「米株式市場のトランプトレード続く」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 経済指標が上振れしたもののドル円の上値は限られ小動き。ドル円は152円台半ばから後半で推移。
- ユーロドルは1.06後半まで売られたがその後反発。
- 株式市場では3指数が揃って買われ、最高値を更新。
- 債券は買われ、長期金利は4.3%台に低下。
- 金と原油は反落。
11月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 73.0
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ドル/円 | 152.34 〜 152.85 |
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ユーロ/ドル | 1.0687 〜 1.0772 |
ユーロ/円 | 163.20 〜 164.40 |
NYダウ | +259.65 → 43,988.99 |
GOLD | −11.00 → 2,694.80ドル |
WTI | −1.98 → 70.38ドル |
米10年国債 | −0.020 → 4.304% |
本日の注目イベント
- 日 9月国際収支・経常収支
- 日 10月景気ウオッチャー調査
- 英 英10月消費者物価指数
- 英 英10月失業率
- 英 英ILO失業率(8−10月)
本日のコメント
米大統領選など重要なイベントを消化したこともあり、先週末のNY市場の動きは久しぶりに小動きでした。トランプ氏が勝利し、昨日の新聞やテレビではほぼ「トランプ一色」でした。結局激戦州と言われた7州では、全てトランプ氏が勝利したことも判明しました。若者層からの支持が多く、黒人票も思ったほどハリス氏には行かなかったようです。すでに政権移行への始動が開始されており、バイデン大統領は13日(水)にトランプ氏をホワイトハウスに迎え、選挙後初の会談を行う予定です。
トランプ氏は自身の次期政権の首席補佐官にスージー・ワイルズ氏を起用することを決めました。ワイルズ氏は選挙期間中トランプ陣営を率いたことが評価されたようですが、女性初の大統領首席補佐官になるようです。この他にも、前USTRの代表だったライトハイザー氏が経済・貿易面での指揮を執るなど、主要閣僚の陣容もほぼ決まっているようです。今朝の報道では、トランプ氏はロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、ウクライナでの戦争をエスカレートさせないようアドバイスしたとワシントン・ポスト紙が報じています。ワシントン・ポスト紙によると、両氏の電話会談はトランプ氏が5日の米大統領選で勝利を収めて以降、初めてのもので、会談は欧州における平和の目標を協議したとのことで、トランプ氏は「ウクライナでの戦争の早期解決」を議論するため、フォローアップの対話に関心を表明したようです。同氏は選挙活動中にも、「自分が大統領になれば、直ちに戦争を止めさせることが出来る」と豪語していました。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は9日FOXニュースの番組のインタビューで、「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と述べ、「トランプ次期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」との考えを示しました。FRBが金融緩和策に舵を切り直して以来、利下げ幅が従来より縮小する可能性があるとの認識を示したのはカシュカリ総裁が初めてで、次回12月のFOMC会合にも影響を与えるかもしれません。7月の雇用統計をきっかけに「大幅な利下げが必要」との観測が急拡大しました。しかし、その後労働市場の想定外の強さが示されたことで、すでに利下げ幅に関する異なる意見もある中、他のFOMCメンバーが同様な認識を示すのかどうかにも注意しなければなりません。言うまでもなく、米国の利下げ幅縮小は「大きなドル高要因」になります。
国民民主党の玉木代表は先週末、日本外国特派員協会で記者会見を行いました。選挙公約でもある「手取りを増やす経済政策を何が何でも実現したい」と述べ、「実質賃金が安定的にプラスになるまで日本銀行は金融政策を変更すべきではない」との見解を示しました。先週のコメントでも触れましたが、自公与党は政権維持のため国民民主党を取り込む姿勢を示唆しており、そのためには玉木氏の「持論」もある程度受け入れる必要があります。そうなると、金融正常化を目指す日銀にとっては逆風となり追加利上げのタイミングが後ずれになる可能性も出て来ることになります。
本日のドル円は152円30銭〜154円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
10/21 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「これまでのところ、われわれが利下げを続けないことを示唆する情報は見当たらない」、「インフレ率が既に2%に向かいつつある経済にとって、極めて引き締め的な金利となっており、労働市場のさらなる悪化を私は望まない」、「われわれは現在の経済情勢と変化しつつある状況に適合するよう、政策を調整し続けていく」 | -------- |
10/21 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/21 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 | -------- |
10/17 | ECB声明文 | 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 | -------- |
10/15 | デーリー・サンフランシス連銀総裁 | 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 | -------- |
10/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 | -------- |
10/14 | ウォラー・FRB理事 | 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 | -------- |
10/10 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書