「米9月のCPI予想を上回る」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は反落。東京時間には149円55銭まで買われる場面もあったが、NYでは強弱両方の指標が発表され大きく上下した。結局ドルが売られ148円24銭前後まで下落。
- ユーロドルは1.0900まで下げる場面があったが、大台は切らず、1.09台前半から半ばで推移。
- 株式市場は3指数が揃って反落したものの、下げ幅は限定的だった。
- 債券は朝方売られ、長期金利は一時4.1%台まで上昇。その後債券が買われ、長期金利は前日比小幅に低下。
- 金と原油は揃って反発。
9月消費者物価指数 → 0.2%(前月比)
新規失業保険申請件数 → 25.8万件
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ドル/円 | 148.24 〜 149.45 |
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ユーロ/ドル | 1.0900 〜 1.0955 |
ユーロ/円 | 162.17 〜 162.98 |
NYダウ | −57.88 → 42454.12ドル |
GOLD | +13.30 → 2,639.30ドル |
WTI | +2.61 → 75.85ドル |
米10年国債 | −0.012 → 4.061% |
本日の注目イベント
- 独 独9月消費者物価指数(速報値)
- 英 英8月鉱工業生産
- 英 英8月貿易収支
- 米 9月生産者物価指数
- 米 10月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
- 米 企業決算 → ウェルズファーゴ、JPモルガン、ブラックロック
- 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁講演
- 米 ローガン・ダラス連銀総裁、パネル討論に参加
本日のコメント
昨日の東京時間ではドル円は買われ、一時149円55銭まで上昇する場面もありましたが、結局150円には届かず反落しました。NYでは朝方、発表された経済指標が強弱まちまちであったことから、売り買いが交錯し市場の動きも方向性を欠きましたが、ドル円はこれまで継続して買われていたこもとあり、高値から1円を超える148円台前半まで売られています。米長期金利が一時4.1%台まで上昇したことで149円台まで買われましたが、金利の低下に沿うようにドルが売られる結果になっています。結局、米長期金利は前日比低下して引けています。
米消費者物価指数(CPI)、これまで順調に低下傾向を見せていましたが、9月は市場予想を上回り、これがドル買いを誘いました。総合では前月比で「0.2%」(予想は0.1%)、前年同月比では「2.4%」(予想は2.3%)でした。またコア指数でも、前月比で「0.3%」(予想は0.2%)、前年同月比は「3.3%」(予想は3.2%)と、何れも市場予想を上回り、今後の金融緩和政策継続に一石を投じる格好になりました。この結果を受けて、アトランタ連銀のポスティック総裁は、「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」とウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで述べています。11月会合では25bpの利下げが確実と読んでいますが、CPIの結果を受けたとは言え、ポスティック総裁の発言はここ最近では「最もタカ派寄り」の発言でした。総裁は、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」と続けていました。
同時刻に発表された「失業保険申請件数」は、その真逆の結果でした。前の週より3万3000件増え「25.8万件」と、2023年8月以来およそ1年ぶりの高水準(ブルームバーグ)でした。失業保険を申請した人が多いということは、労働市場の減速を示すことから「FRBによる大幅利下げが正当化される」との見方からドル売りにつながりますが、大型のハリケーン「ヘリーン」の影響を受けた結果との見方もあり、もう少し長いスパンで見る必要がありそうです。またさらに、大型のハリケーン「ミルトン」によりフロリダ州では大きな被害が出ており、死者も少なくとも10人を超えていると報告されています。市場からも、「雇用関連のデータとCPIのどちらがより重要か、全体として判断するのは難しい。しかし、今日は間違いなくCPIだ。CPIは予想を若干上回った。特にコアインフレ率が上昇した。ただ、市場や米金融当局を心配させるほどではないだろう。次回のFOMC会合までにデータがさらに発表されるが、今回の統計で0.25ポイントの利下げが適切だとの見方が強まるだろう」といった声が聞かれました。
ポスティック総裁はタカ派寄りでしたが、他のFOMCメンバーはほぼニュートラルでした。NY連銀のウィリアムズ総裁は、「私の現在の経済予測に基づくと、この先、金融政策スタンスは時間をかけてより中立的にするプロセスを続けることが適切になろう」と発言し、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「間違いなく正しい方向に進んでいる」と話ながらも「勝利宣言はしない」と述べています。また、シカゴ連銀のグールズビー総裁は今回のCPIを受けて、「過度に懸念していない。米金融当局は、もはや物価上昇圧力だけを気にすることはない」と話しています。
個人的には「利下げ見送り」という選択肢はないと考えていますが、11月会合までには、CPIは確認できませんが、まだ雇用統計と求人件数(JOLTS)といった重要な労働関係の数字は見ることができます。
本日のドル円は147円80銭〜149円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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10/10 | ポスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
9/30 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 | -------- |
9/30 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 | -------- |
9/30 | パウエル・FRB議長 | 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 | ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。 |
9/26 | イエレン・財務長官 | (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 | -------- |
9/25 | クーグラー・FRB理事 | 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 | -------- |
9/24 | ボウマン・FRB理事 | 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 | -------- |
9/23 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 | -------- |
9/23 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 | -------- |
9/23 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 | -------- |
9/20 | 植田・日銀総裁 | 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 | ドル円は141円台後半から143円台に反発。 |
9/19 | イエレン・財務長官 | 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 | -------- |
9/18 | パウエル議長 | 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 | ドル円が反発し、株と債券は売られる。 |
9/18 | FOMC声明文 | 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 | -------- |
9/12 | ラガルド・ECB総裁 | 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 | ユーロドルは小幅に買われる。 |
9/6 | サマーズ・元財務長官 | 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える | -------- |
9/6 | イエレン・財務長官 | 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 | -------- |
9/4 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書