「ドル円7月末以来となる155円に接近」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は続伸し、一時は154円92銭まで買われる。トランプ次期政権でのインフレ観測が根強く、米金利も再び上昇したことでドル全面高の展開。
- ユーロドルは続落。ドイツの政治的リスクや経済指標の悪化に1.0595までユーロは売られ、およそ1年ぶりの水準に。
- 株式市場では3指数が利益確定の売りに押され反落。ダウはこのところの上昇ピッチが速かったことの反動もあり、382ドルの大幅安。
- 債券は大きく売られ、長期金利は4.42%台に急上昇。
- 金は3日続落。原油は小幅高。
ドル/円 | 154.07 〜 154.92 |
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ユーロ/ドル | 1.0595 〜 1.0627 |
ユーロ/円 | 163.43 〜 164.31 |
NYダウ | −382.15 → 43,910.98 |
GOLD | −11.40 → 2,606.30ドル |
WTI | +0.08 → 68.12ドル |
米10年国債 | +0.123 → 4.428% |
本日の注目イベント
- 豪 豪第3四半期賃金指数
- 欧 ユーロ圏9月鉱工業生産
- 米 10月消費者物価指数
- 米 10月財政収支
- 米 バイデン大統領、トランプ氏と会談(ホワイトハウス)
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、歓迎挨拶
- 米 ローガン・ダラス連銀総裁、開会挨拶
- 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演
- 米 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁講演
- 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ブルームバーグ・テレビジョンに出演
本日のコメント
ドル円はついに155円台に迫る、154円92銭まで上昇してきました。トランプ次期大統領のこれまでの公約を考えると、国債の大量発行が避けられず、インフレ率も再び上昇に向かうという見方が根強く、これがドルを押し上げています。昨日のNYではユーロも売られ、ユーロドルはほぼ1年ぶりに1.06台を割り込みました。主要通貨に対してドルが全面高の展開でした。株式市場ではダウが大きく売られ、他の2指数は小幅安に終わっています。ダウは前日までに2200ドル程上昇していたこともあり、今週予定されているCPI、PPI、小売売上高の発表前に利益を確定しておこうといった動きが出た模様です。また金価格も下げており、こちらは一時2600ドル台を割り込む場面もありました。金は先月30日には2800ドル台に乗せましたが、ドルが買われていることで、ドルの代替品としての側面もある金が売られることに違和感はありません。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は12日ボルティモアで講演を行い、「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」と述べています。今後の経済シナリオについては「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減。その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」(ブルームバーグ)と述べており、今後の政策金利の水準については言及していなかったようです。
またFOXテレビのインタビューで、今後利下げ幅が縮小する可能性があると述べていたミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も12日の会議で、来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられると、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」と回答し、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」と付け加えていました。実際にトランプ次期政権が始動するのは来年1月からで、それまでに米インフレが大きく上振れする可能性はそれほどないと思われますが、それでも12月のFOMCでは次期政権の実際の政策が不透明であることから、見極めたいとして、「政策金利は据え置かれる」と、個人的には予想しています。
155円に近づいてきたドル円ですが、155円という節目は重要な値位置かと思いまます。ここを抜ければ上昇が加速する可能性もあり、その場合、政府日銀による市場介入も当然意識しなければなりません。個人的には155−160円のどこかの水準で実弾介入があると予想しています。本日のドル円は153円50銭〜155円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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11/12 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 | -------- |
11/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 | -------- |
11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
10/21 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「これまでのところ、われわれが利下げを続けないことを示唆する情報は見当たらない」、「インフレ率が既に2%に向かいつつある経済にとって、極めて引き締め的な金利となっており、労働市場のさらなる悪化を私は望まない」、「われわれは現在の経済情勢と変化しつつある状況に適合するよう、政策を調整し続けていく」 | -------- |
10/21 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/21 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 | -------- |
10/17 | ECB声明文 | 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 | -------- |
10/15 | デーリー・サンフランシス連銀総裁 | 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 | -------- |
10/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 | -------- |
10/14 | ウォラー・FRB理事 | 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 | -------- |
10/10 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書