「ドル高、株高が続く」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は続伸。米金利が高水準にあり、株価も上昇したことで、低金利の円が売られる。ドル円は149円98銭まで買われ、150円に迫る。
- ドルが買われたことで、ユーロドルはおよそ2カ月ぶりに1.0888まで下落。
- 株式市場は11日に続き、この日も3指数が揃って上昇。ダウは201ドル上昇し4万3000ドルの大台に乗せ、S&P500と共に連日で最高値を更新。
- 債券市場は休場。長期金利は先週末に4.1%台に乗せる。
- 金と原油は売られる。
ドル/円 | 149.63 〜 149.98 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.0888 〜 1.0927 |
ユーロ/円 | 163.19 〜 163.60 |
NYダウ | +201.36 → 43,065.22 |
GOLD | −10.70 → 2,665.60ドル |
WTI | −1.73 → 73.83ドル |
米10年国債 | ------ → 4.100% |
本日の注目イベント
- 日 8月鉱工業生産(確定値)
- 日 衆院選公示
- 独 独10月ZEW景況感指数
- 欧 ユーロ圏8月鉱工業生産
- 英 英9月失業率
- 英 英ILO失業率(6−8月)
- 米 10月NY連銀製造業景況指数
- 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、基調講演
- 米 企業決算 → ジョンソン・エンド・ジョンソン、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン、シティーグループ
- 加 カナダ9月消費者物価指数
本日のコメント
昨日のNYでは「コロンブスデー」のため、債券市場は休みでしたが、株式市場では先週末に続き株価が大きく上昇。ダウとS&P500が連日で最高値を更新し、ダウは初めて4万3000ドルの大台に乗せました。株価の上昇で、リスクオンが強まり円が売られ、ドル円は149円98銭まで買われています。いよいよ150円が視野に入ってきたようです。株価の上昇もありますが、米長期金利も上昇傾向が続き、先週末には4.1%台まで上昇し、こちらもドル円をサポートする格好になっています。
振り返れば、7月以降米国では労働市場の急激な減速が示唆され、これがFRBの大幅利下げ観測を誘いましたが、4日に発表された「9月の雇用統計」では、非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上回り、さらに8月分と7月分も速報値から大きく上方修正されたことで、「労働市場は思ったほど悪くはない」との見方が広がりました。さらに先週10日に発表された「9月の消費者物価指数」が、総合、コアともに予想を上回り、米国のインフレはほぼ収束しかけていたとみられていましたが、「インフレ再燃懸念」が再び意識される展開になりました。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が下で述べているように、労働市場とインフレが今後どのように推移するのか、この2つのデータがどのように変化するのかで、ドル円の位置も決まってきそうです。ドル円は勢い良く「雲の中」を上昇中です。雲を抜けるには151円台後半まで上昇する必要があります。先ずは150円の大台をテストし、その水準を抜けるようなら、7月に記録した161円95銭とその後下落に転じ、9月に記録した139円57銭の下落幅の「半値戻し」にあたる「150円76銭」辺りが次のメドとみています。
イスラエルの、ガザのハマスとレバノンのヒズボラに対する攻撃はさらに激化してきました。ネタニヤフ首相は14日、ヒズボラの無人機攻撃でイスラエル兵士4人が死亡したことを受け、「われわれはベイルートを含むレバノンのあらゆる場所で、ヒズボラを容赦なく攻撃し続ける」と述べています。このような状況の中、米国防総省は、イランによる攻撃の可能性に備えて、イスラエルに地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備するとともに、関連部隊を派遣すると発表しています。バイデン大統領は、米国がTHAADを配備する理由を記者団に問われ、「イスラエルを守るため」とだけ答えていました。
FRBのウォラー理事はカリフォルニア州での講演で、「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」と述べた上で、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」と発言しています。また、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁もブエノスアイレスで開催されたアルゼンチン中銀の会合で、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」と述べ、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」と語っています。
本日のドル円は149円〜150円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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10/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 | -------- |
10/14 | ウォラー・FRB理事 | 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 | -------- |
10/10 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
9/30 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 | -------- |
9/30 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 | -------- |
9/30 | パウエル・FRB議長 | 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 | ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。 |
9/26 | イエレン・財務長官 | (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 | -------- |
9/25 | クーグラー・FRB理事 | 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 | -------- |
9/24 | ボウマン・FRB理事 | 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 | -------- |
9/23 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 | -------- |
9/23 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 | -------- |
9/23 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 | -------- |
9/20 | 植田・日銀総裁 | 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 | ドル円は141円台後半から143円台に反発。 |
9/19 | イエレン・財務長官 | 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 | -------- |
9/18 | パウエル議長 | 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 | ドル円が反発し、株と債券は売られる。 |
9/18 | FOMC声明文 | 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 | -------- |
9/12 | ラガルド・ECB総裁 | 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 | ユーロドルは小幅に買われる。 |
9/6 | サマーズ・元財務長官 | 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える | -------- |
9/6 | イエレン・財務長官 | 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 | -------- |
9/4 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書