今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円再び売られ、一時149円08銭に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京時間に150円74銭近辺まで反発したドル円はNYでは再び大きく売られる。特段ドル売り材料が出たわけではないが、一時149円08銭と、10月21日以来となる円高水準に。
  • ユーロドルも下落。フランスの政治的混迷が材料視され、ユーロは1.0462まで売られる。ユーロ円も156円33銭近辺まで下げる。
  • 株式市場ではナスダックとS&P500が最高値を更新。ダウは利益確定の売りに押され128ドル安。
  • 債券は反落。長期金利は4.19%台に上昇。
  • 金は売られ、原油は小幅高。
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11月ISM製造業景況指数 → 48.4
11月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 49.7
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ドル/円 149.08 〜 150.53
ユーロ/ドル 1.0462 〜 1.0516
ユーロ/円 156.37 〜 157.94
NYダウ −128.65 → 44,782.00
GOLD −22.50 → 2,658.50ドル
WTI +0.10 → 68.10ドル
米10年国債 +0.021 → 4.190%

本日の注目イベント

  • 豪 豪7−9月期経常収支
  • 英 英11月小売売上高
  • 米 10月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
  • 米 11月自動車販売台数
  • 米 クーグラー・FRB理事講演
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、会議で開会の辞

本日のコメント

先週末のNYで149円台半ばまで売られたドル円は、昨日の東京時間では根強いドル買い需要に支えられ150円台を回復し、一時は150円74銭まで反発しましたが、その後のNYではドル売りが再燃。ドル円は先週末のNYの安値を大きく下回る149円08銭まで売られました。それほど明確なドル売り材料が見当たらない中、日銀による追加利上げ観測が根強くあったようです。引き続き荒っぽい展開が続いています。

昨日もFOMCメンバーの発言がありました。ウォラーFRB理事はワシントンでの講演で、「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」と、自身の考えを述べていました。また、NY連銀のウイリアムズ総裁もNYでの講演で、「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」と述べ、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」と発言し、追加利下げには前向きな考えを示しています。一方、アトランタ連銀のボスティック総裁は公表した小論で、12月の利下げに関しては「選択肢をオープンにしている」としながらも、「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」と論じています。(ブルームバーグ)

これら3氏の発言を聴く限りでは、18−19日の会合では25bpの利下げの可能性の方が据え置きよりも高いようにも思えますが、まだ今週末の「11月の雇用統計」を控えていることで、予断は許しません。事実、昨日発表された「11月のISM製造業景況指数」は、「48.4」と、依然として「50」を下回ってはいたものの、今年3月以来の大幅上昇でした。特に、新規受注の指数は「50.4」と、縮小・拡大の境目である「50」を超え、5カ月ぶりの大幅上昇でした。週末の「雇用統計」でも、非農業部門雇用者数(NFP)や、平均賃金などが予想を超えていると、追加利下げ観測が後退することになります。11月のNFPはすでに「21.8万人」と予想されており、10月の「1.2万人」からは大幅な伸びが予想されています。これはハリケーンや大規模なストの反動とみられていますが、毎回発表される結果には驚かされる同指標です。どのような数字が発表されるのか分かりません。

バイデン政権は2日、AI向け高帯域幅メモリー(HBM)および、半導体製造装置の中国向け販売に新たな規制を加えると発表しました。米企業が海外で製造したものも対象となります。また、中国政府の指示によって活動しているとして、中国企業140社を新たに「ブラックリスト」に追加することを決めています。これにより、韓国のSKハイニックスやサムソンなどが影響を受けるとみられ、日本とオランダなど主要同盟国には適用除外が認められています。これは、先端技術を確保しようとする中国の野望を封じ込める取り組みを強化することの一環だと見られています。

ドル円はNYで売られても、アジア市場では買われる展開ですが、今朝もすでにNYの底値からは70銭ほどドルが上昇しています。昨日も述べた様に、ドル円は今後のトレンドを予想する上で非常に重要な値位置にいます。本日のドル円は148円70銭〜150円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
11/29 植田・日銀総裁 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。
11/20 クック・FRB理事 (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 --------
11/20 コリンズ・ボストン連銀総裁 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 --------
11/20 ボウマン・FRB理事 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 --------
11/18 植田・日銀総裁 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。
11/14 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 --------
11/14 クーグラー・FRB理事 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 --------
11/14 パウエル・FRB議長 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 --------
11/13 ローガン・ダラス連銀総裁 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 --------
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 --------
11/12 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 --------
11/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 --------
11/9 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 --------
11/7 パウエル・FRB議長 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
11/7 FOMC声明文 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和