今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円2カ月半ぶりに150円台を回復」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸し8月1日以来となる150円台を回復。好調な米経済指標で利下げ観測が後退し、ドル円は150円32銭まで買われる。
  • ユーロドルでもドル高が進み、ユーロは1.0811まで下落。ECBは市場予想通り2会合連続の利下げを決定。
  • 株式市場ではダウが161ドル買われ最高値を更新。他の2指数はほぼ横ばい。ブラックロックなど、金融株の好決算が材料に。
  • 債券は反落。好調な経済指標に大幅利下げ観測が後退。長期金利は4.09%台に上昇。
  • 金は3日続伸。原油も小幅に反発。
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9月小売売上高 → 0.4%
新規失業保険申請件数 → 24.1万件
10月NAHB住宅市場指数 → 43
9月鉱工業生産 → −0.3%
9月設備稼働率 → 77.5%
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ドル/円 149.49 〜 150.32
ユーロ/ドル 1.0811 〜 1.0874
ユーロ/円 161.84 〜 162.77
NYダウ +161.35 → 43,239.05
GOLD +16.20 → 2,707.50ドル
WTI +0.28 → 70.67ドル
米10年国債 +0.078 → 4.091%

本日の注目イベント

  • 日 9月消費者物価指数
  • 中 7−9月GDP
  • 中 中国9月小売売上高
  • 中 中国9月鉱工業生産
  • 米 9月住宅着工件数
  • 米 9月建設許可件数
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、パネル討論会で司会
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会に参加
  • 米 ウォラー・FRB理事講演
  • 米 企業決算 → P&G、アメックス

本日のコメント

ドル円はNYで続伸し、8月1日以来となる150円台に乗せ、一時は150円32銭まで買われました。「9月の小売売上高」が好調だったことや、失業保険申請件数が市場予想を下回っていたことで、FRBによる大幅利下げの可能性が一段と低下したことが材料になりました。これらの指標を受け米債券市場では債券が売られ、金利が上昇しています。大きな節目でもあり、重要なレベルでもあった150円台に乗せたことで、ドル円は7月から急落し、9月に140円台を割り込んだ下落幅の「半値戻し」にあたる「150円76銭」が意識される展開になってきました。150円台では実需のドル売りも多く出るとは思いますが、仮にこの水準をクリアすれば、いよいよ日足の雲の上限をテストする可能性も高まり、雲抜けつまり、トレンド転換の可能性も意識されます。今日時点での雲の上限である先行スパン2は「151円05銭」に位置しています。また、先行スパン1が先行スパン2を上抜けする、いわゆる「雲のねじれ」はすでに完成させています。もちろんこの先、上昇が雲の上限で抑えられることも十分考えられます。むしろ、通常は雲に跳ね返されるケースが多く、第2次、第3次攻撃を持ってはじめて突破されるケースが多いと言えます。多くの市場関係者が、「雲は抵抗帯」であることを知っており、このレベルではドル売りが出易いからです。

ECBは17日、市場予想通り政策金利である中銀預金金利を0.25ポイント引き下げ、3.25%にすることを決めました。2会合連続の利下げとなり、金融緩和政策に舵を切り直してから3回目の利下げとなります。域内の景気低迷が続き、特に域内最大のドイツが2期連続でマイナス成長する可能性が高いことも背景となっています。またインフレ率も順調に低下しており、ECBは声明で、「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」とした上で、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」と説明しています。ラガルド総裁も会見で、「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」と述べていました。

イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザで行った作戦での死亡者の中に、ハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏が含まれていると発表しました。「殺害はイスラエルにとって象徴的な戦果となり、作戦を一区切りする好機と思えるかもしれない。しかし、『ハマス壊滅』を目標にしているネタニヤフ氏がここで作戦を終える可能性は小さい」(日経新聞)とするのが、大方の見方のようです。イスラエル軍によると、シンワル氏がいるとみられ、攻撃の標的になった建物にはイスラエル人の人質がいた兆しはなく、人質はシンワル氏とともに潜んでいるとイスラエルでは報じていました。この空爆では少なくとも15人が死亡したと伝えられています。

ドル円は150円台に乗せてきましたが、ここから本番です。再び145円方向に押し戻されるのか、上述のように雲を抜けて155円方向に進むのかポイントは、「米労働市場の動向」、「インフレ率の推移」、それに今月末の日銀決定会合での「追加利上げの有無」の3点です。本日のドル円は149円20銭〜150円75銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
10/17 ラガルド・ECB総裁 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 --------
10/17 ECB声明文 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 --------
10/15 デーリー・サンフランシス連銀総裁 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 --------
10/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 --------
10/14 ウォラー・FRB理事 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 --------
10/10 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 市場はドル買いで反応。
10/9 ローガン・ダラス連銀総裁 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 --------
10/3 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 --------
10/2 石破首相 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。
9/30 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 --------
9/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 --------
9/30 パウエル・FRB議長 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。
9/26 イエレン・財務長官 (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 --------
9/25 クーグラー・FRB理事 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 --------
9/24 ボウマン・FRB理事 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 --------
9/23 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 --------
9/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 --------
9/20 植田・日銀総裁 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 ドル円は141円台後半から143円台に反発。
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和