「ドル円155円台半ばまで続伸」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は10月のCPIが発表されると売られたが、その後反発し155円62銭まで買われる。米金利の上昇が支えとなり155円台まで買われたドル円は日本の金融当局の動きが注目。
- ユーロドルは続落。1.0565まで下げ、昨年10月末以来となる安値を示現。
- 株式市場ではダウは買われたものの、ナスダックは下落。S&P500はほぼ横ばい。
- 債券は続落。長期金利は4.45%台に上昇。
- 金は4日続落。原油は小幅に続伸。
10月消費者物価指数 → 0.2%
10月財政収支 → −257.5b
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ドル/円 | 154.58 〜 155.62 |
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ユーロ/ドル | 1.0556 〜 1.0655 |
ユーロ/円 | 163.63 〜 165.80 |
NYダウ | +47.21 → 43,958.19 |
GOLD | −19.80 → 2,586.50ドル |
WTI | +0.31 → 68.43ドル |
米10年国債 | +0.024 → 4.457% |
本日の注目イベント
- 豪 豪10月雇用統計
- 欧 ユーロ圏7−9月期GDP(改定値)
- 欧 ECB議事要旨
- 英 英7−9月期GDP(速報値)
- 英 英9月鉱工業生産
- 英 英9月貿易収支
- 英 ベイリー・BOE総裁講演
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 10月生産者物価指数
- 米 パウエル・FRB議長講演
- 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、座談会
- 米 クーグラー・FRB理事講演
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
本日のコメント
米長期金利の上昇が止まらず、昨日のNY債券市場では一時4.46%台まで上昇し、これがドルを支える構図になっています。東京時間で155円台に乗せたドル円は、NYでは155円62銭まで買われており、ユーロドルも1.0556前後まで下げ、こちらは2023年10月以来となる安値に沈んでいます。トランプ政権の政策を先取りした「トランプ・トレード」が続き、株が買われ、債券は売られ、金利が上昇することでドルが買われる動きが続いています。ただトランプ次期大統領はかつて、基本的にはドル安を望む姿勢を見せたこともあり、このままドルが上昇を続けるかどうかは非常に懐疑的です。足元の「トランプ・トレード」も、どこかで「梯子を外される」可能性もあり、ここは注意が必要です。また従来から述べてきたように、155−160円のどこかの水準では政府日銀による市場介入があると予想していますが、財務省の三村財務官の円安をけん制する際の言い回しにも注意したいところです。
FRBによる利下げ幅の縮小観測と、政局の混迷が日銀の追加利上げに逆風であることが、日米金利差の拡大傾向につながっていますが、この傾向がどこまで続くのかという点を見極める必要があります。実際にトランプ政権の政策が実行されるのは2025年からですが、いつものように市場はそれを先取りしています。そのトランプ氏は昨日ホワイトハウスでバイデン大統領と会談し、バイデン氏から「円滑な政権移行を望む」と言葉を掛けられたトランプ氏は、「政治は厳しく、多くの場合、あまり良い世界ではないが、今日は良い日であり、スムーズな移行にとても感謝している」と応じていました。また、トランプ氏は次期政権の重要閣僚を次々と任命していますが、ここには早くも「トランプ流」が色濃く出ています。
議会上院でも共和党が多数を占める結果になると報じられており、これで、政権、上院、下院を共和党が独占する「トリプルレッド」になることが決まります。トランプ氏にとっては政策を実行しやすいだけではなく、外交政策でも独自色を出しやすいことになります。一方で、閣僚人事に関してはすでに疑問の声も上がっています。トランプ氏がFOXニュースと近いことは周知の事実ですが、次期国防長官にFOXニュースの司会者のピート・ヘグセス氏を指名しました。ブルームバーグは、「この人事が上院で承認されれば、世界最強の軍隊は、ここ数十年で最も経験の浅い指導者の手に委ねられることになる」と論評しています。世界に目を向ければ、ウクライナ戦争、イスラエルとハマス、ヒズボラなどイスラム勢力との紛争、さらには中国、北朝鮮などアジアにおける不穏な動きもあり、米国防長官の存在そのものが世界紛争の「抑止力」になっていると言っても過言ではありません。下院軍事委員会の民主党トップであるスミス議員は、「国防長官がエントリーレベルの役職となるべきでない」と指摘し、「トランプ次期大統領がこの極めて重要な役割を、ニュース番組の司会者に委ねることに疑問を感じる」と声明を発表しています。トランプ次期大統領の実現に貢献した人物を優遇する「トランプ流」はこの先も至るところで見られることでしょう。
昨日もFOMCメンバーの発言が幾つかありました。セントルイス連銀のムサレム総裁は「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」述べ、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」と説明しています。ダラス連銀のローガン総裁は、「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」と発言しています。また、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」と話しています。
10月の米消費者物価指数(CPI)では、コアCPIが「0.3%」(前月比)と、3カ月連続で同じ伸びでした。また、総合CPIも「0.2%」(前月比)で、4カ月連続で同じ伸びと、インフレは長期的にみれば低下傾向にあるものの、「足踏み状態」が続いている状況でした。
本日はパウエル議長の講演がダラスであります。ドル円は154円30銭〜156円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 | -------- |
11/13 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 | -------- |
11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 | -------- |
11/12 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 | -------- |
11/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 | -------- |
11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
10/21 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「これまでのところ、われわれが利下げを続けないことを示唆する情報は見当たらない」、「インフレ率が既に2%に向かいつつある経済にとって、極めて引き締め的な金利となっており、労働市場のさらなる悪化を私は望まない」、「われわれは現在の経済情勢と変化しつつある状況に適合するよう、政策を調整し続けていく」 | -------- |
10/21 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/21 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 | -------- |
10/17 | ECB声明文 | 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 | -------- |
10/15 | デーリー・サンフランシス連銀総裁 | 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 | -------- |
10/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 | -------- |
10/14 | ウォラー・FRB理事 | 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 | -------- |
10/10 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書