「FOMC、25bpの利下げを決定」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は反落。昨日の東京市場朝方には「トランプトレード」の勢いも残り154円71銭まで上昇する場面もあったが続かず。NYではFOMCで利下げが決められ、米金利が急低下したことで152円70銭まで売られる。
- ユーロドルは反発。1.0824まで買われ、前日記録した1.06台半ばが底堅いことを再び確認。
- 株式市場ではダウがほぼ横ばいのなか、ナスダックとS&P500は連日で最高値を更新。
- 債券は急反発。長期金利は4.32%台に低下。
- ドルが売られ金は反発。原油も小幅に反発。
新規失業保険申請件数 → 22.1万件
9月消費者信用残高 → 6.002b
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ドル/円 | 152.70 〜 153.78 |
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ユーロ/ドル | 1.0768 〜 1.0824 |
ユーロ/円 | 164.90 〜 165.87 |
NYダウ | −0.59 → 43,729.34 |
GOLD | +29.50 → 2,705.80ドル |
WTI | +0.67 → 72.36ドル |
米10年国債 | −0.108 → 4.324% |
本日の注目イベント
- 日 9月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 9月景気一致指数(CI)(速報値)
- 米 11月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
- 加 カナダ10月新規雇用者数
- 加 カナダ10月失業率
本日のコメント
「トランプトレード」もやや行き過ぎの感があったのか、ドル円は昨日の朝方の東京で154円71銭まで買われ、前日のNYでの高値とほぼ並びましたが、155円をテストする勢いもなく反落。結局そこを天井に152円台後半まで押し戻されました。ドル円の動きが米金利との相関が高いことを考えると、米金利が「往って来い」の展開で急低下したことを考えれば、当然の動きと言えます。日経平均株価の動きも同様で、前日ダウが1500ドルを超える上昇を見せたものの、朝方買われた日経平均株価は、大幅上昇どころかマイナスで引けています。ただ、昨日のNYではナスダックとS&P500が再び買われ、連日の最高値更新でした。FOMCで25bpの利下げが決定されたことで、これも整合する動きと言えます。
FOMC会合では予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを25ベーシスポイント(bp)引き下げ、4.5−4.75%にすることを決めました。声明文では、「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」とし、労働市場については「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」とし、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」と結んでいました。
会合後の記者会見でパウエル議長は、「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」と説明しました。また、1人の記者が質疑応答で、トランプ氏の複数のアドバイザーがパウエル氏の辞任を提案しているとした上で、「トランプ氏から辞任を求められたら応じるつもりか」との質問に対し、議長は「ノー」と答え、ホワイトハウス返り咲きを果たしたトランプ氏から辞任を求められても応じない意向を示しました。(ブルームバーグ)インフレが急激に高まった際にはパウエル氏の手腕に批判的だったトランプ氏でしたが、パウエル議長は辞任要求には応じないと毅然とした態度を示したことにエールを送りたいと思います。今朝のCNNの報道では、トランプ氏の上級顧問の発言として「トランプ氏もパウエル議長が任期を全うすることを容認する可能性が高い」と伝えています。
これで「日本の衆院選」から始まった日米の重要イベントは終わりました。来週には「米10月のCPI」がありますが、これまでの重要イベントを終えたことで、注目度にもやや精彩を欠くイメージです。ドル円は154円71銭まで買われ、上値は徐々に重くなるなか、緩やかな上昇傾向を維持しています。テクニカルでは日足の「MACD」にデッドクロスに近いサインが出ていますが、これは依然としてプラス圏での動きであり、相場の急落は考えにくいと思われます。日本の政局も依然として不安定で、昨日は自民党の会合で石破首相に選挙で敗北した責任を問う声もありましたが、これは筋違いと言えます。自民党の敗北は石破氏が首相に就任する以前から予想されていたことで、裏金問題に伴う自民党幹部の腐敗が敗因なのは明らかです。国民民主党の玉木代表が「103万円の壁」問題に積極的に取り組んでいるため、今後自民党が政権維持のため「玉木国民民主党」を受け入れるようだと、日銀にとっても逆風になる可能性があります。
本日のドル円は152円〜154円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
10/21 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「これまでのところ、われわれが利下げを続けないことを示唆する情報は見当たらない」、「インフレ率が既に2%に向かいつつある経済にとって、極めて引き締め的な金利となっており、労働市場のさらなる悪化を私は望まない」、「われわれは現在の経済情勢と変化しつつある状況に適合するよう、政策を調整し続けていく」 | -------- |
10/21 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/21 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 | -------- |
10/17 | ECB声明文 | 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 | -------- |
10/15 | デーリー・サンフランシス連銀総裁 | 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 | -------- |
10/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 | -------- |
10/14 | ウォラー・FRB理事 | 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 | -------- |
10/10 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書