」が「ゼロの軸」を超えるかどうかという微妙な位置におり、こちらも判断に迷うところです。
本日のドル円は147円40銭〜149円程度を予想します。
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明日の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせていただきます。ご愛読者の皆様にはご不便をお掛け致しますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
9/30 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 | -------- |
9/30 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 | -------- |
9/30 | パウエル・FRB議長 | 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 | ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。 |
9/26 | イエレン・財務長官 | (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 | -------- |
9/25 | クーグラー・FRB理事 | 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 | -------- |
9/24 | ボウマン・FRB理事 | 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 | -------- |
9/23 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 | -------- |
9/23 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 | -------- |
9/23 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 | -------- |
9/20 | 植田・日銀総裁 | 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 | ドル円は141円台後半から143円台に反発。 |
9/19 | イエレン・財務長官 | 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 | -------- |
9/18 | パウエル議長 | 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 | ドル円が反発し、株と債券は売られる。 |
9/18 | FOMC声明文 | 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 | -------- |
9/12 | ラガルド・ECB総裁 | 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 | ユーロドルは小幅に買われる。 |
9/6 | サマーズ・元財務長官 | 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える | -------- |
9/6 | イエレン・財務長官 | 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 | -------- |
9/4 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書