「ドル円再び149円台後半に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は反発し再び149円台後半まで上昇。輸出入物価指数は低下してはいたものの、株価の上昇やトランプ氏の勝利を織り込む動きがドルを押し上げ、149円81銭までドルが買われる。
- ユーロドルは続落。1.0854まで売られ、8月2日以来となる安値を付ける。
- 株式市場では3指数が揃って反発。モルガン・スタンレーの好決算が市場のセンチメントを好転させ株価を押し上げる。ダウは最高値を更新。
- 債券は小幅に続伸。長期金利は4.01%台に低下。
- 金は続伸し、原油は続落。
9月輸入物価指数 → −0.4%
9月輸出物価指数 → −0.7%
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ドル/円 | 149.16 〜 149.81 |
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ユーロ/ドル | 1.0854 〜 1.0901 |
ユーロ/円 | 162.42 〜 162.88 |
NYダウ | +337.28 → 43,077.70 |
GOLD | +12.40 → 2,691.30ドル |
WTI | −0.19 → 70.39ドル |
米10年国債 | −0.020 → 4.012% |
本日の注目イベント
- 豪 豪9月雇用統計
- 日 9月貿易統計
- トルコ トルコ中銀政策金利
- 欧 ユーロ圏8月貿易収支
- 欧 ユーロ圏9月消費者物価指数(改定値)
- 欧 ECB政策金利発表
- 欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
- 米 9月小売売上高
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 10月NAHB住宅市場指数
- 米 9月鉱工業生産
- 米 9月設備稼働率
- 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、イベントで挨拶
- 米 企業決算 → ネットフリックス
本日のコメント
ドル円も株式も連日上下を交互に繰り返しています。ドル円は米金利がやや低下したにもかかわらず、株価の上昇を受け円売りドル買いが優勢となり、再び149円台後半まで上昇しました。明確な方向性は見られないものの、どちらかと言えば上昇したがっているようにも見られます。
米大統領選が近づくなか、ジョージア州では期日前投票が始まっており、今年100歳になるカーター元大統領が郵送で投票を行ったと報じられています。カーター氏は、民主党候補のハリス副大統領に投票するのが生きる目標だと家族らに話しているとのことです。ジミー・カーター氏が今年100歳になったと聞いて、懐かしい思いが蘇りました。筆者が初めてカリフォルニア州、バークレーに研修で訪米したのが1976年。ちょうど10月の初めで、大統領選の年でした。UCバークレーのキャンパスでは連日デモが行われており、学生たちが持つプラカードには一律に「Jimmy Who?」と書かれていました。それほど知名度の低かったカーター氏が現職の大統領であったフォード氏を破って勝利したことはご存知の通りです。カーター氏はハリス氏に投票したようですが、富豪投資家のドラッケンミラー氏は16日のブルームバーグとインタビューで「金融市場は過去12日間で『トランプ氏が勝つと強く確信した』ように見える」とコメントし、「それは銀行株にも暗号資産にも見て取れる」と続けていました。トランプ氏が勝てばハリス氏勝利よりも、よりインフレが進み、米金利が上昇すると予想していると考えられます。
昨日もこの欄でイスラエルに対するバイデン政権の甘い対応について述べましたが、大統領選が迫って来るなか、バイデン大統領もさすがにこのままでは若年層の支持が得られず選挙に負けると感じたのか、イスラエルに対してこれまでとは異なり強気の対応に踏み出しました。ブリンケン国務長官とオースティン国防長官が連名でイスラエルのガラント国防相に書簡を送り、「イスラエルが1カ月以内に人道支援を増やさなかった場合、軍事支援の停止を含む懲罰的措置を取らざるを得ない」と、警告しました。米国によるイスラエルへの軍事支援は24年会計年度(23年10月〜24年9月)で179億ドル(約2兆7千億円)にものぼり、過去最大となっており、「イスラエルが輸入した武器の8割が米国からのものになっている」(日経新聞)そうです。米国がイスラエル支援を継続したままガザの人道危機が拡大すれば、批判の矛先がバイデン政権に向かい、ハリス氏に不利に働くと考えたようですが、もっと早く決断すべきだったと思います。もっとも、これで狂人ネタニヤフ氏が「はい、そうですか」と停戦に向かうとも思えません。
一方こちらの選挙も、混沌としています。今朝の報道では「自民過半数割れの可能性」と伝えられています。裏金問題で党から公認されなかった候補者の苦戦が報じられています。公明党との連立政権が維持できないのかどうかは分かりませんが、仮に自公政権が変わった際の市場の反応も考えておく必要があるかもしれません。自公が政権を失うこと事態は、政治の混乱、景気の低迷などから「円売り材料」かと思いますが、株式が大きく売られ、株価との関連で言えば「円高」に振れないこともないとは言えません。こちらは投票日まで10日しかありません。
本日のドル円は148円70銭〜150円20銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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10/15 | デーリー・サンフランシス連銀総裁 | 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 | -------- |
10/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 | -------- |
10/14 | ウォラー・FRB理事 | 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 | -------- |
10/10 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
9/30 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 | -------- |
9/30 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 | -------- |
9/30 | パウエル・FRB議長 | 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 | ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。 |
9/26 | イエレン・財務長官 | (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 | -------- |
9/25 | クーグラー・FRB理事 | 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 | -------- |
9/24 | ボウマン・FRB理事 | 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 | -------- |
9/23 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 | -------- |
9/23 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 | -------- |
9/23 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 | -------- |
9/20 | 植田・日銀総裁 | 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 | ドル円は141円台後半から143円台に反発。 |
9/19 | イエレン・財務長官 | 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 | -------- |
9/18 | パウエル議長 | 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 | ドル円が反発し、株と債券は売られる。 |
9/18 | FOMC声明文 | 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 | -------- |
9/12 | ラガルド・ECB総裁 | 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 | ユーロドルは小幅に買われる。 |
9/6 | サマーズ・元財務長官 | 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える | -------- |
9/6 | イエレン・財務長官 | 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 | -------- |
9/4 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書