今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円は大幅下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大きく反落。週末の東京時間に156円75銭近辺まで買われたドル円は、NY時間に153円86銭まで急落。株式が大きく売られたことや、利益確定のドル売りに押される。
  • ユーロドルは1.05台前半から反発。
  • 株式市場では3指数が大幅安。トランプトレードの巻き戻しもあり、ナスダックは2%を超える大幅安。
  • 債券は小幅に売られ、長期金利は4.43%台で越週。
  • 金は小幅ながら6日続落。原油も売られる。
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10月小売売上高 → 0.4%
11月NY連銀製造業景況指数 → 31.2
10月輸入物価指数 → 0.3%
10月輸出物価指数 → 0.2%
10月鉱工業生産 → −0.3%
10月設備稼働率 → 77.1%
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ドル/円 153.86 〜 155.75
ユーロ/ドル 1.0517 〜 1.0593
ユーロ/円 162.31 〜 164.43
NYダウ −305.87 → 43,444.99
GOLD −2.80 → 2,570.10ドル
WTI −1.68 → 67.02ドル
米10年国債 +0.004 → 4.439%

本日の注目イベント

  • 日 植田日銀総裁講演(名古屋)
  • 日 同記者会見(13:45)
  • 欧 ユーロ圏9月貿易収支
  • 米 11月NAHB住宅市場指数
  • 加 カナダ10月住宅着工件数
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、開会挨拶
  • 伯 G20首脳会議(リオデジャネイロ)

本日のコメント

ドル円は先週末のNY市場で3円程ドル安円高に振れています。週末の東京市場では一時156円75銭前後まで上昇しましたが、高値からは3円近く下げたことになります。筆者は週末のコメントに「市場介入が意識される水準に一歩一歩近づいていると思われますが、本日は金曜日ということもあり、注意する必要があるかもしれません」と書きました。介入はなかったものの、これまでの「トランプトレード」で株が買われ、債券が売られ、金利が上昇したことでドル円は、ほぼ一貫して買われてきました。「トランプトレード」の解消があったためか、NY株が大きく売られたことでドル円でも巻き戻しが出た模様です。この欄でも何度か触れましたが、実際のトランプ次期大統領の政策を見極め、その上でインフレ再燃があるのかどうかを判断する必要があります。個人的には米金利の上昇圧力は避けられないと予想しており、これがドルを支える展開になるとみています。問題はそのタイミングだろうと思います。

ペルーのリマで開催された「APEC首脳会議」では、日米中のトップが首脳会談を行っています。バイデン大統領は中国の習近平国家主席と会談を行い、その会談後習氏は、「中国は友人になりたいが、必要であれば戦う準備はできている」と、バイデン大統領にではなく、トランプ次期政権に対して明確なメッセ―ジを送った格好でした。「習氏は『新たな冷戦』に反対する考えを示しつつ、共産党の権力基盤の弱体化、民主化推進、中国の経済的台頭の抑制、台湾独立の支援という『4つのレッドライン(越えてはならない一線)』を改めて挙げた」とブルームバーグは伝えています。中国としては、予測出来ないトランプ流の行動に対して、相手はバイデン大統領ではありましたが、事前にけん制球を投げた格好です。

トランプ次期政権の重要ポストが概ね決まり、残す重要ポストは財務長官のみとなりました。現時点では候補者は二人に絞られた模様で、1人はキャンター・フィッツジェラルドのルトニックCEOで、もう1人はキー・スクエア・グループ創業者のベッセント氏のようです。ただここでもイーロン・マスク氏の存在が取り沙汰されており、マスク氏は「ベッセント氏に対して「代り映えしない選択肢」とし、ルトニック氏については「実際に変化をもたらす」と述べており、これがトランプ氏の判断に影響するのかどうか注目です。それにしても、ポストに指名された顔ぶれを見ると、今後のトランプ次期政権の危うさを禁じ得ません。結局、大統領選の勝利に貢献した人か、あるいは個人的な好みの人を登用したような人事で、アメリカの分断、世界的な戦争の危機を解決するためのものではないようです。「Make America Great Again」ではなく、「Make Trump Great Again」と言っているように聞こえます。

ドル円は大きく下げましたが、「2時間足」の雲の下限で下落を止められた格好になっており、週明けのオセアニアはすでに154円台半ばまで反発しています。これからドルがさらに大きく売られる可能性は少ないと思われますが、一方でこれまでのようにドルが一直線に上昇することもないと思われます。重要な材料がない中、一進一退の動きになるのではないでしょうか。本日のドル円は153円20銭〜155円20銭程度を予想します。本日の日銀総裁の発言内容には注意が必要です。為替に影響があるとすれば、円高方向以外にはないと思われますが・・・・。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/14 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 --------
11/14 クーグラー・FRB理事 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 --------
11/14 パウエル・FRB議長 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 --------
11/13 ローガン・ダラス連銀総裁 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 --------
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 --------
11/12 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 --------
11/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 --------
11/9 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 --------
11/7 パウエル・FRB議長 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
11/7 FOMC声明文 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
10/21 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「これまでのところ、われわれが利下げを続けないことを示唆する情報は見当たらない」、「インフレ率が既に2%に向かいつつある経済にとって、極めて引き締め的な金利となっており、労働市場のさらなる悪化を私は望まない」、「われわれは現在の経済情勢と変化しつつある状況に適合するよう、政策を調整し続けていく」 --------
10/21 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。
10/21 ローガン・ダラス連銀総裁 「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。
10/17 ラガルド・ECB総裁 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 --------
10/17 ECB声明文 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 --------
10/15 デーリー・サンフランシス連銀総裁 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 --------
10/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 --------
10/14 ウォラー・FRB理事 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 --------
10/10 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 市場はドル買いで反応。
10/9 ローガン・ダラス連銀総裁 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 --------
10/3 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 --------
10/2 石破首相 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和